AI関連株が上昇基調にある。NvidiaやPalantir Technologiesといった業界リーダーは約4%の上昇を記録し、Super Micro Computerは13%急騰した。市場の不安要因であった中国AIラボDeepSeekの影響は限定的とみられ、投資家心理が回復している。
台湾セミコンダクター・マニュファクチャリングは、第1四半期の収益が前年同期比36%増と発表。供給不足にもかかわらずNvidia向けの高性能チップ生産を倍増させる計画を維持しており、Nvidiaの見通しは依然として明るい。Blackwellチップの供給が年内完売するなど、成長期待は継続している。
一方で、C3.aiは5.9%の上昇を見せたものの、恒常的な赤字企業であり、株式報酬費用の負担が大きい。売上は増加傾向にあるものの、投資対象としてのリスクは依然高い。AI株全般に楽観的なムードが広がる中、企業ごとの成長性や収益性を見極めることが重要となる。
Nvidiaの成長を支える台湾セミコンダクターの戦略的役割

台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)は、AI市場の拡大を背景にNvidiaへの供給体制を強化している。同社は第1四半期の収益ガイダンスで250億〜258億ドルと予測し、前年同期比で36%の増加を見込む。1月の台湾地震で一部施設が被害を受けたものの、生産能力の回復を迅速に進め、年間見通しへの影響は限定的であると発表している。
TSMCは、Nvidiaの先進AIチップであるH100などの製造に必要な高性能チップ・オン・ウェハ・オン・サブストレートの生産量を2025年末までに倍増させる計画だ。AI向けの半導体需要が急増する中、供給体制の強化は市場競争力の維持に不可欠であり、Nvidiaの成長戦略においてTSMCの存在は重要な役割を果たす。
この戦略は、AI関連株への投資家心理にも好影響を与えている。TSMCの安定した供給体制は、Nvidiaの業績見通しの信頼性を高め、AI関連市場全体への成長期待を支える要因となっている。特に、供給不足が価格上昇や競争激化を招くリスクがある中、TSMCの対応力は今後の市場動向を左右する鍵となる。
DeepSeek R1の台頭とNvidiaへの影響
中国のAIラボDeepSeekが発表したR1 AIモデルは、低価格帯のNvidiaチップを活用しながらも、高性能モデルと比較して優れたベンチマーク結果を示した。この動きは、Nvidiaの高額なAIアクセラレーターへの需要に対する懸念を市場に広げ、一時的な株価の下押し要因となった。R1がオープンソースで提供されている点も、開発者コミュニティの関心を集め、独自の改良や応用が進む可能性が指摘されている。
しかし、市場の反応は必ずしも悲観的ではない。投資家の多くは、DeepSeekのモデルがNvidiaの先進的なH100チップと同等の競争力を持つかどうかについて懐疑的である。特に、R1が本当にH100チップに基づいて開発されたかどうか、あるいは異なる技術基盤を持つかは明確ではない。結果として、Nvidiaの株価は短期間で回復し、3.6%の上昇を記録している。
この現象は、AI市場の成長余地が依然として大きく、多様な技術革新が競争環境に与える影響を示している。Nvidiaは独自の技術力と供給網により、短期的な競争圧力を乗り越える可能性が高く、今後の製品戦略次第でさらなる成長が期待される。
C3.aiの収益改善と潜在的リスク
C3.aiは第3四半期の売上高を9,550万ドル〜1億500万ドルと予測し、前年同期比で25%の増加を見込んでいる。また、調整後の純損失は3,860万ドル〜4,660万ドルで、前年の7,260万ドルから42%の改善となる見込みである。この収益改善は、企業向けAIソリューションの需要拡大によるものであり、同社株価は5.9%上昇するなど市場の期待感も高まっている。
しかし、C3.aiには依然として課題が残る。恒常的な赤字体質から脱却できておらず、特に株式報酬費用の負担が大きい。2024年度第2四半期には5,700万ドルを株式報酬費用に充てており、これはほぼ全ての粗利益に相当する。このようなコスト構造は、利益率の改善を難しくし、長期的な財務健全性に不安を残す要因となる。
また、C3.aiの成長は一部の主要顧客に依存していることから、顧客基盤の多様化が進まなければ収益の安定性に課題が生じる可能性がある。投資家は短期的な株価上昇に惑わされず、収益性の持続可能性や事業モデルの健全性を慎重に見極める必要があるだろう。
Source:AOL