2025年に入り、中国のテクノロジー株が急上昇する中、アリババ(BABA)の株価は年初来で50%もの上昇を記録した。背景には、AI技術の進化や政府との関係改善がある。
特に注目されるのは、アリババが発表したAIモデル「Qwen 2.5-Max」が業界トップの技術水準を示したことに加え、Appleとの提携により中国市場での影響力を拡大した点である。さらに、中国政府が民間企業との対話を強化し、経済政策に積極的な姿勢を見せていることも追い風となっている。
しかし、市場では株価の急騰によるバリュエーションの妥当性や、米中関係の不透明さが引き続きリスクとして指摘されている。今後の決算発表を控え、アリババ株がさらに上昇を続けるのか、それとも調整局面を迎えるのかが注目される。
アリババのAI戦略が示す競争力の変化
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アリババが発表した最新AIモデル「Qwen 2.5-Max」は、AI業界での競争を新たな局面へと導いた。このモデルは、DeepSeek-V3やOpenAIのGPT-4oと比較して複数の指標で優れた結果を示し、中国発のAI技術の実力を世界に示した。特に、AIの処理能力とコスト面での競争力が強調され、アリババの技術開発力の向上が明確になった。
この動向は、中国のテック企業がAI開発において独自路線を強めつつあることを示している。米中間の技術覇権争いが続く中、中国企業はAI研究を国内で加速させ、自国市場向けに最適化された技術を提供する傾向にある。アリババのQwenシリーズの進化も、こうした流れの一環といえるだろう。
一方で、AIモデルの競争力は技術力だけでは決まらない。実用化に向けたエコシステムの整備や、企業との連携が鍵を握る。アリババがAppleと提携し、中国市場向けのiPhoneにAI機能を導入することは、同社のAI技術が実際に市場で活用される環境を整える重要な一歩となる。こうした動きが他の中国企業にも波及すれば、中国のAI業界全体の成長を促す可能性がある。
アリババと中国政府の関係改善が示す市場環境の変化
アリババの株価上昇には、技術革新だけでなく政府との関係改善も大きく寄与している。2021年以降、中国政府はテクノロジー企業への規制を強化し、アリババもその影響を受けた。しかし、習近平国家主席がジャック・マー氏を含む企業家と会談したことは、中国政府がテクノロジー企業との関係を見直しつつある可能性を示唆する出来事だった。
この変化の背景には、中国経済の成長鈍化と投資家の信頼回復への必要性がある。中国政府は外国人投資家を呼び戻すため、規制の緩和や経済支援策を強化している。アリババがその象徴的な企業であることを考えると、政府の支援姿勢が強まれば、同社を含む中国テクノロジー企業全体に好影響を与えるだろう。
ただし、この関係改善が持続的なものかどうかは慎重に見極める必要がある。中国の政策は長期的な戦略に基づいているが、国内外の政治・経済情勢の変化によって方向性が変わることもある。アリババが政府と良好な関係を維持できるかが、今後の株価動向に大きな影響を与えるだろう。
投資判断の鍵を握る決算発表と市場の評価
アリババの株価は、2025年度第3四半期(2024年10~12月期)の決算発表を前に、すでに市場のコンセンサス目標価格を上回る水準にある。アナリストの予測では、売上高は前年同期比7.4%増の328億ドル、調整後1株当たり利益(EPS)は2.8%増となる見込みだ。
この業績が市場予想を上回れば、アリババ株の上昇はさらに続く可能性がある。一方で、既に株価が急騰しているため、決算が市場予想と一致するか下回る場合、利益確定の売りが出る可能性もある。特に、中国の経済成長鈍化や地政学リスクが意識される中、投資家の慎重な姿勢が強まることも考えられる。
加えて、アリババの事業再編計画がどのように進展するかも、今後の株価の鍵を握る。アリババは現在、各事業部門の分割・上場を進めており、企業価値の最大化を狙っている。これが成功すれば、同社の評価は一段と高まり、長期的な成長余地が広がることになるだろう。
Source:Barchart.com