Arm HoldingsがMetaとのAIチップ契約を締結し、新たな成長局面に突入した。これまで技術ライセンス提供に特化していた同社は、独自のAIチップ開発へと戦略を転換し、2025年までに市場投入を計画している。MetaのAIインフラ投資が650億ドル規模に達する中、Armのエネルギー効率に優れたプロセッサは、データセンター向けチップ市場での競争力を強化する見込みだ。
この発表を受け、Armの株価は急騰し、2025年の累計上昇率は29%に達した。第3四半期決算では売上が前年同期比19%増となり、粗利益率97.2%と高水準を維持。さらに、Amazon、Google、Microsoftなどのクラウド企業やBMW、Hondaとの自動車向けチップ分野での提携も進む。しかし、株価売上高倍率34倍、株価収益倍率78倍と依然としてバリュエーションは高く、短期的な投資判断には慎重さが求められる。
ArmのAIチップ戦略とMetaとの提携の意義

Arm HoldingsがMetaと締結した契約は、単なるチップ設計のライセンス提供にとどまらず、AI向けプロセッサ市場におけるArmの地位を大きく変える可能性がある。従来、Armは半導体設計のライセンス企業として広く知られてきたが、近年は自社でのチップ開発を進めており、今回の契約はその戦略転換を象徴するものといえる。
Metaは2025年にAIインフラ関連で650億ドルの投資を計画しており、その一環としてArmの技術を活用する見込みだ。Armの省電力アーキテクチャは、データセンターの消費電力を抑制しながらパフォーマンスを最適化する点で優位性を持つ。特に、大規模なAIモデルを運用するための計算負荷が増大する中、エネルギー効率の向上はクラウドプロバイダーにとって重要な課題である。
しかし、今回の契約によりArmがNvidiaやIntelといったデータセンター向けチップの巨頭と競争することになる点には留意が必要だ。Armはこれまでモバイル向けに強みを持っていたが、サーバー市場での競争力を確立するには、高性能チップの開発やエコシステムの拡充が不可欠となる。Metaとの提携はその布石となるが、今後の技術革新と市場の反応が鍵を握る。
急成長するArmの財務基盤と株価の割高感
Armは2025年度第3四半期決算で売上高9億8,300万ドルを記録し、前年同期比19%の増加を達成した。特にロイヤリティ収益が5億8,000万ドルに達し、Armv9アーキテクチャの採用拡大が収益成長を牽引した。さらに、Microsoft、Nvidia、Oracle、OpenAIと共同で進めるStargateプロジェクトは、今後4年間で5,000億ドル規模のAIインフラ投資を見込んでおり、Armの技術が重要な役割を果たすと見られる。
また、Armは自動車分野でも事業拡大を進めており、BMW、Honda、Mercedesなどの大手自動車メーカーと提携し、次世代の車載システム向けに省電力チップを提供している。クラウド市場だけでなく、自動車業界への展開も成長ドライバーとなる可能性がある。しかし、現在の株価評価は依然として高く、株価売上高倍率が34倍、株価収益倍率が78倍と、成長期待が先行している状態だ。
アナリストの評価では、18人が「強い買い」、8人が「中立」、1人が「強い売り」としており、目標株価は165.25ドルと現状より6%の上昇余地がある。ただし、短期的には市場のボラティリティや金利動向に影響を受ける可能性があり、慎重な投資判断が求められる。一方で、長期的にはAI市場の拡大とともに成長が見込まれるため、技術の進展と市場シェアの推移を注視する必要がある。
Source: Barchart