ビットコイン市場が乱高下する中、大口投資家(クジラ)が急落を好機と捉え、大量の買い増しに動いている。オンチェーンデータによれば、2月5日には40,000BTCが新たに蓄積され、その総額は38億ドルに上る。
ビットコインは1月20日に109,114ドルの最高値を記録したものの、その後95,301ドルまで12.39%下落した。この下落局面でクジラの買い意欲は増し、特に10万ドルを下回ったことで買いの勢いが加速した。一方、小口投資家は売却を進めており、市場全体に明確な対照が見られる。
また、2月5日には米国のビットコインETFへの純流入が年初来最高を記録し、2024年11月以来の水準となった。米国政府による戦略的ビットコイン備蓄の議論も進む中、価格変動の裏で資本の流れは大きく変わりつつある。
クジラの大量買い増しが示す市場の力学

ビットコインの急落にもかかわらず、大口投資家が38億ドル相当のBTCを買い増した背景には、市場の構造的な力学が関係している。特に、短期的な価格変動を避けようとする小口投資家と、長期的な成長を見越して資産を積み上げる大口投資家との間には明確な対比が見られる。
IntoTheBlockのデータによれば、価格が10万ドルを割った2月初旬からクジラの買い増しが顕著になった。40,000BTCもの純流入が記録された2月5日には、市場の売り圧力を押し戻すほどの動きが確認されている。この流れは、2024年後半から続く機関投資家の参入拡大とも無関係ではない。米国で承認されたビットコインETFの存在が、従来よりも大規模な資金流入を可能にしている。
一方、短期トレーダーや小口投資家は、ビットコイン価格の変動に敏感に反応しており、特に高値圏での調整局面では売却に走る傾向が強い。CryptoQuantのデータでも、小口投資家の保有量は2024年11月から減少傾向にあり、対照的に大口投資家の買い増しが継続している。こうした市場動向は、長期的な視点を持つ投資家が現在の価格帯を割安と判断している可能性を示唆する。
市場の流れを決定づけるのは、短期的な売買よりも大規模な資金移動である。クジラの動きが今後の価格回復の兆しとなるかどうか、引き続き市場の注視が必要だ。
マイナーの投げ売りとハッシュリボンの示唆
ビットコインの採掘業者(マイナー)は、価格下落時に保有するBTCを売却することで市場に供給を増やすことがある。CryptoQuantのデータによれば、最近の市場変動の中でマイナーによる売却圧力が強まり、「投げ売り(キャピチュレーション)」の兆候が見られるという。
マイナーの売却が増える背景には、採掘コストとビットコイン価格のバランスがある。ハッシュリボン(Hash Ribbons)と呼ばれる指標では、マイナーの収益が減少すると、一部のマイナーが撤退し、結果的に市場の供給量が減少することが示される。過去のデータでは、この指標が点滅すると、その後の価格回復の前兆となるケースが多かった。
特に、半減期を控えるビットコイン市場では、マイナーの動向が重要な要素となる。次回の半減期ではブロック報酬が現在の6.25BTCから3.125BTCへと減少し、マイナーの収益圧力はさらに高まる見込みである。この影響により、一部のマイナーが採掘を続けることが困難となり、市場での供給量が調整される可能性がある。
市場では短期的な下落とともにマイナーの売り圧力が増すことがあるが、その後の供給調整によって価格が持ち直すケースもある。ハッシュリボンの点滅が示唆するように、今回の局面も価格反転のサインとなるか注視する必要がある。
米国政府のビットコイン戦略的備蓄構想とその影響
米国政府がビットコインの戦略的備蓄を検討しているとの報道が市場の注目を集めている。ニューメキシコ州のアンソニー・ソーントン上院議員が提案した「戦略的ビットコイン備蓄法」では、公共基金の5%をビットコインに配分することが示されており、今後の政策動向が価格形成に影響を与える可能性がある。
この構想は、米国がデジタル資産を国家戦略の一部として活用することを示唆しており、これが実現すれば市場に新たな安定的な需要を生み出すことになる。すでにエルサルバドルなどの国々が国家レベルでビットコインを保有しているが、米国が同様の動きを見せれば、その影響は比べものにならない規模となる。
特に、金融市場におけるビットコインの位置づけが変わる可能性がある。これまで主に投機的資産と見なされてきたビットコインが、国家の準備資産として本格的に組み込まれれば、他国の政府や機関投資家も追随する動きが加速するかもしれない。
ただし、米国の政策決定には時間がかかるため、短期間での影響は限定的と考えられる。現在の市場動向と政府の戦略が交錯する中で、ビットコイン市場が今後どのように変化するのか、注視する必要がある。
Source: Cryptopolitan