MicrosoftはWindows 11のCopilotアプリに新機能を追加し、システム起動時にバックグラウンドで自動実行される仕組みを導入した。これにより、ログイン直後にAlt + Spaceのショートカットキーを使うことで即座にCopilotを起動できるようになった。

さらに、AIの推論能力を強化する「Think Deeper」機能の提供範囲を拡大し、多言語対応も進めている。英語以外にドイツ語やスペイン語などが加わり、ChatGPTとの競争力を高める狙いがある。しかし、これらの機能拡張にもかかわらず、Copilotが依然としてWebアプリの枠を超えず、RAM消費量が1.5GBに達することもあるなど、パフォーマンス面の課題は未解決のままである。

Copilotの「Think Deeper」機能がもたらすAIの高度化と課題

MicrosoftはCopilotの推論能力を強化する「Think Deeper」機能を導入し、より高度なAIアシスタントとしての進化を図っている。この機能はOpenAIの「o1 Strawberry」モデルを基盤としており、従来よりも深い分析や複雑な推論を可能にする。これにより、Copilotの回答精度が向上し、ユーザーの期待に応える形で情報を提供できるようになった。

しかし、この機能には課題もある。まず、処理に要する時間が長くなり、応答速度が遅くなる可能性が指摘されている。特に、リアルタイムでの回答が求められるシナリオでは、ユーザーの利便性を損なう懸念がある。また、「Think Deeper」を活用することで得られる情報の正確性や信頼性についても慎重な検証が必要とされる。AIの推論が深まることで誤った情報がより説得力のある形で提示されるリスクも存在し、Microsoftの今後の精度向上策が問われることになる。

一方で、この機能はCopilotがChatGPTなど他のAIアシスタントと競争する上での重要な要素ともなる。特にビジネス用途では、単なる応答精度の向上にとどまらず、より高度なデータ分析や意思決定支援の分野に進出する可能性もある。Microsoftがどのように「Think Deeper」を発展させ、CopilotをAI市場における強力な選択肢とするのかが、今後の焦点となる。

Copilotの多言語対応とChatGPTとの競争

MicrosoftはCopilotの音声AI機能を強化し、英語以外の言語にも対応させることで、グローバル市場への展開を加速している。新たにドイツ語、スペイン語、フランス語、ヒンディー語などが追加され、より多くのユーザーが母国語でAIアシスタントを利用できるようになった。この動きは、すでに多言語対応を実現しているChatGPTに対抗するための戦略と見られる。

多言語対応のメリットは多岐にわたる。まず、各国のユーザーがより自然な形でCopilotを利用できることで、企業の業務効率向上につながる可能性がある。また、各言語のニュアンスや文化的背景に適応することで、AIの利便性が向上し、Microsoftの製品エコシステム内での統合が進むことが期待される。

しかし、現時点でCopilotがChatGPTと同レベルの多言語対応を実現しているとは言い難い。ChatGPTは既に多くのアプリケーションでの統合が進んでおり、機械翻訳精度や自然言語処理の面で優位に立っている。一方のCopilotは、Windows環境に最適化された形での提供が中心であり、汎用性の面ではまだ改善の余地がある。Microsoftが今後、Copilotをどのように多言語対応の面で強化し、グローバル市場に適応させるのかが注目される。

Copilotは「ネイティブアプリ」なのか 依然として残る課題

Microsoftは昨年12月、Windows 11向けに「ネイティブアプリ」としてのCopilotをリリースした。しかし、実態は従来のウェブラッパーと大きく変わらず、本格的なWindows向けアプリとしての機能を果たしていないとの指摘がある。特に、MicrosoftがCopilotブランドを前面に押し出していることを考えると、ユーザーの期待に対して十分な応答ができているかは疑問が残る。

最大の問題は、Copilotのリソース消費の大きさである。新しいアプリでは600MB〜800MBのRAMを消費し、場合によっては1GBから1.5GBに達することもある。これは、ウェブベースのアーキテクチャを採用しているためと考えられるが、システムリソースを圧迫する点はユーザーにとって大きな課題となる。対照的に、ChatGPTはMacOS環境でスムーズな動作を実現しており、Microsoftのアプローチとの違いが浮き彫りになっている。

Microsoftはこの問題に対処するため、CopilotのUIや動作を最適化する試みを続けている。しかし、本格的なネイティブアプリとしてのCopilotを開発するのか、それともWebアプリの枠組みを維持しながら改良を続けるのかは明確ではない。今後の方向性次第で、Copilotの評価が大きく変わる可能性がある。

Source:Windows Latest