マイクロソフト(MSFT)の株価は、2025年度第2四半期(FY2025 Q2)の決算発表後、8.7%下落した。設備投資の増加によるフリーキャッシュフロー(FCF)の減少が市場の懸念材料となっている。特に、クラウドおよびAI分野への積極的な投資が続くことで、短期的な利益成長への影響が予測される。
しかし、この下落は長期的な視点を持つ投資家にとって、新たなエントリーポイントとなり得る。現在の予想株価収益率(P/Eレシオ)は過去5年平均を下回り、相対的に割安な水準にある。さらに、FCFマージンが回復すれば、株価の上昇余地も広がる可能性がある。
こうした状況下で、価値投資家にとって有力な手法の一つが「アウト・オブ・ザ・マネー(OTM)」のプットオプションを売る戦略だ。これにより、割安な水準での株取得を狙いつつ、オプションプレミアムによる利回りを確保できる。本記事では、具体的な数値とともに、この戦略の実践方法を詳しく解説する。
マイクロソフトの設備投資拡大がもたらす影響
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マイクロソフトはクラウドとAI分野への積極的な投資を進めている。最新の決算発表では、設備投資(Capex)が前年同期比62%増の158億ドルに達し、これがフリーキャッシュフロー(FCF)の29%減少につながった。この結果、市場は利益成長の鈍化を懸念し、株価は1月28日から2月14日までに8.7%下落した。
しかし、この設備投資の増加は短期的な負担である一方、長期的な競争力強化につながる可能性がある。特に、Azureを中心とするクラウド事業とAIインフラの拡充は、企業向けのサービス拡大を支える重要な要素となる。AIの普及が進む中で、競争優位を維持するためには先行投資が欠かせない。
また、過去の事例を見ても、大規模な設備投資を行った企業は一定期間後に収益性の向上を果たしている。例えば、Amazonはクラウド事業のAWSを成長させるために積極的な投資を行い、数年後には大きな収益源となった。マイクロソフトの戦略もこれに類似しており、現在の投資が数年後の収益成長へとつながるかが今後の焦点となる。
マイクロソフト株のバリュエーションと今後の評価
現在のマイクロソフトの予想株価収益率(P/Eレシオ)は2025年6月期で31倍未満、翌年度で27倍と、過去5年の平均を下回っている。これにより、短期的には割安感が生まれているが、長期的な成長性をどう評価するかが投資判断のポイントとなる。
フリーキャッシュフロー(FCF)マージンの推移を見ると、2025年6月期の予想マージンは10%と想定され、これが継続する場合の企業価値は約3兆ドルと算出できる。一方で、設備投資の成果が出てFCFマージンが12%まで回復した場合、企業価値は約3.56兆ドルに達する可能性がある。この場合、株価は480.31ドルまで上昇し、現在の水準から約17.6%の上昇余地がある。
市場では、57人のアナリストの平均目標株価が508.05ドル、37人のアナリストの平均目標株価が462.45ドルとなっており、現状の価格水準が過小評価されている可能性が示唆される。ただし、これらの予測が実現するには、設備投資の効果が顕在化し、FCFの成長が明確になることが条件となる。
価値投資家にとっての最適な戦略
短期的な値動きを狙う投資家とは異なり、長期的視点での資産形成を目指す価値投資家にとって、現在のマイクロソフト株の下落は好機となり得る。特に、アウト・オブ・ザ・マネー(OTM)のプットオプションを売る手法は、割安な価格での株取得を狙いながら、プレミアム収益を確保する戦略として有効である。
例えば、2025年3月21日満期の400ドルのプットオプションは6.00ドルで取引されており、これを売ることで1.50%の利回りを確保できる。さらに、390ドルの行使価格のプットオプションでは0.936%の利回りが得られ、1カ月間でほぼ1%のリターンが期待できる。
この戦略を四半期ごとに繰り返せば、約4.5%のリターンを積み重ねることが可能となる。マイクロソフトの長期的な成長を信じる投資家にとって、こうしたオプション取引を活用することで、リスクを管理しつつ収益を上げる手段となる。
Source: Barchart.com