近年の市場を牽引してきた「マグニフィセント・セブン」銘柄が転換点を迎えている。AIブームに支えられた成長は一巡し、投資家の期待が慎重な姿勢へと変わりつつある。特に、テスラやアップルなどの一部企業は株価が下落しており、成長持続への疑念が浮上している。

市場全体のパフォーマンスと比較すると、2024年の年初来ではS&P 500指数を上回るものの、かつての急騰と比べれば勢いは鈍化している。加えて、ヘッジファンドや資産運用会社の動向を見ても、これまで集中していた資金が他の分野へ分散し始めていることが明らかだ。

一方で、メタのように株価が上昇を続ける企業もあり、全体の動向を一括りに判断することは難しい。しかし、非公開のAI企業群が急速に評価額を高めていることを考えると、テクノロジー分野の主役交代が進行しつつある可能性も否定できない。

マグニフィセント・セブンの成長鈍化 AIブームの終焉か

マグニフィセント・セブンの企業群は、これまで市場の成長をけん引してきた。しかし、AIブームによる急騰が落ち着きを見せる中、これらの企業の成長に疑問符がつき始めている。特に、エヌビディアやメタといったAI関連の恩恵を受けた企業と、それ以外の企業との間で明暗が分かれつつある。

2024年に入り、エヌビディアは引き続き堅調な株価推移を示している一方で、アップルやテスラは成長鈍化の兆しを見せている。マイクロソフトやアルファベットも、AI市場でのプレゼンスを維持しつつも、期待先行の株価評価が投資家の慎重な目にさらされ始めた。テスラに至っては、電気自動車市場の成長減速が懸念され、マグニフィセント・セブンの中で最も大きな下落を記録している。

また、企業の株価収益率(P/E比率)が市場平均を大幅に上回っている点も、過熱感を警戒する要因となっている。特にテスラのP/E比率は自動車セクターの平均を大きく上回り、成長鈍化の兆しが見えた途端、株価が大きく下落するリスクを内包している。

一方で、メタはWhatsAppの成長を背景に20日連続の株価上昇を記録するなど、依然として高い成長力を維持している。これは、企業ごとのビジネスモデルの違いが、今後の株価動向に大きな影響を与える可能性を示唆している。

この状況を踏まえると、AIブームが完全に終焉したとは言い難い。しかし、成長が期待される企業とそうでない企業の差が明確になりつつあることは、市場の転換期が訪れていることを示唆している。

投資家の資金移動が示す市場の新たな潮流

市場では、マグニフィセント・セブンからの資金流出が顕著になっている。バンク・オブ・アメリカのデータによれば、2月12日までの1週間で米国株市場から7億ドル(約1050億円)の資金が流出した。これは、投資家がこれまでのハイテク株中心の戦略を見直し、新たな成長分野へとシフトし始めていることを示している。

特に、流出した資金の行き先に注目すると、ヘルスケアや欧州株、金、投資適格債券といった比較的安定した資産に向かっていることが分かる。この動きは、投資家が景気後退リスクを警戒し、より安全性の高い資産への移行を進めている可能性を示している。

また、テクノロジー分野でも、大手企業から資金が流出する一方で、小規模なAI・テクノロジー企業に資金が流れ込んでいる点も注目に値する。これは、成熟した大手企業の成長余地に対する懸念と、イノベーションの中心が新興企業に移行しつつあることを示している。

このような資金移動の背景には、マグニフィセント・セブンの成長鈍化に加え、政策金利やマクロ経済の不透明感も影響している。特に、米連邦準備制度(FRB)の金融政策が今後の市場動向に大きな影響を与える可能性があり、投資家は慎重に資産の配分を見直している。

この動きを見る限り、市場は大きな転換期を迎えている可能性がある。投資家がハイテク株に対する姿勢を見直し、より広範なセクターへ資金を分散させる流れが強まれば、今後の市場構造も変化していくだろう。

非公開AI企業への資金集中が示すテクノロジーの新時代

皮肉にも、マグニフィセント・セブンから流出した資金の一部は、未上場のAI企業へと流れている。近年、「プライベート・マグニフィセント・セブン」とも呼ばれるAIスタートアップ企業群が台頭しており、投資家の関心を集めている。

このグループには、OpenAIやAnthropic、Perplexity AI、xAI、Coreweave、Databricks、ScaleAIといった企業が含まれる。これらの企業は、すでに大手テクノロジー企業と戦略的提携を結び、膨大な資金を調達している。たとえば、OpenAIはマイクロソフトからの出資を受け、Anthropicはアマゾンとグーグルからの支援を受けている。

さらに、2024年7月から翌年1月末までの間に、これらの企業の評価額は40%急増したとの報道もあり、成長速度は上場企業を大きく上回っている。この動向は、次世代のテクノロジーリーダーが大手企業からスタートアップへと移行しつつあることを示唆している。

これまで、テクノロジー分野の成長はマグニフィセント・セブンを中心に進んできた。しかし、非公開企業がこれほどの成長を遂げている現状を考慮すると、次の市場の主役が誰になるのかは不透明な状況だ。大手企業が今後も市場をリードし続けるのか、それとも新興企業が台頭するのか、投資家は慎重に見極める必要がある。

このように、テクノロジー業界は大きな変革期を迎えている。マグニフィセント・セブンの輝きが鈍る一方で、新たなプレイヤーが台頭し、市場の勢力図が書き換えられつつある。この変化をどう捉えるかが、今後の投資戦略において重要なポイントとなるだろう。

Source:TipRanks