ウーバー・テクノロジーズ(Uber Technologies)に対するビリオネア投資家ビル・アックマンの強気な見通しが注目を集めている。彼の運営するヘッジファンド、パーシング・スクエア・キャピタル・マネジメントは、ウーバーの株式を3,030万株、約24億ドル相当を保有し、同ファンドの最大ポジションとなっている。
アックマンは、この投資が「4年以内に2倍以上のリターンをもたらす」との見解を示した。彼は、ウーバーが強固なネットワーク効果と優れた経営陣を有し、今後数年間にわたり年率30%以上の利益成長を遂げると予測する。また、自動運転技術の普及を市場が過剰に懸念しているとし、ウーバーはこの変化にも適応できる立場にあると分析。ウォール街の予測も2026年以降の利益成長を見込んでおり、今後の展開が注視される。
パーシング・スクエアのウーバー投資戦略 徹底した選定基準とは
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ビル・アックマン率いるパーシング・スクエア・キャピタル・マネジメントは、常に厳選されたポートフォリオを構築することで知られる。ファンドは約12銘柄に集中投資する方針を採用しており、それぞれの投資対象について徹底したリサーチを行う。ウーバー株への投資もこの戦略の一環であり、その選定基準は極めて厳格である。
パーシングは投資対象を選定する際、競争優位性の持続性、成長余地、財務の健全性、そして経営陣の能力を重視する。ウーバーは世界的なライドシェア市場を独占的に近い形で支配しており、フードデリバリー市場でも一定の地位を確立している。こうした強固なプラットフォームが競争優位性の源泉となっている。
また、財務面では営業レバレッジを活かしながら利益率を拡大しており、今後の成長によって収益性がさらに高まると見込まれる。経営陣についても、CEOのダラ・コスロシャヒは既に業績を大幅に改善しており、アックマンはそのリーダーシップを高く評価している。
一方、パーシングの戦略にはリスクもある。銘柄数を限定することで市場の変動に対する耐性が低くなる可能性があるからだ。しかし、これまでの実績から考えると、アックマンが今回の投資について慎重に判断したことは間違いないだろう。
ウーバーの成長を支える3つの要因 市場の評価は過小か
ウーバーの株価は市場によって過小評価されている可能性が指摘されている。パーシングのプレゼン資料では、今後の成長要因として、利益率の向上、売上の拡大、資本還元の3つが強調された。この分析が正しければ、現在の株価は割安であり、アックマンの予測通りの上昇余地があると言える。
第一に、ウーバーは営業レバレッジを活かしながら利益率を拡大している。固定費が多いため、売上が増えるほど利益率が向上する構造となっている。実際、従業員数の伸びが3%にとどまる一方で、総予約数は20%以上成長しており、収益性の向上が期待できる。
第二に、ウーバーの売上は堅調に推移しており、今後も中〜高い10%台の成長が見込まれている。ライドシェア事業は成熟市場にあるが、フードデリバリーの成長余地は依然として大きく、地域ごとの需要に応じた柔軟なサービス展開が可能だ。
第三に、資本還元の強化が挙げられる。ウーバーは自社株買いを活発化させており、株主への還元姿勢が強まっている。これにより、1株当たり利益の成長が促進される可能性がある。
しかし、市場はウーバーの成長シナリオに懐疑的な部分もある。特に、自動運転技術の進展がライドシェア市場に及ぼす影響については意見が分かれている。アックマンはこのリスクを限定的と見ているが、技術革新のスピード次第では業界の競争環境が大きく変わる可能性も否定できない。
自動運転の脅威は杞憂か ウーバーの戦略的適応力
ウーバーの株価が過小評価される一因として、自動運転技術の進化がライドシェア業界に及ぼす影響が挙げられる。市場の一部では、完全自動運転(AV)の普及により、ウーバーのビジネスモデルが揺らぐとの見方がある。しかし、パーシングとアックマンはこのリスクを過大評価すべきではないと指摘する。
完全自動運転技術の普及には依然として時間がかかると見られている。法規制やインフラ整備の問題が未解決であり、商業化のハードルは高い。現時点で自動運転車を大量に導入し、ウーバーのビジネスモデルを根本から覆すような変化はすぐには訪れないと考えられる。
また、ウーバー自身も自動運転の波に適応する戦略を進めている。同社はすでにWaymoやWeRideといったAV企業と提携しており、業界の変化に対応できる体制を整えている。さらに、ライドシェアプラットフォームとしての強固なネットワークと顧客基盤を有しており、自動運転時代においてもサービス提供の中心に位置する可能性が高い。
加えて、自動運転技術の進化はウーバーにとって逆風ばかりではない。運転手の人件費削減や、配車の最適化によるコスト削減が実現すれば、長期的には利益率の向上につながる可能性がある。むしろ、ウーバーが自動運転を積極的に活用することで、競争優位を維持する道も開けるだろう。
こうした状況を踏まえると、自動運転のリスクを理由にウーバーの将来を悲観するのは早計である。市場はこの点を過小評価している可能性があり、アックマンの見通しが正しければ、現在の株価には大きな上昇余地があると言えるだろう。
Source: The Motley Fool