AMDのゲーミングソリューション担当チーフアーキテクト、フランク・アゾール氏がX(旧Twitter)で発したコメントが話題を呼んでいる。同氏は、32GBの「RX 9070 XTX」開発の噂に対し、冗談交じりに「RX 90700.05XTXT Max 320GB」を紹介し、圧倒的な性能を示唆した。しかし、これは単なる皮肉であり、現実的な計画ではない。
AMDの次世代GPU「RDNA 4」アーキテクチャを採用したモデルにおいて、32GBのVRAMを搭載した製品の登場が完全に否定されているわけではないが、コンシューマー向けではなく、ワークステーションやデータセンター向け「Radeon Pro」シリーズとして投入される可能性の方が高い。AMDの最新情報は2月28日に正式発表される予定であり、その内容が市場にどのような影響を及ぼすのかが注目される。
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32GBモデルの市場適性と技術的課題
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現在の市場動向を踏まえると、32GB VRAMを搭載したGPUがゲーマー向けとして展開される可能性は極めて低い。AMDの「RX 9070」シリーズは16GBモデルが主流になると見られており、32GB VRAMを実装するにはコストの問題が大きな壁となる。現行の「Radeon Pro W7900」は48GBのフレームバッファを搭載しており、32GBモデルを追加する意義は限定的と考えられる。
技術的には、256ビットのメモリインターフェースを採用することで、クラムシェルモードを用いた32GB VRAM搭載が可能である。ただし、その実装には製造コストの増加が伴い、市場の需要が十分でなければ採算が取れない。このため、仮に32GBモデルが登場するとしても、クリエイター向けやAI推論向けといった特定の市場に焦点を当てた展開が予想される。
大規模言語モデル(LLM)向けGPUとしての可能性
近年、大規模言語モデル(LLM)の推論タスクをローカル環境で処理する需要が高まっており、それに伴い32GB以上のVRAMを搭載したGPUの必要性が増している。この点に関して、アゾール氏は「Strix Halo」というチップを例に挙げた。
「Strix Halo」は最大128GBの統合メモリを搭載し、そのうち96GBをGPUが使用可能とされる。このモデルは推論性能でRTX 4090を2.2倍上回るとされる一方で、消費電力(TDP)はその6分の1に抑えられている。しかし、計算処理の全体的な性能において制限が生じる可能性があるほか、搭載製品の価格も高騰しており、市場への普及には課題が多い。
RDNA 4の発表と今後の展開
AMDは「RDNA 4」アーキテクチャの正式発表を2月28日に予定している。このイベントでは、新型GPUの価格や性能が明らかになる見込みであり、「RX 9070 XT」および「RX 9070」が、NVIDIAの「RTX 5070 Ti」や「RTX 5070」と競合することが予想されている。
価格については過度な期待を抱くべきではない。一部の情報では、「RX 9070 XT」の価格が749ドルに達する可能性が指摘されている。ただし、正式な発表まであと10日ほどの猶予があるため、最終的な価格設定は市場動向や競争環境に左右されるだろう。
AMDの新戦略がGPU市場にどのような影響を及ぼすのか、今後の展開が注目される。
Source:X(フランク・アゾール氏)、Tom’s Hardware