人工知能(AI)市場は急速に拡大しており、2025年から2030年にかけて年平均成長率27.7%で成長すると予測されている。こうした市場の躍進を背景に、米投資銀行Wedbushは**Palantir Technologies(ティッカー: PLTR)**をAI革命の主要銘柄として推奨した。Wedbushは今後18か月間で、同社のAIプラットフォームが商業市場に急速に浸透すると見込んでいる。

Palantirの2024年第4四半期の業績は、売上高が前年比36%増の8億2,800万ドル、米国市場の売上が52%増と好調だった。特に米国商業部門は前年同期比64%増を記録し、政府部門の成長も顕著である。さらに、AI関連の設備投資が今後3年間で2兆ドルを超えるとの見通しも示されており、同社の成長ポテンシャルは高い。

一方で、現在のPLTR株は過去12か月で365%以上の上昇を記録し、予想売上高の43.3倍、予想利益の118倍という割高な評価を受けている。市場アナリストの評価も分かれており、短期的なリスクを考慮する必要がある。長期的な成長余地があるものの、投資判断には慎重な分析が求められる。

Palantirの成長戦略 AI市場での競争優位性とは

AI市場が急拡大する中、Palantir Technologiesは独自の技術と戦略で競争優位性を確立している。特に、同社の「Artificial Intelligence Platform(AIP)」の成功が業績成長を支えており、商業市場と政府部門の双方で強い需要を生んでいる。この成長を支える具体的な要素を深掘りする。

Palantirの強みの一つは、オントロジー(概念体系)を活用したデータ統合技術にある。従来のAIプラットフォームは膨大なデータを活用するものの、異なるデータセット間の整合性確保が課題となる。一方、Palantirのシステムは企業が保有する複数のデータソースを統合し、リアルタイムで意思決定を支援する機能を持つ。これにより、企業は従来のBI(ビジネスインテリジェンス)ツールでは実現できなかった高度な分析を可能にしている。

特に、米国政府との強固な関係が同社の競争力を高めている。米国国防総省やCIAをはじめとする政府機関がPalantirのシステムを活用しており、この実績が企業向けビジネスにも波及している。政府向け契約は安定した収益源となるだけでなく、商業部門における信頼性向上にも貢献している。

加えて、大規模言語モデル(LLM)との統合も進められており、企業のデータ活用を一段と高度化している。AIを活用した自動分析や意思決定の迅速化が可能となり、今後の成長をさらに加速させる要素となるだろう。

PLTR株の評価は適正か 高PERが示すリスクと市場の見方

Palantirの業績が好調に推移する一方で、株式市場では同社の評価が過熱しているとの指摘も多い。実際、PLTR株の現在の予想売上高倍率(PSR)は43.3倍、予想利益倍率(PER)は118倍と、一般的なテクノロジー株と比較しても極めて高い水準にある。この数値が意味するリスクについて検討する。

株価がこのような水準に達している理由の一つは、AI市場全体への期待感の高まりにある。市場全体が成長を続けており、PalantirのようなAI関連企業は投資家の関心を集めやすい。しかし、短期的な楽観論に基づく急騰は、将来的な調整局面を招く可能性がある。

加えて、ウォール街のアナリスト評価も分かれている。現在、18人のアナリストのうち「強い買い」を推奨するのはわずか2人にとどまり、「ホールド」が10人、「強い売り」や「売り」を推奨する声も複数ある。この背景には、現在の株価が既に多くの成長を織り込んでいると見る向きが強いことがある。

さらに、市場予測とのギャップも存在する。ウォール街の平均目標株価は81.82ドルで、これは現在の株価よりも約30%低い水準だ。このことから、短期的には株価調整のリスクがあると考えられる。

一方で、長期的な視点に立てば、売上高やフリーキャッシュフローの成長予測は依然としてポジティブな要素だ。売上は2027年までに60億ドルに拡大し、フリーキャッシュフローも12億5,000万ドルから26億ドルへと成長する見込みが示されている。この成長が実現すれば、現在の割高な評価も一定の妥当性を持つ可能性がある。

AI革命の行方 Palantirの成長持続には何が必要か

Palantirが今後も成長を続けるためには、単なる市場拡大だけでなく、持続的な競争力の維持が不可欠である。特に、技術革新と顧客基盤の拡大が鍵を握る。

まず、商業市場でのさらなる浸透が求められる。現在のところ、米国市場での成長は著しいものの、ヨーロッパ市場では前年比4%増にとどまっており、依然として成長余地がある。欧州市場の成長鈍化の要因としては、規制面の課題や競争の激化が挙げられる。今後、ヨーロッパをはじめとする国際市場でのプレゼンス強化が重要となる。

次に、AI技術の進化と競争環境の変化への対応が必要である。現在、AIプラットフォーム市場ではGoogle、Microsoft、Amazonなどのテックジャイアントも積極的に投資を行っており、競争が激化している。Palantirは、企業のデータ統合や分析に強みを持つが、他社が同様の技術を提供することで差別化が難しくなる可能性がある。技術革新を継続し、独自性を維持することが成長のカギとなる。

また、企業のAI投資の継続性もポイントだ。Wedbushのレポートでは、AI関連の設備投資が今後3年間で2兆ドルを超えると予測されているが、このトレンドが維持されるかは不透明な部分もある。経済環境の変化や企業のIT予算の変動が、Palantirの成長に影響を与える可能性がある。

これらの要因を考慮すると、Palantirの成長は依然として期待されるものの、市場環境や競争動向を慎重に見極めることが求められる。短期的な株価の変動にとらわれず、長期的な視点で成長戦略を評価することが重要である。

Source: Barchart