Wedbush証券のアナリスト、ダン・アイヴス氏がテスラ(TSLA)に対する最新の評価を発表し、株価は3%上昇し346.88ドルとなった。彼は、イーロン・マスク氏とトランプ政権の関係が、米国の自動運転政策に好影響を及ぼし、同社の評価額が1兆ドル規模に達する可能性があると指摘している。
また、アイヴス氏はテスラの技術革新に対して楽観的な見方を維持し、監視なしの自動運転テストや低価格モデルの導入が成長の鍵となると評価した。一方で、中国市場での販売減少や米中貿易摩擦の激化がリスク要因として浮上しており、競合するBYDの成長がテスラの市場シェアに影響を与える可能性がある。
彼は「アウトパフォーム」の評価を維持し、目標株価を550ドルと設定。しかし、中国市場における地政学的リスクが、今後の成長を左右する重要な要素となることを警告している。
イーロン・マスクの戦略と自動運転技術の進展

テスラの成長を牽引する大きな要因の一つが、自動運転技術の進展である。現在、同社は「完全自動運転(FSD)」の開発を加速させており、監視なしの自動運転テストが進められている。この技術が確立されれば、ロボタクシー市場の拡大が期待され、テスラの収益構造にも大きな変化をもたらす可能性がある。
また、イーロン・マスク氏の戦略的な動きも注目に値する。彼は政治との関係構築にも積極的であり、トランプ政権との結びつきが米国の自動運転政策の推進に影響を与える可能性がある。連邦政府の支援を受けた規制緩和が進めば、テスラにとって有利な市場環境が整うことになる。
一方で、競合企業も自動運転分野において急速に技術開発を進めている。特に中国企業はAI技術を駆使し、独自の自動運転システムを構築しており、テスラが市場優位性を維持するためにはさらなる技術革新が求められる。マスク氏のリーダーシップの下で、どのように技術競争を乗り越えるのかが今後の焦点となる。
中国市場の課題:BYDとの競争と地政学リスク
テスラにとって中国市場は極めて重要な位置を占めるが、現在その環境は厳しさを増している。最新のデータによれば、テスラの中国市場における販売台数は前年同期比で11.5%減少し、63,238台にとどまった。一方、競合するBYDは296,446台を販売し、47.5%の成長を記録した。これは、中国市場における競争の激化を如実に示している。
この背景には、中国政府の電気自動車産業への積極的な支援策がある。BYDをはじめとする中国メーカーは、政府の補助金や政策支援を受け、価格競争力を高めている。テスラも現地生産を進め、コスト削減を図っているが、関税や政策の影響を完全に回避することは難しい。
さらに、米中貿易摩擦の影響がテスラの事業戦略に不確実性をもたらしている。米国と中国の関係が悪化すれば、中国政府がテスラに対して報復的な措置を講じる可能性もあり、これは同社の販売に直接的な影響を及ぼす要因となる。テスラが中国市場での競争を優位に進めるためには、政府との関係を慎重に構築し、現地でのブランド価値を高める戦略が必要となる。
テスラの株価見通し:成長とリスクのバランス
Wedbush証券のダン・アイヴス氏は、テスラの株価目標を550ドルと設定し、「アウトパフォーム(市場平均を上回る)」の評価を維持している。この強気な見通しの背景には、テスラの技術革新と事業の多角化がある。監視なしの自動運転技術の進展、低価格モデルの導入、ロボティクス分野への進出などが、同社の成長を支える要素となっている。
しかし、市場環境には依然としてリスクが存在する。中国市場での競争激化に加え、米国国内でも競合メーカーが台頭しており、テスラの市場シェアを脅かす要因となり得る。特に、フォードやGMなどの大手自動車メーカーは電動化戦略を加速させており、テスラの独占的な地位が揺らぐ可能性も否定できない。
また、マスク氏の経営手法や発言が市場に影響を与えることも懸念材料の一つである。例えば、暗号資産「DOGE(ドージ)」への関与は投資家の信頼を揺るがす要因ともなり得る。テスラが長期的に成長を続けるためには、技術革新だけでなく、経営の安定性や市場環境への適応力も求められる。
Source:Wall Street Pit