ギリシャのPCゲームメディア「Dark Side of Gaming」は、NVIDIAのRTX 4090 Founder’s Editionを2年間にわたり使用した結果、公式の16ピン(12VHPWR)電源コネクタの一部が溶解し、ピンが露出していることを発見した。

同メディアは、ゲームテストやベンチマーク中、ケーブルを常にカードに接続したまま慎重に取り扱っていたが、それにもかかわらずコネクタのプラスチック部分が溶けていた。驚くべきことに、溶解したケーブルは正常に機能し、RTX 4090およびRTX 5090でのテストでも安定した動作が確認された。

この事例は、従来指摘されていた「接続の不完全さが溶解の主因」という説に一石を投じる可能性がある。NVIDIAは、12VHPWRコネクタの溶解問題に対処するため、新しい12V-2×6コネクタを導入したが、一部のRTX 40および50シリーズのボードには依然として旧型のコネクタが採用されており、溶解リスクが残っている。

このような状況を踏まえ、RTX 4090ユーザーは定期的に電源接続部分を点検することが推奨される。

RTX 4090の電源コネクタ問題が浮き彫りにする12VHPWRの設計上の課題

RTX 4090に採用された12VHPWRコネクタは、登場当初から発熱や溶解のリスクが指摘されてきた。今回の事例では、慎重に扱われていたにもかかわらず、2年間の使用を経て溶解が発見された。NVIDIAは、この問題を受けて改良版の12V-2×6コネクタを発表しているが、一部のモデルでは依然として旧型が使用されている。

12VHPWRコネクタの設計上の問題点として、まず「接続の完全性」が挙げられる。コネクタが完全に挿入されていないと、接触不良が発生し、それが高温の原因となる。従来の報告では、十分に挿入されていないことが発熱・溶解の主因とされてきた。

しかし、今回の事例では、2年間一度も取り外されることなく安定した接続が維持されていたにもかかわらず、溶解が発生した点が新たな問題を提起している。また、12VHPWRは高い電力供給能力を持つが、実際には不均一な電流分配が原因で、特定のピンに過負荷がかかることがある。

独立系オーバークロッカーDer8auerのテストでは、特定のピンが極端に発熱する現象が確認されている。こうした構造的な問題が、長期間の使用で蓄積し、最終的に溶解に至る可能性も考えられる。RTX 4090の電源コネクタ問題は、単なるユーザーの取り扱いミスではなく、設計そのものに潜む課題を示している。

これを受け、メーカー側のさらなる検証と、より安全な電源接続の標準化が求められる。

電源ユニットの選択が溶解リスクに及ぼす影響

電源ユニットの選択が、12VHPWRの安全性に大きく関わることは、これまでの報告からも明らかである。今回の事例では、使用されていたのがCorsairのHX1200(80 Plus Platinum認証、1200W)という高品質な電源であり、電圧変動や供給不足が原因とは考えにくい。

一方、過去の事例では、品質の低い電源ユニットが使用されていたケースで、電源供給の不安定さがコネクタの過熱を引き起こした可能性が指摘されている。特に、12VHPWRに対応する電源ユニットであっても、変換アダプタを用いた接続では電流の均等分配が崩れ、特定のピンへの負荷が偏るリスクがある。

また、一部の電源ユニットでは、12VHPWRの定格出力を保証しているものの、実際の運用では最大供給電流が安定しない場合もある。これは、GPUの突発的な負荷変動に追従できず、一部のピンが過剰な負荷を受けることが原因と考えられる。

RTX 4090のような高負荷GPUを使用する場合は、品質の高い電源ユニットを選択するだけでなく、余裕のある電力供給設計を心掛けることが重要となる。今回の事例は、公式ケーブルが使用され、適切な電源ユニットと組み合わせても溶解が発生する可能性を示唆している。

つまり、電源ユニットの選択だけでリスクを完全に排除できるわけではなく、ケーブルの設計そのものの見直しも必要である。

RTX 4090ユーザーに求められる安全対策と今後の展望

今回の事例を踏まえ、RTX 4090ユーザーは電源コネクタの点検を習慣化することが求められる。特に、12VHPWRケーブルが発熱していないか、異常な変色や焦げた匂いがないかを定期的に確認することが重要である。加えて、コネクタの差し込みが完全であることを、物理的な圧力を加えながら慎重に確認する必要がある。

また、NVIDIAは次世代のRTX 50シリーズで12V-2×6コネクタへの移行を進めているが、旧型の12VHPWRを搭載したGPUが依然として市場に残ることを考慮すると、今後数年間はこの問題が継続する可能性がある。サードパーティ製の補助電源ケーブルメーカーも、より安全な設計のケーブルを提供し始めているが、それらが根本的な解決策となるかは不透明だ。

最終的に、RTX 4090ユーザーにとって重要なのは、単に「溶解の可能性がある」ことを認識するだけでなく、「溶解していても気づきにくい」という点に留意することである。今回の事例でも、カード自体は問題なく動作していたため、コネクタの異常に気づく機会がなかった。発火やGPUの故障を未然に防ぐためにも、ユーザー自身が積極的に点検を行うことが求められる。

NVIDIAが今後の製品で電源コネクタの設計をどこまで改良できるかは不明だが、RTX 4090の電源ケーブル問題は、ハイエンドGPUの長期使用における新たなリスクを示している。この問題を教訓とし、次世代GPUではより安全な電源管理技術が求められることは間違いない。

Source:Tom’s Hardware