ARKインベストメント・マネジメントのキャシー・ウッド氏は、最新のポートフォリオ戦略の一環としてNvidia株を4,892株追加購入した。この決定は、米国の半導体輸出規制や市場のボラティリティが高まる中で行われたものであり、同社の成長ポテンシャルへの強い信念が反映されている。
一方、中国企業がシンガポール経由でNvidiaの半導体を取得した可能性が指摘されており、市場の不確実性が増している。それにもかかわらず、大手金融機関Morgan Stanleyは、最近の株価下落を「買いの好機」と評価し、目標株価を152ドルに維持している。
市場では、複数のヘッジファンドがNvidia株の保有比率を調整しており、投資家の間で意見が分かれている。年初来の株価は小幅に下落したものの、依然として市場の注目を集める銘柄であり、今後の動向が注視されている。
キャシー・ウッドの投資戦略とNvidia株への強気な姿勢
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ARKインベストメントのキャシー・ウッド氏は、テクノロジー株に対する積極的な投資戦略で知られている。今回のNvidia株の追加購入は、同社の成長を見込んだ戦略的な動きであり、同社の人工知能(AI)市場における優位性を重視していることがうかがえる。ウッド氏はこれまでにも、TeslaやZoomといった成長株に積極的に投資し、独自のポートフォリオ戦略を展開してきた。
一方、Nvidiaの株価は市場の変動要因に影響を受けやすく、特に米国の半導体輸出規制の強化が懸念材料となっている。中国市場向けの半導体供給が制限されることで、売上の一部に影響が及ぶ可能性があるが、それでもARKインベストメントは同社の長期的な成長を見込み、ポジションを拡大したとみられる。
この動きは、投資家の間で議論を呼んでおり、一部の市場関係者は、ウッド氏の判断を「リスクを伴うが先見性のある決断」と評価する。一方で、市場の不確実性が高まる中での追加購入には慎重な意見もあり、今後の株価推移が注目される。特に、AI需要の拡大とNvidiaの競争力がどこまで持続するかが、同社の株価を左右する重要なポイントとなる。
Nvidiaの輸出規制リスクと市場の不透明感
Nvidiaをめぐるもう一つの重要な動向として、中国市場に対する輸出規制の影響が挙げられる。最近、中国のAI企業「DeepSeek」が米国の規制を回避し、シンガポール経由でNvidiaの半導体を取得した可能性が指摘されている。これにより、米国政府がさらなる規制強化に動く可能性が高まり、市場の懸念材料となっている。
これまで、米国は先端半導体技術の輸出を厳しく管理しており、特にNvidiaの高性能GPUは中国のAI開発にとって重要な技術資産となっている。輸出規制が強化されることで、中国市場における販売機会が縮小し、Nvidiaの収益構造に影響を与える可能性がある。しかし、同社は規制に対応する新製品を開発するなど、長期的な成長戦略を模索している。
市場関係者の間では、こうした規制リスクがNvidiaの株価に与える影響について意見が分かれている。Morgan Stanleyは引き続き「買い推奨」の評価を維持し、短期的な価格変動を投資機会と捉えている。しかし、規制が厳格化することで、中国市場の売上比率が縮小する可能性もあり、今後の政府動向が重要なポイントとなるだろう。
ヘッジファンドの売買動向とNvidiaの市場評価
Nvidiaをめぐる投資家の動向を見ると、ARKインベストメントだけでなく、多くのヘッジファンドがポジションを変更している。Appaloosa Management LPはNvidia株を55,001株売却し、ポートフォリオの調整を進めた。一方で、Suncoast Equity Managementは同株を5,686株追加し、企業価値の上昇を見込んでいる。
こうした相反する動きは、市場の不透明感を反映していると考えられる。Nvidiaの年初来の株価変動率は+0.39%とわずかな上昇にとどまり、投資家の間では慎重な姿勢がうかがえる。特に、米国の金利動向やAI市場の成長速度が、今後の株価に大きな影響を及ぼすとみられる。
また、オプション取引による短期的な利益を狙う投資家も増えており、ボラティリティの高い市場環境が続いている。Morgan Stanleyは目標株価を152ドルに据え置いているが、市場の先行きに対する見方は分かれており、今後の決算発表や政策動向が株価の方向性を決定する要因となるだろう。
Source:TipRanks