電気トラックの開発を手掛けるニコラ(NKLA)が2月19日、米連邦破産法第11章(チャプター11)の適用を申請した。経営難が続いていた同社は、2023年10月の時点で戦略的選択肢を模索していたが、最終的に資金調達や買収先確保に失敗し、破産へと追い込まれた。

ニコラはかつてゼネラル・モーターズ(GM)から20億ドル規模の出資を受け、時価総額がフォードを上回るほどの評価を得ていた。しかし、バッテリー電動車(BEV)および水素燃料電池車(FCEV)の商業化に苦戦し、度重なるリコールや市場全体の逆風が成長を阻んだ。

破産発表前、アナリストの平均目標株価は6ドルとされ、650%の上昇余地が見込まれていた。それでも現実には株価は50セントを下回り、52週間で98%の下落を記録。業界内ではフィスカーやローズタウン・モーターズなど他のEVスタートアップも相次いで破産しており、ニコラの破綻はEV業界の課題を浮き彫りにしている。

破産に至った経緯 事業戦略の迷走と市場環境の逆風

ニコラはEVトラックの先駆者として注目を集めたものの、開発と商業化の過程で数々の課題に直面した。特に、バッテリー電動車(BEV)と水素燃料電池車(FCEV)の両方を手掛ける戦略が負担となり、開発資金とリソースが分散されたことが成長の妨げとなった。これにより、十分な生産規模の達成が難しくなり、市場の期待に応えられなかったことが経営難を加速させた。

さらに、開発した車両には技術的な問題が発生し、リコール対応が財務を圧迫した。ニコラは過去3年間で約600台を生産したが、多くの車両に欠陥があり、高額な修理費用が発生した。このような品質管理の問題は、顧客の信頼を失う要因となっただけでなく、企業の財務状況を一層厳しくした。

また、市場環境の変化もニコラにとって逆風となった。EV業界全体が資金調達の難化、生産コストの上昇、充電インフラの整備不足といった課題に直面しており、ニコラにとっても状況は厳しかった。これらの問題が重なった結果、同社は新たな資本調達に失敗し、破産申請に至ったと考えられる。

EV業界の成長鈍化とスタートアップ企業の苦境

ニコラの破産は、EV業界全体における成長鈍化の象徴とも言える。2020年頃には、政府の補助金政策や環境意識の高まりによってEV市場は急成長したが、近年は状況が変化しつつある。特に、充電インフラの普及が遅れたことや、原材料価格の高騰が影響し、EVメーカーの収益構造は悪化している。これにより、十分な資本力を持たないスタートアップ企業にとっては、市場競争がより厳しくなった。

また、消費者のEVに対する関心が予想よりも伸び悩んでいる点も、ニコラのような企業にとって大きな誤算となった。充電時間の長さや航続距離の不安といった課題が依然として解決されておらず、特に商用車市場ではディーゼル車からの転換が進みにくい状況が続いている。

その結果、フィスカーやローズタウン・モーターズといった他のEVスタートアップも相次いで破産を申請する事態となっている。大手自動車メーカーでさえEV事業の収益確保に苦戦している現状を考えると、資本力の乏しい新興企業が生き残るためのハードルはますます高まっていると言える。

アナリストの予測と現実との乖離 なぜ評価を誤ったのか

ニコラが破産申請を行う直前まで、アナリストの平均目標株価は6ドルとされ、650%の上昇が見込まれていた。しかし、実際には株価は50セントを割り込み、過去1年間で98%もの下落を記録している。このような乖離が生じた背景には、アナリストの過度な楽観視があったと考えられる。

一因として、EV市場全体に対する楽観的な見方が根強かったことが挙げられる。政府の補助金や環境規制の強化がEV企業の成長を支えるという前提のもと、ニコラのようなスタートアップにも高い期待が寄せられていた。しかし、実際には市場環境が急速に変化し、投資家のリスク許容度が低下する中で、企業の実力以上の評価が維持されてしまった可能性がある。

また、アナリストの評価は、ニコラが新たな資金調達や買収先の確保に成功するという前提に基づいていた。しかし、現実には資金調達が困難となり、企業の成長戦略が立ち行かなくなったことで、楽観的な予測は裏切られる結果となった。このような評価ミスは、他のEVメーカーにも共通する課題であり、投資家にとっては今後の市場動向を見極める重要な教訓となるだろう。

Source:Barchart.com