サムスンは、自社のGalaxyスマートフォン向けに提供するデジタルキー機能の対象車種を拡大した。これにより、新たにボルボ(Volvo)とポールスター(Polestar)の一部車種が対応し、スマートフォンを用いたロック解除やエンジン始動が可能となる。
デジタルキー機能は2022年に導入され、Samsung Walletアプリを通じて利用できる。物理キー不要の利便性を提供するこの機能は、Bluetooth、NFC、UWB(超広帯域通信)といったワイヤレス技術を活用し、車両との通信を行う。既にBMW、Audi、Hyundai、Genesisなどのブランドで対応が進められており、今回の対応拡大でさらに実用性が向上する。
対応モデルはVolvo EX90とPolestar 3から順次開始され、2024年2月以降、ヨーロッパ、北米、オーストラリア、アジアなどの主要市場で展開される予定だ。スマートフォンを活用した自動車のデジタル化は加速しており、今後さらに対応車種の拡大が見込まれる。
サムスンのデジタルキーがもたらす車両アクセスの新たな形
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サムスンが提供するデジタルキーは、スマートフォンを利用した車両アクセスの利便性を飛躍的に向上させる技術である。この機能は、Samsung Walletを介して物理キーを不要とし、スマートフォンを用いたロック解除やエンジン始動を可能にする。今回、新たにボルボ(Volvo)とポールスター(Polestar)が対応車種に加わったことで、さらなる利便性の向上が期待される。
この技術の根幹を支えるのは、Bluetooth、NFC、UWB(超広帯域通信)といった高度なワイヤレス通信技術である。特にUWBは、短距離ながら高精度な位置情報を把握できるため、デジタルキーの安全性と利便性を両立させる鍵となる。これにより、スマートフォンをポケットやバッグに入れたままでも、ドアを開閉したりエンジンを始動したりすることが可能になる。
また、デジタルキーはSamsung Wallet内で管理され、他のGalaxyデバイスにキーを共有することもできる。この機能により、家族や信頼できる第三者とアクセス権を共有することが可能となり、物理キーを手渡す手間が不要になる。さらに、紛失や盗難のリスクにも対応しており、万が一スマートフォンを紛失した場合でもSamsung Findを通じてキーを無効化し、悪用を防ぐことができる。
一方で、デジタルキーの普及に伴い、サイバーセキュリティの重要性も増している。サムスンは、デジタルキーをEAL6+5認証基準に準拠させることで、高いセキュリティレベルを確保しているが、ハッキングリスクがゼロになるわけではない。今後の技術進化に伴い、より高度な暗号化技術や多層的な防御策が求められることは間違いない。
Appleとの競争が加速するデジタルキー市場の展望
サムスンがデジタルキー機能の対象車種を拡大する背景には、Appleとの競争が激化している現状がある。Appleは、2020年にiOS 14の一部としてApple Walletを介したデジタルキー機能を導入し、BMWなどの一部車両での対応を進めてきた。サムスンもこれに対抗する形で、BMW、MINI、Audi、Genesis、Hyundai、KIAなどとの提携を拡大し、今回新たにボルボとポールスターを追加した。
Appleとサムスンのアプローチにはいくつかの違いがある。Appleは主にNFCを活用し、スマートフォンをドアハンドルに近づけることでロック解除を行う。一方、サムスンはNFCに加え、UWB技術を活用することで、より広範囲での利用を可能にしている。UWBを採用したGalaxyデバイスでは、スマートフォンを特定の距離内に持っているだけでロック解除ができるため、利便性が高い。
しかし、デジタルキー市場の拡大にはまだ課題がある。現状では、対応する車種が限定されており、普及には時間がかかると考えられる。また、スマートフォンメーカーと自動車メーカーの連携が不可欠であり、どのブランドがどのプラットフォームと連携するのかが競争の焦点となる。
Appleとサムスンがそれぞれ異なる技術を採用しているため、一部のユーザーは特定のメーカーのスマートフォンを選ばざるを得ない状況にもなりうる。今後、サムスンとAppleの競争がさらに激化する中で、どちらがより多くの自動車メーカーと提携を結び、より優れたユーザー体験を提供できるかが市場拡大の鍵を握る。
自動車のデジタル化が進むなか、消費者の利便性と安全性を両立する技術の進化が求められる。
スマートフォンが車の鍵になる時代の課題と可能性
スマートフォンを用いたデジタルキー技術は、利便性の向上だけでなく、今後のモビリティサービスの在り方にも大きな影響を与えると考えられる。特に、カーシェアリングやレンタカー業界においては、物理キーの受け渡しが不要となることで、完全非対面での車両貸出が可能となる。
また、自動運転技術と組み合わせることで、遠隔から車両のロックを解除し、特定の人物にのみアクセスを許可するシステムの構築も視野に入る。これにより、宅配サービスの無人配送車や、企業のフリート管理においても活用の幅が広がる可能性がある。
しかしながら、デジタルキーの普及にはいくつかの懸念もある。まず、スマートフォンのバッテリーが切れた場合にどう対応するかという問題だ。現状では、Appleやサムスンともに低電力モードで一定時間デジタルキーの機能を維持する設計となっているが、それでも完全にバッテリーが切れた場合には使用できなくなるリスクがある。
加えて、セキュリティ面での課題も指摘されている。デジタルキーのシステムがクラウドを介して管理されている場合、サイバー攻撃の対象となる可能性がある。過去には、スマートカーのハッキング事例も報告されており、メーカー各社は対策を強化しているものの、常に新たな脅威が発生するリスクは否定できない。
それでも、スマートフォンを鍵として活用する流れは今後ますます加速すると考えられる。メーカー各社が対応車種を拡大し、セキュリティ対策を強化していくことで、デジタルキーの普及が進むだろう。今後の市場動向と技術革新に注目が集まる。
Source:Neowin