新型コロナウイルスワクチンの成功で急成長したModerna(MRNA)は、その後の市場環境の変化に伴い株価が大幅に下落した。2023年の株価は62.6%減少し、さらに2024年の決算発表後には年初来で13.4%下落するなど厳しい状況が続く。

同社の売上はCOVID-19ワクチン需要の縮小により低迷し、2023年の通期売上は前年比52.7%減の32億3000万ドルとなった。これに伴い、11億2000万ドルの四半期純損失を計上し、年間で36億ドルの赤字を記録している。一方、ウォール街のアナリストはModernaの株価が2025年に最大85%上昇すると予測し、強気な見方もある。

Modernaの株価下落の背景と市場の評価

Modernaは2020年の新型コロナウイルスワクチンの成功により急成長を遂げたが、その後の市場環境の変化が株価の下落を招いた。2023年の年間株価は62.6%下落し、2024年の決算発表後も13.4%の下落を記録するなど、投資家の期待とは裏腹に厳しい状況が続いている。

この下落の主因は、新型コロナウイルスワクチンの需要縮小による売上の低迷である。2023年の通期売上は前年比52.7%減の32億3000万ドルにとどまり、第4四半期の総売上は9億6600万ドルと、前年同期の28億ドルから大きく減少した。加えて、第4四半期の純損失は11億2000万ドル、年間では36億ドルの損失を計上しており、収益性の回復は容易ではない状況にある。

市場の評価も慎重であり、ウォール街のアナリスト25人のうち「ホールド(中立)」が18名と最も多く、強気の買い推奨は3名にとどまる。一方で、目標株価の中央値は66.41ドルとされ、現在の株価から最大85%の上昇余地があるとの見方もある。しかし、この上昇が現実のものとなるかは、新規製品の市場投入とその成功にかかっている。

新規パイプラインと成長戦略の行方

Modernaは、新型コロナウイルスワクチンの売上減少を補うため、多岐にわたる新規製品開発を進めている。特に、RSVワクチンや次世代COVID-19ワクチン、複数の呼吸器ウイルスに対応する組み合わせワクチンなどは、今後の成長を支える重要な要素となる。

中でも、サイトメガロウイルス(CMV)ワクチンは、年間売上10億ドル以上の「ブロックバスター」製品になる可能性を秘めており、現在第3相試験の段階にある。今年中に有効性データが発表される予定で、承認されればModernaの事業基盤を大きく支えることになる。また、Merckと共同開発しているがん治療ワクチンは、メラノーマや膀胱がん、非小細胞肺がんなどを対象とし、mRNA技術の新たな応用として期待されている。

Modernaは2027年までに少なくとも10の新規製品を承認させる計画を持ち、2025年の売上予測は15億~25億ドル、2026年には前年比30.3%増の28億ドルと見込まれている。さらに、同社は第4四半期終了時点で95億ドルのキャッシュおよび投資資産を保有しており、積極的な研究開発やM&A(企業買収)を通じて成長戦略を加速させる意向を示している。

バイオテクノロジー業界における競争と課題

しかし、Modernaがこの成長戦略を成功させるためには、バイオテクノロジー業界における競争の激化と技術的課題を克服しなければならない。mRNA技術はCOVID-19ワクチンで成功を収めたが、がん治療やその他の疾患向けの応用ではまだ試験段階であり、実用化の難しさが伴う。

また、競合他社も積極的にmRNA技術の研究開発を進めている。例えば、PfizerやBioNTechはModernaと同様のmRNAベースのワクチン開発を推進しており、すでに市場に浸透したプラットフォームを持つ大手製薬企業との競争は避けられない。特に、ワクチン市場では、価格競争や流通戦略が収益性に大きな影響を与えるため、Modernaが単独で市場を支配することは難しい。

加えて、臨床試験の不確実性もリスク要因となる。医薬品の開発は長期間を要し、規制当局の承認を得るまでには多くの課題を乗り越えなければならない。試験結果が予想を下回る場合、市場の期待が大きく裏切られ、株価のさらなる下落につながる可能性がある。これらの点を踏まえると、Modernaが今後の成長を実現できるかは依然として不透明であり、短期的な株価回復を確実視するのは早計と言える。

Source:Barchart.com