ARK Investの創業者であるキャシー・ウッド氏が、変動の激しいテクノロジー株市場において積極的なポートフォリオ調整を行っている。最近の取引では、ロボティクスと自動化技術を手掛けるUiPathの株式を2100万ドル相当売却する一方で、半導体大手クアルコムの株式を900万ドル分購入した。この動きはARKの基本戦略である「安く買い、高く売る」を反映しているが、UiPathの株価下落が続く中での売却が最適だったのかが注目される。
UiPathの株価は2024年に約20%下落し、2025年も約5%のマイナスを記録している。ARKは2月6日にも同社株を約1000万ドル相当売却しており、直近の取引を含めると持ち株を大幅に削減した。それでもARKは依然として約2600万株を保有しており、ETF資産の約6%を占める。一方、クアルコムの株価は2024年に50%上昇し、2025年も約10%の伸びを見せている。ARKは2月6日に121,696株を購入し、同社株の保有量を約150万株(ETF資産の約2%)に増やした。
この売買はARKの特徴的な戦略の一環だが、テクノロジー株は市場環境や経済指標に左右されやすく、短期的な株価変動を捉えることは容易ではない。ウッド氏の取引が今後の市場動向に対してどのような影響を及ぼすのか、投資家の間で議論が続く。
ARKのUiPath売却 背景にある市場環境とリスク評価
ARKがUiPath株を売却した背景には、同社の株価が長期的に低迷している状況がある。2024年には約20%下落し、2025年に入ってからも約5%下落している。この継続的な下落は、UiPathの業績不安や市場環境の影響を受けたものであり、ARKにとってポートフォリオの調整が不可欠だったと考えられる。
また、AIやロボティクス分野の企業に対する市場の評価は依然として高いものの、実際の業績が期待に届かない企業も多い。UiPathは、自動化ソリューションの提供企業として一定の評価を得ているが、競争の激化や成長鈍化が懸念材料とされている。ARKは依然として約2600万株を保有し、ETF資産の約6%を占めているが、これをどのように扱うかは市場の状況次第となる。
一方で、ウッド氏の戦略にはリスクもある。UiPath株の下落傾向が続く中での売却は損失を確定させる側面があるが、同社の成長余地をどのように判断するかが分かれ目となる。ARKは過去にもボラティリティの高い銘柄を短期間で売買してきたが、短期的な株価変動が予測しにくいテクノロジー株において、この戦略が今後どのような成果をもたらすかは不透明である。
クアルコムの買増し ARKが注目する半導体市場の動向
ARKがクアルコム株を購入した背景には、半導体市場の堅調な成長がある。2024年に50%上昇し、2025年も約10%の上昇を記録するなど、同社の株価は市場全体の回復とともに好調に推移している。特に、5G技術の普及やAI関連の需要拡大が、クアルコムの収益を押し上げる要因となっている。
半導体業界全体として、AIチップや高性能プロセッサの需要が急増しており、クアルコムもこれに対応した製品を展開している。スマートフォン向けのSnapdragonシリーズだけでなく、自動運転やIoT向けの半導体も強化しており、これが市場での評価を高めている。ARKはこの成長機会を捉え、長期的な収益拡大を見込んでポジションを増やしたと考えられる。
ただし、半導体市場もまたボラティリティが高い分野であり、供給不足や地政学的リスクが影響を及ぼす可能性がある。特に、米中関係の緊張や規制強化が業界全体に影響を与える懸念がある。ARKの戦略は、市場の短期的な変動を活用するものであり、クアルコムへの投資がどのような成果を生むかは今後の動向次第となる。
ウッド氏の戦略の評価 ボラティリティを活用する投資の難しさ
ウッド氏の投資スタイルは「安く買い、高く売る」ことを基本としているが、テクノロジー株のボラティリティが高いことを踏まえると、その成功は市場環境に大きく左右される。今回のUiPath売却とクアルコム買増しも、この戦略の一環と考えられるが、テクノロジー株が短期間で急変することを考慮すると、慎重な判断が求められる。
ARKはこれまでにも、急成長する企業に早期に投資し、その後の株価変動に応じて柔軟に売買するスタイルを取ってきた。しかし、その手法にはリスクも伴う。UiPathの売却が最適な判断であったかどうかは、今後の業績と市場評価によって変わる可能性がある。
また、クアルコムの買増しは、成長が見込まれる半導体市場への期待を示しているが、市場環境の変化によっては再びポートフォリオの再構築が必要になるかもしれない。投資家にとっては、ARKの動きを追うだけでなく、市場全体のリスクを考慮した判断が求められるだろう。
Source:TheStreet
