著名投資家ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが、ドミノ・ピザ(NASDAQ: DPZ)への投資を大幅に拡大している。最新の13F報告書によれば、同社は2024年第4四半期に110万株を追加購入し、保有株を86.5%増加させた。この追加投資額は約5億2500万ドル(約787億円)に相当する。

ドミノ・ピザの米国株は、強力なブランド力と成長実績を持つものの、予想PERが27倍と割高であり、配当利回りも1.4%と低水準である。一方、ロンドン証券取引所(LSE)に上場するドミノ・ピザ・グループ(DOM)は、PER14倍、配当利回り3.8%と比較的割安な評価を受けている。

米国版と英国版のドミノ・ピザは異なる企業であり、それぞれの市場特性を考慮する必要がある。英国版は成長余地が限られるが、安定した収益基盤を持ち、投資妙味があると考えられる。

バフェットのドミノ・ピザ投資 過去の戦略との比較と狙い

ウォーレン・バフェットの投資戦略は、一貫して「優れた企業を適正な価格で買う」という原則に基づいている。ドミノ・ピザへの投資は、この戦略とどのように合致するのか、過去の事例と比較しながら検証する。

これまでバフェットは、コカ・コーラやアメリカン・エキスプレスといったブランド力の高い企業を長期保有することで、莫大な利益を生み出してきた。これらの企業は消費者に強く支持され、安定したキャッシュフローを生み出せる点が共通している。ドミノ・ピザも同様に、ブランドの強さとデリバリー事業の成長により、長期的な収益の向上が見込まれている。

一方で、今回の投資にはこれまでとは異なる側面もある。ドミノ・ピザの株価は現在のPER27倍と、バフェットが好む「割安株」とは言えない水準にある。しかし、デジタル化を推進し、オンライン注文の拡大を図る同社の戦略は、成長余地を秘めている。過去の投資では、バフェットは必ずしも低PERの銘柄にこだわらず、将来の収益性を重視してきた。今回のドミノ・ピザへの投資も、単なるバリュエーションではなく、事業の将来性を評価した結果であると考えられる。

バフェットの投資スタイルは「シンプルで理解しやすいビジネス」に焦点を当てる点が特徴的である。ドミノ・ピザの収益構造は、フランチャイズモデルにより安定したロイヤリティ収入を生む仕組みであり、これはバフェットの好むビジネスモデルと合致する。これらの要素を総合的に判断すると、バフェットのドミノ・ピザ投資は、過去の戦略との整合性がありつつも、新たな成長分野へのアプローチも見据えた動きと考えられる。


米国版と英国版のドミノ・ピザ 投資対象としての違い

ドミノ・ピザは、米国版(NASDAQ: DPZ)と英国版(LSE: DOM)の2種類の銘柄が存在し、それぞれの企業が異なる市場環境で運営されている。これらの違いを理解することが、投資判断を下す上で重要となる。

米国版のドミノ・ピザは、グローバル展開を進める巨大ブランドであり、フランチャイズビジネスを通じて世界各国で成長を続けている。デジタル注文システムの強化や、新興市場での拡大を進めており、長期的な成長余地は大きい。ただし、株価はすでに高評価されており、現在のPERは27倍と市場平均を上回る水準にある。配当利回りは1.4%と低く、キャピタルゲインを狙う投資家向けの銘柄といえる。

一方、英国版のドミノ・ピザ・グループ(DOM)は、主に英国とアイルランド市場を中心に事業を展開している。市場規模は米国と比べると小さいが、安定した利益を確保し、PER14倍と割安な水準で取引されている。配当利回りも3.8%と相対的に高く、インカムゲインを重視する投資家にとって魅力的な選択肢となる。

また、経営の方向性にも違いが見られる。米国版はテクノロジーへの投資を強化し、新規顧客の獲得に力を入れている。一方、英国版は市場シェアの拡大よりも、既存顧客のロイヤルティ向上に重点を置いており、経営戦略が異なる。市場の特性を考慮すると、米国版は成長性を重視した投資、英国版は安定性を重視した投資として、それぞれ異なる投資目的に適していると考えられる。


今後の市場動向とドミノ・ピザの成長可能性

ドミノ・ピザの成長を左右する要因として、外食産業全体の動向や消費者の嗜好の変化が挙げられる。特に、世界的なインフレの影響を受ける飲食業界において、同社がどのような戦略を取るかが注目される。

まず、食品原材料の価格高騰は利益率に影響を与える要因となる。小麦粉やチーズなどの価格が上昇すれば、コストの増加に直結し、フランチャイズ加盟店の収益圧迫につながる。これに対し、ドミノ・ピザは効率的なサプライチェーンを構築し、コスト管理の強化を進めている。さらに、デジタル注文の拡大により、人件費を削減しながら売上を伸ばす施策を展開しており、収益構造の安定化を図っている。

また、消費者の健康志向の高まりも重要な要素である。従来の高カロリーなファストフードに対する懸念が強まる中、ドミノ・ピザは低カロリーやビーガン対応メニューの拡充を進めている。米国市場では健康志向の高いメニューの販売比率が増加しており、この流れが今後の売上にどのような影響を及ぼすかが鍵となる。

さらに、競争環境の変化も無視できない。ウーバーイーツやドアダッシュなどのデリバリーサービスが普及し、競争が激化している。この状況下でドミノ・ピザは独自の配達ネットワークを強化し、コストを抑えつつ顧客満足度を向上させる方針を取っている。デジタル技術の活用を進めることで、注文から配達までの効率化を図り、他のデリバリーサービスとの差別化を図っている。

総合的に見て、ドミノ・ピザは成長の可能性を秘めているが、外部環境の変化に柔軟に対応できるかが今後の鍵となる。バフェットの投資は、この企業の長期的な成長力に対する信頼の表れとも考えられるが、市場環境の変化を注視しながら慎重に判断する必要がある。

Source: The Motley Fool UK