米国の大手投資銀行モルガン・スタンレーは、2月26日に予定されているNVIDIAの決算発表を前に、同社の株を購入する好機と分析した。同銀行は、短期的な事業環境の改善と次世代チップの供給見通しが明確になりつつあることを指摘し、顧客の支出意欲も依然として強いと評価している。

トップアナリストであるジョセフ・ムーア氏は、NVIDIA株に対し「買い」の評価を維持し、目標株価を152ドルに設定。これは現在の水準から10%の上昇余地を示す。2025年初めに売り圧力が強まったものの、株価は直近で回復基調にあり、過去5営業日で6%の上昇を記録している。

市場全体では、ウォール街のアナリスト40人のうち37人が「買い」と評価し、NVIDIA株のコンセンサスは「強い買い」となっている。直近の平均目標株価は179.03ドルであり、現在の株価から29%の上昇余地があると予測されている。

NVIDIAの短期的な事業環境と次世代チップの影響

モルガン・スタンレーがNVIDIA株を推奨する背景には、短期的な事業環境の引き締まりがある。AI関連の需要が引き続き旺盛であり、特にデータセンター向けの半導体市場は堅調に推移している。クラウド企業や大手テクノロジー企業によるGPUへの投資が継続し、需要が安定していることがNVIDIAの収益を支えている。

加えて、次世代Blackwellチップの供給見通しが明確になりつつある点も、市場に安心感を与えている。Blackwellチップは、現行のHopperアーキテクチャを超える性能向上が見込まれ、AIトレーニングや推論の分野で新たな競争優位を確立する可能性がある。企業の生成AI活用が加速する中、高性能なチップの供給安定性は、NVIDIAの市場支配力を維持する上で重要な要素となる。

一方で、地政学的リスクや競争環境の変化も無視できない。特に中国市場における規制強化や、AIアプリ「DeepSeek」の台頭は、長期的なリスク要因として認識されている。しかし、短期的には需要が堅調であることから、モルガン・スタンレーは決算前の買いを推奨しているとみられる。

2025年の株価動向と市場の見方

昨年、NVIDIAの株価は大幅に上昇し、AIブームの象徴的な存在となった。しかし、2025年に入ると状況は一変し、株価は横ばい推移が続いた。年初からの変動率は+0.39%にとどまり、AI関連の成長期待がやや後退したことを示している。特に、中国市場における競争の激化が投資家心理に影響を与え、一時的に売りが優勢となった。

しかし、ここ数週間で株価は回復基調にあり、直近5営業日で6%の上昇を記録した。この背景には、NVIDIAが持つ技術力と市場ポジションに対する根強い信頼がある。ウォール街のアナリスト40人のうち37人が「買い」推奨を継続し、平均目標株価は179.03ドルと、現在の水準から29%の上昇余地を見込んでいる。

市場では、AI向け半導体の需要は引き続き拡大すると予想されるが、同時に競争も激化している。AMDやインテルの新製品投入に加え、カスタムAIチップを開発する企業も増加しており、NVIDIAの市場独占がどこまで持続できるかが焦点となる。今後の株価動向は、決算発表後のガイダンスや、次世代チップの具体的な計画に大きく左右されるだろう。

NVIDIA株は今後も「買い」なのか

モルガン・スタンレーの推奨通り、NVIDIA株は短期的な上昇余地があると考えられているが、長期的なリスクも存在する。特に、AIチップ市場の競争激化や米中対立の影響は、成長の鈍化要因となる可能性がある。政府規制や輸出制限が今後強化されれば、NVIDIAの主要市場の一つである中国でのビジネスに悪影響を及ぼす可能性も否定できない。

一方で、NVIDIAは依然として最先端のGPU技術を持ち、クラウドやデータセンター分野での需要は高い。さらに、次世代Blackwellチップのリリースが順調に進めば、AI市場での競争優位を維持し、さらなる成長が期待される。こうした点を踏まえ、短期的な株価の回復と長期的なリスクのバランスをどう評価するかが、投資判断の重要なポイントとなる。

ウォール街の強気な見方が続く中で、市場全体の動向や業績の発表内容に注目が集まる。特に、NVIDIAの収益成長が持続可能かどうかを見極めるためには、決算発表後の企業戦略やガイダンスを慎重に分析する必要があるだろう。

Source:TipRanks Financial