Qualcommが新たに発表したSnapdragon 6 Gen 4は、これまでのSnapdragon 6シリーズと比べて大幅な進化を遂げた。今回のモデルでは、TSMCの4nmプロセスが採用され、エネルギー効率と処理能力が向上している。また、シリーズ初となるARMv9 CPUコアの搭載によって、AI処理やゲーミングパフォーマンスも強化された。
新たなAdreno GPUは前世代比29%向上し、電力効率も12%改善。最大200MPのカメラセンサーに対応するなど、スマートフォンの撮影機能も進化している。5Gモデムはサブ6GHzおよびミリ波に対応し、Wi-Fi 6EやBluetooth 5.4のサポートも含まれる。
市場投入は今後数カ月以内と見られ、初採用メーカーにはRealme、Oppo、Honorが名を連ねる。特にインド市場向けの普及モデルとして、100〜150ドルの価格帯で登場する可能性が高い。
TSMC 4nmプロセスがもたらすSnapdragon 6 Gen 4の進化と競争力

Snapdragon 6 Gen 4は、Qualcommのミドルレンジ向けチップセットとして初めてTSMCの4nmプロセスを採用した。これにより、製造精度の向上と電力効率の改善が期待される。従来のSnapdragon 6シリーズでは、Samsungの4nmプロセスやTSMCの6nmプロセスが用いられていたが、今回の変更は競争力の強化を意図したものと考えられる。
TSMCの4nmプロセスは、AppleのA16 BionicやMediaTekのDimensity 8100などにも採用され、高い信頼性と安定した供給能力を持つ。Qualcommがこれまで一部のミドルレンジ向けチップでSamsungの製造ラインを利用していたのに対し、今回はTSMCへの完全移行となった点が注目される。これは、歩留まり率の向上や消費電力削減のメリットを重視した決定とみられる。
しかし、TSMCの最先端プロセスは高コストであるため、Snapdragon 6 Gen 4の採用端末が価格競争力を維持できるかが焦点となる。今回のチップセットは100〜150ドルのスマートフォンへの搭載が想定されているが、コスト増を吸収するために他のコンポーネントでの調整が必要になる可能性もある。
TSMCプロセスの恩恵を活かしつつ、適正価格を実現できるかが市場投入後の評価を左右するだろう。
ARMv9 CPUコアとAI処理の進化が示すスマートフォンの新たな潮流
Snapdragon 6 Gen 4は、シリーズ初のARMv9 CPUコアを搭載し、スマートフォンの計算能力とAI処理能力を強化した。従来のSnapdragon 6シリーズはARMv8アーキテクチャをベースにしており、Cortex-A78やCortex-A55といった旧世代のコアを使用していたが、新モデルではCortex-A720およびCortex-A520へと移行した。
ARMv9アーキテクチャの採用によって、CPUの性能向上だけでなく、セキュリティ機能の強化も図られている。ARMv9には「Confidential Compute Architecture(CCA)」と呼ばれる技術が導入されており、個人データをより安全に処理できる環境が構築される。これは、スマートフォンのセキュリティが求められる現在の市場ニーズに応えるものといえる。
また、新たなCPUコアとともに、INT4(整数演算)のサポートによってAI処理の効率も向上した。INT4は、大規模なAIモデルを低消費電力で動作させるための技術であり、限られたハードウェアリソースでも高度なAI処理を実現できる。
Qualcommはこの技術を活用し、スマートフォン上での大規模言語モデル(LLM)の動作を可能にする計画を進めている。この流れは、スマートフォンが単なる通信端末から、より高度なAIデバイスへと進化する兆しを示している。
Snapdragon 6 Gen 4の市場投入がもたらす競争構造の変化
Snapdragon 6 Gen 4は、Realme、Oppo、Honorといったメーカーが最初に採用するとされており、特にインド市場での展開が期待されている。これらのブランドは、ミドルレンジからエントリークラスのスマートフォン市場で強い影響力を持つため、新たなチップセットの搭載が業界全体にどのような影響を与えるかが注目される。
インド市場は、価格競争が激しい市場であり、100〜150ドルという低価格帯の製品でSnapdragon 6 Gen 4がどれだけのパフォーマンスを発揮できるかが問われる。特に、同価格帯ではMediaTekのHelio GシリーズやDimensity 700シリーズといった競合製品が存在し、Snapdragon 6 Gen 4がこれらに対して優位に立てるかが焦点となる。
また、5Gモデムの搭載によって、低価格スマートフォン市場においても5G対応が標準化する可能性が高い。Snapdragon 6 Gen 4は、サブ6GHzとミリ波の両方をサポートしており、通信速度の向上と安定性の強化を実現している。これにより、5Gの普及が遅れている市場でも、手頃な価格で次世代通信技術が享受できる環境が整うと考えられる。
このような市場変化の中で、Qualcommがどのように競争優位性を確保するかが今後の鍵を握る。Snapdragon 6 Gen 4の性能向上は明らかであるが、価格とパフォーマンスのバランスが市場でどのように受け入れられるかが最終的な評価を決定づけるだろう。
Source:GSMArena