インテル(NASDAQ: INTC)の株価が水曜日の取引開始直後に約10%急騰した。背景には、JDバンス米副大統領が発した、先進的な人工知能(AI)チップの国内開発推進を再確認する発言がある。これにより、米政府の支援が拡大するとの期待が高まり、同社の成長可能性が再評価されている。

インテルは米国内でAIチップの製造能力を有する数少ない企業のひとつであり、競合するエヌビディア(NASDAQ: NVDA)が台湾積体電路製造(TSMC)に依存している点と対照的だ。この発表を受け、同社は年初来の安値から15%の上昇を記録。補助金の獲得や政府機関との提携が進めば、さらなる上昇の可能性も見込まれる。

さらに、中国の新興企業DeepSeekの発表したAIモデル「DeepSeek-R1」は、低消費電力で運用可能な点が特徴であり、インテルの手頃なAIチップへの需要を押し上げる可能性がある。アナリストの間では、インテルの今後の利益成長率に対する期待が高まり、株価の上昇余地も示唆されている。

JDバンスの発言が持つ意味 インテル株への影響と政府の戦略

JDバンス米副大統領の発言は、インテルにとって追い風となる可能性がある。バンスはホワイトハウスの立場として、先進的な人工知能(AI)チップの国内生産を推進する方針を改めて強調した。これにより、米政府が国内半導体産業への支援を拡大するとの見方が強まり、インテルの成長期待が高まった。

インテルは米国内におけるAIチップの製造能力を持つ数少ない企業の一つである。競合するエヌビディアは、高性能なAIチップの設計では業界をリードするものの、製造は台湾積体電路製造(TSMC)に依存している。このため、米国内での生産を推進する政府の方針は、インテルに有利に働く可能性がある。

バンスの発言は、米国の半導体産業の自立を促す戦略の一環と捉えられる。中国との技術競争が激化する中、米政府は国内製造の強化を急いでいる。インテルはすでに、政府の補助金を活用してオハイオ州に新たな工場を建設しており、こうした動きが加速すれば、長期的に収益構造が強化される可能性がある。

中国のDeepSeekとインテルのAIチップ 新たな市場機会の可能性

インテルのAIチップ市場における展望は、中国のスタートアップ企業DeepSeekの動向とも関係している。DeepSeekは、低コストかつ高効率なAIモデル「DeepSeek-R1」を発表した。このモデルは、従来の大規模言語モデル(LLM)と比較して計算リソースの消費を抑えており、手頃なAIチップとの相性が良いと考えられる。

現在、AI分野ではエヌビディアの高性能GPUが主流となっているが、高額なコストが課題とされている。一方、インテルのAIチップは低消費電力で手頃な価格帯の製品が多く、DeepSeek-R1のような省電力型AIモデルと組み合わせることで、新たな市場機会が生まれる可能性がある。

また、中国市場では米国製の高性能GPUが輸出規制の対象となっており、代替技術への需要が高まっている。インテルのAIチップが、この市場での選択肢として浮上する可能性は否定できない。こうした状況を考慮すると、インテルは今後、低コストで効率的なAI技術を求める企業との提携を模索する可能性がある。

アナリストの評価と今後の株価動向

インテル株の今後の動向について、アナリストの見解は分かれている。現在の平均目標株価は23.98ドルで、これは直近の株価から約10%の上昇余地があることを示唆している。さらに、強気なシナリオでは目標株価が62ドルと設定されており、現在の水準から約3倍の上昇となる可能性も指摘されている。

また、インテルの利益成長への期待も高まっている。2025年には前年同期比で87%の増益が見込まれ、さらに翌年には前年比609%という急成長の予測が立てられている。これは、政府の支援による国内生産拡大や、新たなAIチップ市場の開拓が寄与する可能性があることを示している。

ただし、競争環境は依然として厳しい。エヌビディアは引き続きAI分野での圧倒的なシェアを誇り、またTSMCの製造能力も依然として強力である。インテルが市場での競争力を維持するには、技術革新や生産能力の向上が求められる。今後、政府の補助金政策や企業戦略が、同社の成長を左右する重要な要因となるだろう。

Source:Barchart