バイオテクノロジー大手アムジェン(NASDAQ: AMGN)の株価が、ウォール街で再び注目を集めている。2024年第4四半期の決算では売上が前年比19%増加し、10種類の主要製品が二桁成長を遂げた。これによりアナリストの平均目標株価は319ドルとされ、一部では389ドルまでの上昇が予測されている。
現在の株価は52週高値を14%以上下回る水準にあるが、市場ではこれを押し目買いの好機と捉える声も多い。配当利回りは3.25%と業界平均を大きく上回り、安定志向の投資家にとって魅力的な選択肢となり得る。新薬開発やAI活用による成長戦略も進行中であり、今後の株価動向に注目が集まる。
アムジェンの財務基盤と成長戦略 主要製品の売上拡大が業績を牽引
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アムジェンの財務状況は、2024年第4四半期決算の結果からも明らかに堅調である。製品売上高は前年同期比11%増加し、総収益は91億ドルに達した。年間売上は前年比19%増の334億ドルに拡大し、ブロックバスター薬の需要増が主な要因とされる。特にレパサ(Repatha)は米国内での販売量が54%増加し、売上は36%増の22億ドルとなった。EVENITYの売上も35%増の15億ドルを記録し、処方数の増加が後押しした。
また、バイオシミラー分野の成長も顕著であり、売上は前年比16%増の22億ドルに達した。EYLEAバイオシミラー「PAVBLU」やSTELARAバイオシミラー「WEZLANA」などの新製品投入が、この成長を支えている。バイオシミラー市場は世界的に拡大しており、特に高コストな生物製剤の代替品としての需要が高まっていることから、アムジェンの競争力が強化される可能性がある。
一方、アムジェンは研究開発(R&D)にも積極的に投資しており、第4四半期だけで16億ドルを投入した。この資金は新薬開発や臨床試験に充てられ、がん、炎症性疾患、希少疾患などの領域で新たな治療薬の市場投入を目指している。長期的な視点で見ると、これらの研究開発活動が今後の成長を支える基盤となると考えられる。アムジェンは既存製品の売上拡大と、新薬開発によるポートフォリオの強化を両輪として、安定した成長を目指している。
肥満治療市場への参入 競争激化の中でアムジェンの戦略は成功するか
アムジェンは肥満治療市場への本格的な参入を進めている。この分野では、ノボノルディスク(NVO)やイーライリリー(LLY)がすでに大きなシェアを握っており、競争は熾烈である。アムジェンはこの市場での競争力を高めるため、新たな肥満治療薬「MariTide」の開発を加速させている。この薬剤は従来のGLP-1受容体作動薬よりも注射回数を減らし、持続的な体重減少をもたらすことが期待されている。
現在、MariTideは第2相試験の後期段階にあり、2025年には第3相試験へ進む見込みである。市場投入には一定の時間を要するが、既存の治療薬と比較して優位性を持つことができれば、大きな成長ドライバーとなる可能性がある。ただし、競争相手となるノボノルディスクの「Wegovy」やイーライリリーの「Zepbound」はすでに市場で高い評価を得ており、アムジェンが後発ながらも競争力を確保できるかが焦点となる。
さらに、アムジェンはもう1つの肥満治療薬「AMG 513」も開発中だったが、米国食品医薬品局(FDA)によって臨床試験が一時的に停止された。現在、FDAと協議を進めており、今後の開発方針が注目される。肥満治療市場は拡大傾向にあり、医療費削減の観点からも新たな選択肢が求められているが、規制のハードルも高いため、アムジェンが計画通りに市場投入できるかがカギとなる。
ウォール街の評価は強気か 割安感のある株価が今後の上昇余地を示唆
ウォール街のアナリスト30名のうち、14名がアムジェン株を「強い買い」、12名が「ホールド」と評価している。目標株価の平均は319ドルとされており、これは現在の株価水準から7.5%の上昇余地を示唆している。一方で、最も強気な予測では389ドルとされ、最大で31.1%の上昇が期待されている。アムジェンの予想PER(株価収益率)は約14倍と、ヘルスケア業界の中でも比較的割安な水準にあることが、投資家の注目を集める要因のひとつである。
また、配当利回り3.25%は、ヘルスケア業界の平均1.6%を大きく上回り、安定した配当を求める投資家にとっては魅力的な銘柄となっている。加えて、同社は2030年までの長期成長戦略を掲げており、AI技術を活用した研究開発の効率化や、製造能力の拡大によるコスト削減を進めている。
現在の株価は52週高値から14%以上低い水準にあるが、業績の好調さや成長戦略を考慮すると、この水準は押し目買いのチャンスと見る向きもある。しかし、肥満治療薬の開発リスクや、バイオシミラー市場での競争激化といった要因も無視できない。今後の成長を確実なものとするためには、新薬の市場投入が予定通り進むか、既存製品の売上拡大が継続するかが重要なポイントとなるだろう。
Source:Barchart.com