米国の自動車大手フォード・モーターは、2024年通期決算において売上高1,850億ドルと過去最高を記録したものの、営業利益は前年同期比4.4%減の52億1,900万ドルとなった。 特に電気自動車(EV)部門である「モデルE」は、2024年に50億ドル以上の損失を計上し、2025年も同様の赤字が予想されている。

さらに、ドナルド・トランプ前大統領の関税政策により、カナダやメキシコからの輸入品に対する25%の追加関税が検討されており、フォードの経営に多大な影響を及ぼす可能性がある。 これらの要因を受け、アナリストは同社の2025年の業績見通しを慎重に見守っている。

フォードのEV戦略は再構築を迫られるか

フォードはEV市場での競争力強化を掲げる一方、EV部門「Model e」の巨額損失が事業全体の収益を圧迫している。同部門の2024年の赤字は50億ドルを超え、2025年も損失が続く見通しだ。EV市場は成長が見込まれるものの、競争激化とコスト上昇により、フォードは短期的な収益確保に苦戦している。特に、中国メーカーの台頭は価格競争を加速させ、従来の自動車メーカーにとって大きな脅威となっている。

フォードは、EV開発への投資を抑制しつつも、次世代EVの開発を進めている。しかし、高額な電池コストや充電インフラの整備遅れが課題として残る。消費者のEV需要は一定の水準にあるが、補助金政策の影響や原材料費の高騰が利益率の低下を招いている。EV販売の拡大が進まない場合、フォードは事業の再編やコスト削減策の強化を余儀なくされる可能性がある。

EV市場の成長は不可避であり、フォードが市場シェアを確保するには、競争力のある価格設定と生産コストの削減が不可欠だ。今後、バッテリー技術の進化や生産プロセスの効率化が進めば、EV部門の収益性が改善する可能性もある。だが、短期的には損失の拡大を抑えるための戦略転換が求められるだろう。

関税問題がフォードの業績に与える影響

フォードは近年、国際貿易政策の影響を強く受けており、特にトランプ前大統領の関税政策は今後の経営戦略に大きな影響を及ぼす可能性がある。カナダやメキシコからの輸入品に対する25%の関税が検討されており、これが実施されればフォードのコスト増加は避けられない。2018〜2019年に実施された鉄鋼・アルミニウムの関税だけでも、同社は約10億ドルの損失を被ったとされる。

関税が導入された場合、フォードは価格転嫁を検討するだろうが、現在の市場環境ではそれが容易ではない。自動車価格が上昇すれば、消費者の購買意欲が低下し、販売台数の減少につながる可能性がある。さらに、関税による部品コストの上昇は、EV部門の収益悪化をさらに加速させる要因となる。

フォードのCEOであるジム・ファーリー氏は、関税問題について「自動車産業全体に壊滅的な影響を及ぼす」と警告している。関税が現実のものとなれば、フォードは生産拠点の見直しやサプライチェーンの再構築を迫られることになる。短期的には業績への悪影響が避けられず、株価の低迷が続く可能性も高い。

フォード株の今後の展望と投資判断

フォードの株価は2月11日に52週間の最安値を記録し、今年に入って7%以上下落した。2024年の業績は過去最高の売上高を達成したものの、利益は伸び悩んでおり、市場の評価は厳しい。特に、2025年の業績見通しは弱気であり、EV部門の損失拡大や関税リスクが懸念されている。

アナリストの間では、フォード株に対する評価が分かれている。ウェルズ・ファーゴは目標株価を8ドルに引き下げた一方で、フォードの平均目標株価は10.44ドルと、現在の株価を上回る水準にある。ただし、「買い」と評価するアナリストの割合は減少しており、「売り」と評価する割合は増加傾向にある。短期的には、不透明な市場環境が株価の回復を妨げる要因となるだろう。

フォードの低バリュエーションは投資家にとって魅力的に映るが、リスク要因が多いことを考慮する必要がある。関税政策やEV事業の収益改善が進まなければ、株価の上昇は限定的となる可能性が高い。市場環境が安定するまで、慎重な投資判断が求められる局面といえる。

Source:Barchart.com