Intelの次世代モバイル向けCPU「Panther Lake-H」に関する新たなリーク情報が明らかになった。本シリーズは、16コア、24コア、8コアの異なる構成で展開され、最大64Wのターボ電力(MTP)を特徴とする。特にパフォーマンスモードでは、効率とパワーバランスを最適化した設計が採用されている。
今回のリークでは、Intelが採用する新アーキテクチャ「Celestial」の詳細が示されており、「Core Ultra 300H」シリーズとして市場に登場する可能性が指摘されている。特に16コア構成のチップは、専用GPUを搭載するハイエンドノートPC向けと考えられ、最大80Wの電力制限(cTDP Max)を持つ。
AMDのx86モバイル市場での優位性が続く中、Intelはエネルギー効率と高性能の両立を図り、2026年初頭の市場投入を予定している。競争が激化するモバイルCPU市場において、Intelがどのような戦略で巻き返しを図るのか、今後の動向が注目される。
Intel Panther Lake-Hの電力仕様とその技術的背景
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Intelの次世代モバイル向けCPU「Panther Lake-H」は、リークされた電力仕様からも分かるように、省電力と高性能を両立するための工夫が施されている。基本性能電力(PBP)は最低15W、最大ターボ電力(MTP)は64W、さらには最大電力制限(cTDP Max)80Wという仕様は、従来のCore Ultra 200Hシリーズと比較しても効率的な設計といえる。
この電力仕様が実現可能になった背景には、Intelの新アーキテクチャ「Celestial」の採用がある。このアーキテクチャは、パフォーマンスコアと効率コアのバランスを最適化し、電力消費の抑制と処理速度の向上を両立させる設計となっている。また、Xe3 GPUコアを統合することで、グラフィックス性能の向上も図られており、特に高負荷なタスクにおいて恩恵をもたらす可能性がある。
加えて、「Panther Lake-H」はIntelの最新プロセスである18A(1.8nmクラス)で製造される予定であり、微細化による省電力化が期待されている。これまでのIntelプロセスと比較すると、18Aプロセスはトランジスタ密度を向上させることで電力効率の向上を目指しており、今回のリーク情報からもその影響が現れていることがうかがえる。
一方で、ターボブースト時の最大消費電力64Wという仕様は、モバイルデバイスにとっては負担の大きい数値といえる。特に薄型ノートPCやバッテリー駆動時間が求められる製品において、この消費電力がどのように制御されるのかが重要なポイントとなるだろう。Intelはこの問題を解決するため、パフォーマンスモードと通常モードの二段階で電力制御を行う可能性が高い。
AMDとの競争が激化するモバイルCPU市場でのIntelの戦略
近年のモバイルCPU市場では、AMDがZenアーキテクチャの改良を重ね、電力効率と性能のバランスに優れた製品を提供してきた。特に、Ryzen 7040シリーズやその後継モデルは、ノートPC市場で高い評価を得ており、Intelにとって競争環境はかつてないほど厳しくなっている。
Intelは、この状況を打開するために「Panther Lake-H」において消費電力の最適化を進めるとともに、新アーキテクチャ「Celestial」を導入した。従来のAlder LakeやRaptor Lakeでは、パフォーマンスコアと効率コアのバランス調整に課題があったが、Panther Lake-Hではより効率的な動作が可能になっているとみられる。
特に、16コア(4+8+4)および24コア(4+8+12)モデルは、Intelが求める市場の異なるニーズに対応するための戦略的な展開といえる。16コアモデルは専用GPUを搭載したノートPC向けに、24コアモデルは高性能を求めるクリエイターやエンジニア向けに調整されている。このように用途別の最適化を図ることで、Intelは市場シェアを取り戻そうとしている。
しかし、IntelがAMDと競争する上で最大の課題となるのは、バッテリー駆動時間と発熱の問題だ。特に最大ターボ時64W、最大電力制限80Wという仕様は、長時間の負荷時に発熱が増加し、サーマルスロットリングによるパフォーマンス低下を引き起こす可能性がある。このため、Intelは電力制御の最適化とともに、新たな冷却技術の導入が求められる。
AMDは省電力性能に強みを持ちつつも、Intelの新しい18Aプロセスが市場投入されれば、競争の力学が変わる可能性もある。Intelがどのように市場での競争力を確保するかは、今後の製品発表にかかっている。
Panther Lake-Hの登場がノートPC市場に与える影響
「Panther Lake-H」は、モバイル向けCPUとしての性能向上だけでなく、ノートPC市場全体に与える影響も大きい。特に、ゲーミングノートやハイエンドのクリエイターノートPCにおいて、新たな選択肢となる可能性がある。
近年、ノートPC市場では、高性能と省電力を両立したモデルの需要が高まっている。ゲーミング市場ではNVIDIAのRTX 40シリーズを搭載した製品が主流となっているが、Intelが統合GPUの性能を向上させることで、より薄型のゲーミングノートPCが登場する可能性がある。
また、ビジネス用途やクリエイティブワーク向けのノートPCでも、消費電力とパフォーマンスのバランスが重要視されている。特にAI処理や動画編集などの分野では、CPUとGPUの統合による処理性能の向上が求められる。IntelがXe3 GPUコアを強化したことで、これらの用途に適した製品が登場することが期待される。
さらに、Intelが18Aプロセスの量産を成功させれば、ノートPCの電力効率が飛躍的に向上する可能性がある。これにより、バッテリー駆動時間の長時間化や発熱の抑制が実現し、AMDとの差を縮める契機となるかもしれない。ただし、18Aプロセスの歩留まりや安定供給が市場の鍵を握るため、Intelが計画通りに量産を進められるかが今後の焦点となる。
今後の展開として、Intelがどのように「Panther Lake-H」を市場に投入し、競争力を高めるかが注目される。2026年初頭の製品投入に向けて、さらなる詳細情報の公開が待たれる。
Source:Tom’s Hardware