OC3Dによれば、AMDの次世代CPUアーキテクチャ「Zen 6」に関するリーク情報が公開された。次期Ryzenプロセッサを支えるこのアーキテクチャは、革新的なコア設計と新しいインターコネクト技術を採用し、CPU性能の大幅な向上をもたらす可能性がある。
最大の特徴は、1つのCCX(Core Complex)が12コア構成となる点で、従来のZenアーキテクチャと比較して50%のコア数増加となる。さらに、AMD独自のブリッジダイ技術が導入され、CCXとIOD(IOダイ)の接続を最適化することで、レイテンシの削減とメモリアクセスの向上が図られるとされている。
AMDはZen 6をTSMCの2nmプロセスで製造する見込みであり、現行の4nmプロセスと比較して密度の向上や電力効率の改善が期待される。また、12コアCCXの採用により、単一CCXで構成されるRyzen CPUの可能性が広がるほか、L3キャッシュの増量や3D V-Cache技術への対応も示唆されている。
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この技術革新が事実であれば、次世代Ryzenは過去の世代を大きく上回る性能を発揮し、市場におけるAMDの競争力を一層高めることになるだろう。
AMDの新技術「ブリッジダイ」がZen 6の性能向上を牽引する
Zen 6の最大の特徴の一つは、新たに採用される「ブリッジダイ」技術である。従来のZenアーキテクチャでは、複数のCCX(Core Complex)とIOD(IOダイ)の通信がレイテンシの要因となっていた。これを解決するために、AMDはUMC(United Microelectronics Corporation)製のブリッジダイを活用し、CCXとIOD間のデータ転送の効率を向上させる可能性がある。
この技術により、メモリ帯域幅の向上や、チップ内のデータ転送の最適化が期待されている。特に、CCX間の通信がスムーズになることで、マルチスレッド処理のボトルネックが緩和されると考えられる。従来のZen世代では、チップレット間の通信がボトルネックとなるケースがあり、一部のマルチスレッド処理においてパフォーマンスの低下が発生していた。
この課題を解決するために、新しいブリッジダイは低遅延かつ高効率な通信経路を提供するとされている。また、IODを介したメモリアクセスも最適化される可能性がある。Zen 6のDDR5メモリコントローラーは引き続きIOD上に配置されると考えられているが、ブリッジダイの導入により、CCXからメモリへのアクセスがよりスムーズになると予想される。
これにより、ゲームや動画編集など、メモリ依存の高いタスクにおいて顕著なパフォーマンス向上が見込まれる。AMDは、Zen 2からチップレット設計を採用し、競合のインテルとは異なるアプローチでマルチコアプロセッサの性能向上を図ってきた。
今回のブリッジダイ技術は、その進化をさらに加速させる可能性があり、特にクリエイターやエンタープライズ向け市場において、AMDの競争力を大きく向上させる要因となるだろう。
Zen 6の12コアCCX設計がRyzenシリーズの可能性を拡大する
Zen 6では、CCXあたりのコア数が従来の8コアから12コアへと増加する可能性が指摘されている。これは、単一CCXで12コアの構成が可能になることを意味し、AM5プラットフォームにおいてより効率的なCPU設計が実現されることを示唆している。この変更により、Ryzenシリーズの製品ラインナップが柔軟に拡張される可能性がある。
従来のRyzen CPUでは、12コア以上の製品は2つのCCXを組み合わせた構成が必要だった。しかし、Zen 6では単一CCXで12コアを実現できるため、特にミドルレンジのCPUにおいて、より高性能な製品が投入される可能性が高まる。これにより、例えばコストパフォーマンスに優れた単一CCXの12コアモデルが登場すれば、ワークステーション用途やゲーミングPC向けとして強力な選択肢となる。
また、CCXあたりのコア数が増加することで、キャッシュの効率的な活用が可能になると考えられる。AMDは、Zen 3以降、L3キャッシュの統合を進めることで、キャッシュの有効活用によるパフォーマンス向上を図ってきた。Zen 6においても、12コアCCXに対応するL3キャッシュの増量が予想され、キャッシュヒット率の向上が期待される。
特に、AMDが近年力を入れている3D V-Cache技術との組み合わせにより、ゲームパフォーマンスのさらなる強化が見込まれる。こうした技術革新により、Zen 6は単なるコア数増加にとどまらず、より効率的なアーキテクチャを実現する可能性がある。
これは、シングルスレッド性能の向上とマルチスレッド処理の最適化を両立させる上で極めて重要な要素となる。AMDがこの技術をどのように製品ラインに落とし込むかが、次世代Ryzenの市場競争力を左右するポイントとなるだろう。
TSMC 2nmプロセスがAMDの競争力をさらに強化する
Zen 6の製造プロセスには、TSMCの2nmプロセスが採用される可能性が高い。現在のRyzen 9000シリーズは4nmプロセスを使用しており、2世代分の微細化が実現されることで、トランジスタ密度の向上や電力効率の改善が期待される。
2nmプロセスへの移行は、単なる消費電力の削減にとどまらない。トランジスタ密度の向上により、1平方ミリメートルあたりに搭載できるトランジスタの数が増加し、処理能力の向上が可能となる。また、リーク電流の低減により、発熱を抑えつつ高クロック動作が可能になるため、Zen 6は従来のRyzen CPUよりも高い動作周波数を維持できる可能性がある。
さらに、TSMCの2nmノードは、EUV(極端紫外線)リソグラフィ技術を活用した最先端の製造技術を採用するとされている。これにより、製造歩留まりの向上とともに、安定した供給が可能となることが期待される。特に、AMDは近年の半導体供給不足に直面しており、より高い生産効率を確保することが重要な課題となっている。
2nmプロセスの導入が順調に進めば、供給面でも大きなメリットをもたらすだろう。また、新しい製造プロセスは、ノートPCやモバイルデバイス向けのRyzenプロセッサにも恩恵をもたらす。消費電力の低減により、バッテリー駆動時間の延長や、より薄型軽量なノートPCの実現が可能となる。
AMDはデスクトップ向けCPUだけでなく、モバイル市場でも勢力を拡大しており、2nmプロセスの採用はその戦略の一環として重要な要素となる。TSMCの2nmプロセスは、インテルや他の競合メーカーに対しても大きな優位性をもたらす可能性がある。
AMDがこの最先端プロセスを活用することで、次世代Ryzenの性能向上と省電力化を両立させ、さらなる市場シェアの拡大を狙うことは間違いないだろう。
Source:PC Gamer、OC3D、Moore’s Law is Dead