中国の大手テクノロジー企業Baiduが、AIチャットボット「Ernie Bot」を4月1日からすべてのユーザーに無料提供すると発表した。これまで月額最大59.9元を課していた高度な機能も開放される。競争が激化する中、OpenAIのChatGPTやMicrosoftのCopilot、さらには国内競合のDeepSeekやByteDanceのDoubaoに対抗するための戦略とみられる。

Baiduは市場競争の中で苦戦を強いられており、Ernie Botのアクティブユーザー数は競合他社よりも少ない。無料化の背景には、技術のアップグレードとコスト削減があり、これによりより多くのユーザーを獲得し、AIの精度向上に必要なデータ収集を加速させる狙いがある。発表を受け、Baiduの株価は香港市場で11%以上急騰した。

一方で、OpenAIやMicrosoftもAI技術の革新を進めている。OpenAIはガイドラインを改定し、センシティブなトピックへの対応を見直したほか、GPT-4.5やGPT-5のリリース準備を進める。MicrosoftもCopilot+ PC向けにDeepSeek R1モデルを導入予定であり、AI分野の競争はさらに激しさを増している。

世界規模で激化するAIチャットボット市場競争

AIチャットボット分野では、OpenAIのChatGPTやMicrosoftのCopilotが市場を牽引しており、中国企業もこの波に乗ろうとしている。百度(Baidu)は国内で先駆的に「Ernie Bot」を発表したものの、競争の激化により思うように市場シェアを拡大できずにいた。特に国内のDeepSeekやByteDanceのDoubaoは、低コストかつ高性能なモデルを提供し、ユーザーを急速に獲得している。

百度が4月1日から「Ernie Bot」を無料化する決定を下したのは、こうした市場環境の変化が背景にある。これまでは月額59.9元(約8.18ドル)でプレミアム機能を提供していたが、競争力を高めるためにこれを完全無料化する。技術の向上と運用コストの削減が可能になったことも、この戦略を後押しした要因である。

さらに、AIの発展にはデータの蓄積が不可欠である。無料化によってより多くのユーザーを獲得し、生成AIの精度を高めるための膨大なデータを収集できることは、百度にとって大きな利点となる。事実、無料化の発表後、百度の株価は香港市場で11%以上上昇し、市場からの期待が示された。

無料化のメリットと潜在的なリスク

百度の「Ernie Bot」無料化は、市場シェア拡大やデータ収集において明確なメリットをもたらすが、潜在的なリスクも抱えている。第一に、収益モデルの変化である。これまで課金制で一部のユーザーに提供していた機能を無料化することで、短期的には収益減少が避けられない。

また、無料化に伴うユーザー急増により、サーバー負荷が増大する可能性がある。AIチャットボットの運用には大量の計算資源が必要であり、無料化後に品質が低下すれば、かえって競争力を損なう恐れもある。OpenAIやMicrosoftのモデルは高い安定性を誇っており、百度が同レベルの品質を維持できるかが鍵となる。

さらに、中国国内では規制が厳しく、AIの使用に関するガイドラインが厳格に定められている。OpenAIは最近ガイドラインを更新し、センシティブなトピックへの対応を緩和したが、中国の規制環境では同様の自由度を実現するのは難しい。競争が激化する中、百度がどのように法規制を遵守しながら市場での優位性を確立するかが注目される。

OpenAI・Microsoftの最新動向と今後の展望

百度の動きに対し、OpenAIやMicrosoftも新たな戦略を展開している。OpenAIは今後数週間から数カ月以内にGPT-4.5およびGPT-5をリリースするとされ、AIの精度と自由度をさらに向上させることを目指している。最近のガイドライン改定では、センシティブなトピックへの対応が緩和される一方で、ディープフェイクやリベンジポルノなどの悪用を防ぐための制限は維持されている。

Microsoftも独自の強化策を進めており、NPU(ニューラルプロセッシングユニット)に最適化された「DeepSeek R1モデル」をCopilot+ PCに導入予定だ。このモデルはまずSnapdragon Xチップ向けに実装され、その後Intel Core Ultra 200Vにも対応する計画である。これにより、クラウドに依存せずにローカル環境でAIを実行できるようになり、データの安全性が向上する。

このように、百度の無料化戦略はAI市場に大きな影響を与えるが、同時にOpenAIやMicrosoftも進化を続けており、競争は一層激しさを増すだろう。百度が市場でどこまで影響力を拡大できるのか、今後の展開が注視される。

Source: MSPoweruser