世界最大級のヘッジファンドを運営するレイ・ダリオのブリッジウォーター・アソシエイツが、米国のハイテク株「マグニフィセント7」の6銘柄について大幅に保有比率を削減した。
一方、同ファンドは3年ぶりにテスラ株を新規取得し、評価額6,202万5,000ドルに達している。
この売却と買収の背景には、ダリオが企業価値と株価のバランスに対して慎重な見方を示していることがある。彼は「価格が過度に上昇した企業は、リスクが高まる」と警告し、イノベーションを推進する企業への投資が重要であるとの考えを示した。
ブリッジウォーターの決断と背景:「マグニフィセント7」の6銘柄を大幅削減した理由

ブリッジウォーター・アソシエイツは、アップル、アルファベット、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、マイクロソフト、アマゾンの6銘柄について、保有比率を二桁減少させた。特にアップルの保有比率は約40%削減され、12月末時点で1億5,455万9,000ドルとなり、ファンド内で最も少ない保有額にとどまった。一方、アルファベットのクラスA株は評価額6億8,551万3,000ドルとなり、最も多く保有する銘柄となった。
この動きの背景には、レイ・ダリオが企業の成長性と株価の乖離を警戒している点が挙げられる。彼は「素晴らしい企業であっても、株価が過度に上昇すれば投資としてのリスクが高まる」と指摘している。特に、ハイテク企業の急成長と高い市場評価の間にはギャップが生じることがあり、投資判断を誤れば損失につながる可能性がある。
さらに、中国のAI企業DeepSeekの台頭も影響を与えたと考えられる。新興企業の台頭により、既存のハイテク大手が将来的に競争力を維持できるかどうかが不透明になってきている。このような市場環境の変化を踏まえ、ブリッジウォーターは一部のハイテク銘柄を手放し、より慎重な投資戦略を採る方針に転じたとみられる。
3年ぶりのテスラ株取得:ブリッジウォーターの新たな投資戦略
ブリッジウォーターは、2021年第4四半期以来3年ぶりにテスラ株を取得し、新規に15万3,589株をポートフォリオに加えた。これにより、テスラ株の評価額は6,202万5,000ドルに達し、同ファンドの注目銘柄の一つとなった。
テスラの株価は過去数年間で大きく変動しており、EV市場の成長や競争環境の変化がその要因となっている。レイ・ダリオがこのタイミングでテスラを選んだ理由の一つとして、同社の技術革新力と市場支配力があると考えられる。特に、自動運転技術やエネルギー事業への進出は、単なる自動車メーカーの枠を超えた長期的な成長要因と見なされる。
一方で、ダリオは単なる「人気銘柄」への投資を避けるスタンスを示している。彼がテスラを選んだのは、現在の市場評価と今後の成長性のバランスを慎重に見極めた結果と考えられる。ハイテク銘柄の売却とテスラ株の取得は、単なるリスク回避ではなく、イノベーションを重視した戦略的なポートフォリオの組み換えの一環であると言える。
ETFへの比重増加:ブリッジウォーターのリスク分散戦略
ブリッジウォーターは個別銘柄の削減を進める一方で、ETF(上場投資信託)への投資を強化している。特に、S&P500指数を追跡するSPDR S&P 500 ETF Trust(SPY)は4億8,240万ドル、iShares Core S&P 500 ETF(IVV)は12億ドル、MSCI新興市場指数を追跡するiShares Core MSCI Emerging Markets ETF(IEMG)は9億2,216万3,000ドルと、それぞれ高い評価額を維持している。
この戦略は、個別銘柄の価格変動リスクを抑えるための分散投資と考えられる。特に、ハイテク株が過熱している局面では、ETFを活用することで市場全体の成長に応じたリターンを確保できる。また、新興市場ETFへの投資比率が高いことは、米国市場以外の成長機会を模索する意図があると推察される。
レイ・ダリオは、投資においてリスクとリターンのバランスを重視する姿勢を貫いている。個別銘柄のボラティリティが高まる中、ETFを活用したポートフォリオの安定化を進めることは、長期的な投資戦略の一環と考えられる。
Source:Benzinga