Nvidiaの株価が主要指数に対して伸び悩んでいる。背景には、中国DeepSeekの低コストAIモデルの台頭、AIコンピューティングのASICへの移行、次世代チップ「Blackwell」の開発遅延といった要因がある。

一方で、同社の強力なAIソフトウェアエコシステムと市場でのリーダーシップは依然として評価されており、アナリストの目標株価は190ドルに設定されている。競争が激化する中、AmazonやGoogleなどの大手企業がAIハードウェア市場への攻勢を強めることで、Nvidiaの市場優位性は試される局面にある。

今後の決算発表とGTCカンファレンスが市場心理を左右する可能性があり、Blackwellチップの開発進捗やデータセンター向け事業の成長が注目される。

AI市場での競争激化とNvidiaの立ち位置

Nvidiaの株価低迷の背景には、AI市場における競争環境の急激な変化がある。特に、中国のDeepSeekが提供する低コストAIモデル「RI」の台頭は、従来の「高性能AIモデルは特定企業の独占領域」という常識を揺るがしている。DeepSeekはコスト効率の高さを武器に、市場での存在感を急速に拡大しており、これがNvidiaの成長余地を圧迫する要因となっている。

さらに、AmazonはAnthropicと80億ドル規模の提携を結び、AI開発競争において明確な戦略を打ち出している。Googleも「Willow AIスーパーコンピュータチップ」を発表し、AIハードウェア分野での覇権争いに参入している。加えて、BroadcomやMarvellなどの半導体企業も独自のカスタムチップを開発し、AI分野での競争は一層激化している。

これらの動向は、Nvidiaの市場シェア維持に対する直接的な脅威である。同社が強固なAIソフトウェアエコシステムを持つとはいえ、競合企業が次々と革新的な技術を投入することで、かつての圧倒的な優位性は揺らぎ始めている。

ASICへのシフトが示すAIハードウェアの未来

AIコンピューティングの分野で、特定用途向け集積回路(ASIC)への移行が進んでいることは、Nvidiaにとって無視できないリスクである。これまで、汎用GPUの高性能性がAI開発における中心的存在であったが、より特化したASICは処理効率とエネルギーコストの両面で優位性を持つため、データセンターや大規模AIプロジェクトでの需要が高まっている。

ASICは、用途に特化して設計されているため、AIアルゴリズムの処理速度や消費電力の最適化が可能である。この特性は、特にクラウドサービスを展開する企業にとって重要であり、コスト削減とパフォーマンス向上の両立を実現する。Amazon AWSやGoogle Cloudが自社開発のカスタムチップを導入する背景にも、このニーズが存在する。

NvidiaはGPU技術での優位性を維持しているが、ASICの普及によって市場の一部が奪われる可能性は否定できない。この流れに対応するため、同社はAIソフトウェアとの統合を強化し、汎用性と特化型のバランスを取る必要がある。

次世代「Blackwell」チップの開発遅延と投資家心理への影響

Nvidiaの次世代チップ「Blackwell」の開発遅延は、投資家にとって大きな不安要素となっている。この遅延は、同社の成長戦略における重要な柱が一時的に揺らいでいることを示唆しており、AI市場での競争力維持に課題をもたらしている。

「Blackwell」は、AIトレーニングと推論の両方でパフォーマンス向上を目指した革新的なアーキテクチャとして期待されている。しかし、開発スケジュールの遅れは、顧客企業の調達計画やNvidiaの売上予測に直接的な影響を与える。特に、大規模データセンター運営企業は、最新技術への迅速なアクセスを競争力の源泉としているため、この遅延は市場シェアの喪失リスクにもつながる。

それでも、Evercore ISIやバンク・オブ・アメリカのアナリストは楽観的な見通しを示しており、Blackwellチップの完成後には再び強力な成長軌道に戻ると予測している。次回の決算発表とGTCカンファレンスでの新プロジェクト発表が、投資家心理の回復を左右する重要な転換点となるであろう。

Source:Wall Street Pit