オックスフォード大学の研究チームが量子コンピュータ分野で画期的なブレークスルーを達成した。論理ゲートをネットワーク越しに量子テレポーテーションすることに成功し、分散型量子コンピューティングの実現可能性を示した。この進展は、量子コンピュータのスケーラビリティ問題を克服する鍵となると見られ、産業界に大きな影響を与える可能性がある。

市場では、この技術革新を背景に量子コンピュータ関連企業への関心が高まっている。特に、リゲッティ・コンピューティングとアルファベットの2社は、今後の成長が期待される注目銘柄とされる。リゲッティは超伝導量子プロセッサの開発を進めており、2025年までに100量子ビット超のシステムを実現する計画を掲げる。一方、アルファベットは最新の量子プロセッサ「Willow」により、従来の計算能力を凌駕する成果を上げている。

この分野の成長は長期的な視点が求められるが、技術の進展が投資機会を生み出すことは確実である。今後の市場動向とともに、これらの銘柄の動きを注視する必要がある。

オックスフォード大学の研究がもたらす量子コンピューティングの転換点

オックスフォード大学の研究チームが達成した量子テレポーテーションの成功は、量子コンピュータのネットワーク化を現実のものとする可能性を示している。これまで、量子コンピュータの拡張にはスケーラビリティの問題が立ちはだかっていたが、今回の成果により複数の量子プロセッサを接続し、一つの統合システムとして機能させる道が開かれた。

この実験では、量子論理ゲートを遠隔地にある別の量子プロセッサへテレポートし、相互作用を可能にした。従来の量子コンピュータでは、一つのシステム内で計算を完結させる必要があったが、この技術は、異なるデバイス間で計算を分散させる新たな枠組みを提供する。これは、従来のクラウドコンピューティングと同様に、分散処理の概念を量子の領域へと拡張するものといえる。

さらに、この技術は、量子コンピュータの商業化において重要な一歩となる可能性を秘めている。現在、量子コンピュータの運用には膨大なコストがかかるが、分散型のシステムが実現すれば、計算資源を最適化し、より多くの研究機関や企業が量子技術にアクセスできるようになる。特に、金融、医薬、AI分野では、量子コンピュータの能力が飛躍的に向上することで、新たな市場機会が生まれると予測される。

リゲッティ・コンピューティングの成長戦略:超伝導量子プロセッサの優位性

量子コンピュータ市場の成長とともに、リゲッティ・コンピューティング(RGTI)の動向が注目されている。同社は、超伝導量子プロセッサを基盤とした量子コンピュータ開発を進めており、クラウド環境との統合を推進する「Quantum Cloud Services」を提供している。この技術により、公的・私的クラウド環境での量子計算の実用化が加速すると見られる。

リゲッティの戦略の中核をなすのは、量子ビット(qubit)の精度向上と、システム全体のスケーラビリティの確保である。2025年半ばまでに36量子ビットのシステムを開発し、年末には100量子ビット超のシステムをリリースする計画を進めている。さらに、より大規模な336量子ビットシステムの開発も視野に入れている。特筆すべきは、リゲッティの量子ゲートの処理速度が60〜80ナノ秒と競争他社を上回る性能を持つ点である。

しかし、財務状況は成長途上の企業らしく、課題もある。2024年第3四半期の売上高は240万ドルと前年同期の310万ドルから減少し、粗利益率も51%へと低下した。ただし、純損失は1480万ドルに縮小し、キャッシュフローも安定している。市場評価では、5人のアナリストのうち4人が「強い買い」を推奨し、今後の成長に期待を寄せている。

リゲッティの成長は、量子コンピュータ市場の発展と密接に結びついている。特に、分散型量子コンピューティングの普及が進めば、同社の技術が広範な分野で活用される可能性が高い。これにより、従来のハードウェア依存型の量子計算から、ネットワークを介した柔軟な計算環境への移行が進むと考えられる。

アルファベットの量子戦略:Willowプロセッサが示す次世代技術の可能性

アルファベット(GOOG / GOOGL)は、量子コンピュータの分野で先行する企業の一つであり、Google Quantum AIが開発する最新の量子プロセッサ「Willow」により、さらなる技術革新を進めている。このプロセッサは、従来のスーパーコンピュータでは数十億年かかる計算をわずか5分で完了する能力を持つとされている。

特に、量子コンピュータの大きな課題であったエラー率の削減に成功した点が注目される。通常、量子ビットの増加に伴いエラー率も増加するが、Willowはこの問題を逆転させ、量子ビット数を拡張することでエラーを指数関数的に低減させる技術を開発した。この進展は、量子コンピュータの大規模実装に向けた重要なステップとなる。

また、アルファベットの財務基盤は、この分野での長期的な投資を可能にする。同社は2024年にフリーキャッシュフロー728億ドルを計上し、23.5億ドルの現金を保有するなど、資金力の面で他社を圧倒している。これにより、短期的な利益を求めず、量子コンピュータの実用化に向けた研究開発を継続できる強みがある。

市場全体を見ても、量子コンピュータの成長余地は大きい。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の予測によれば、2040年までにこの市場は8500億ドル規模に達する可能性がある。アルファベットのような巨大企業がこの分野を主導することで、技術革新が加速し、実用化が早まる可能性もあるだろう。

一方で、NVIDIAのCEOであるジェンスン・フアンが指摘するように、量子コンピュータの完全な実用化には依然として時間がかかると見られている。しかし、アルファベットが持つ技術力と資金力を考えれば、長期的な視点での投資対象としては魅力的な選択肢となる。市場の変化を見極めながら、量子コンピューティングの進展に注目する必要がある。

Source: Barchart.com