著名投資家ビル・アックマン率いるパーシング・スクエア・キャピタル・マネジメントが、Uber Technologies(UBER)の大規模な持ち株を開示し、市場で注目を集めている。最新の13F報告書によると、同社はUberの株式3,030万株(約23億ドル相当)を取得しており、同銘柄に対する強気姿勢を鮮明にした。Uberの収益性向上とキャッシュフローの改善が、アックマンの投資判断を後押ししたと見られる。

しかし、Uberだけがアックマンの注目銘柄ではない。彼のヘッジファンドは、オルタナティブ資産管理大手のブルックフィールド(BN)、スポーツブランドの巨頭ナイキ(NKE)、外食チェーンのチポトレ・メキシカン・グリル(CMG)にも投資を拡大している。これらの企業はそれぞれ異なる業界で確固たる市場地位を築いており、今後の成長期待が高い。

アックマンのポートフォリオからは、インフラ投資の拡大、高ブランド力の維持、消費者動向の変化を見極めた戦略が読み取れる。彼が選定したこれらの企業は、今後の市場の動向を占う上で重要な指標となるだろう。

Uberの再評価が示す次世代プラットフォーム企業の進化

Uber Technologies(UBER)は、従来のライドシェア事業から多角化を進め、収益性の向上を実現しつつある。アックマンがUber株を大規模に取得した背景には、同社のキャッシュフロー改善と利益成長がある。特に、2025年第1四半期の総予約額が前年同期比18%増と予測されるなど、成長の加速が明確になっている。

Uberの強みは、ライドシェアに加えてフードデリバリー事業「Uber Eats」の堅調な成長と、広告ビジネスの拡大にある。近年、広告部門の収益は急成長し、同社の利益率向上に寄与している。また、サブスクリプション型の「Uber One」会員制度が、リピーターの増加を促し、安定した収益基盤を築いている。

一方で、Uberは規制リスクを抱えており、各国の労働法改正やドライバーの待遇改善要求がコスト増加につながる可能性がある。それでも、アックマンがUberを選好するのは、事業モデルの転換が順調に進み、成長性を維持できると判断しているからだろう。プラットフォーム企業が単なるマッチングサービスにとどまらず、収益多角化を図ることが、今後の市場で競争優位性を高める鍵となる。

ブルックフィールドのインフラ投資が示す長期資産の魅力

ブルックフィールド(BN)は、不動産、再生可能エネルギー、インフラ、プライベート・エクイティといった分野に幅広く投資する資産管理会社である。特に、インフラ分野への投資拡大が目立ち、今後15年間で100兆ドル規模のインフラ基金を立ち上げる計画を持つ。これには、AI関連インフラへの8兆ドルの投資も含まれ、次世代技術を活用した事業成長が期待される。

同社の強みは、長期的な資産運用を基盤に安定したリターンを提供できる点にある。ブルックフィールドは、過去に企業買収や事業再建を通じて利益を生み出し、年率15%のリターンを目標としている。さらに、株価収益率(PER)が16.2倍と市場平均と比較して割安であり、機関投資家からの資金流入が見込まれる。

しかし、金利上昇局面では、インフラ投資に必要な資金調達コストが増大し、短期的な収益圧迫要因となる可能性がある。だが、インフレ耐性のある資産を保有するブルックフィールドは、こうした市場環境でも安定した収益を維持できると考えられる。アックマンが同社に投資を拡大した背景には、長期的な成長機会と安定性の両立を評価している点が挙げられる。

ナイキとチポトレの対照的な戦略 ブランド価値の維持が鍵

ナイキ(NKE)は、世界的なブランド力を持ちながらも、近年業績の低迷が目立つ。2025年度の売上が460億ドルに減少する見込みであり、中国市場の低迷や強いドルの影響、eコマース部門の業績不振が響いている。特に、中国市場はナイキにとって重要な収益源であり、成長の鈍化が全体の業績に影響を与えている。

一方、ナイキは長期的な視点でブランド戦略を強化しており、過剰供給ブランドの削減やプレミアム市場へのシフトを進めている。これにより、利益率の改善が期待されるが、消費者の購買行動の変化に対応できるかが今後の成長を左右する要素となる。アックマンの投資は、ナイキのブランド価値が短期的な業績悪化を乗り越え、持続的な成長を実現すると見込んでの判断だろう。

対照的に、チポトレ・メキシカン・グリル(CMG)は、急成長を続ける企業であり、店舗拡大戦略が奏功している。2020年以降、毎年二桁成長を記録し、直近の四半期決算でも売上高が前年同期比13.1%増の28億ドルに達した。さらに、新規出店を進め、3,726店舗まで拡大。将来的には北米で7,000店舗展開を目指しており、売上400万ドルの店舗モデルを確立することが目標となる。

チポトレは、健康志向の消費者ニーズを捉え、ファストカジュアル市場で独自のポジションを確立している。利益成長率が高く、株価は歴史的に大きく上昇しているものの、予想PERは36.6倍と割高な水準にある。それでもアックマンが投資を決めたのは、同社のブランド力と成長戦略が今後の市場環境でも有効に機能すると考えられるからだ。

ナイキとチポトレは対照的な状況にあるが、両社ともブランド価値を維持しながら事業モデルを適応させることが求められる。アックマンの投資は、消費者ニーズの変化を見極めながら、中長期的に成長を続ける企業を選定する戦略に基づいている。

Source:Barchart.com