ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが2024年第4四半期の13F報告書を提出し、その内容が市場の注目を集めている。報告書によると、バフェットは唯一の個別銘柄としてウルタ・ビューティー(NASDAQ:ULTA)を完全に売却した。これは、同社株をわずか1四半期で手放すという異例の判断であり、その背景にある投資戦略が議論を呼んでいる。

ウルタ・ビューティーの購入は、景気後退期に化粧品需要が底堅いという「リップスティック効果」に基づいたものと見られていた。しかし、高インフレや消費者の負債増加が影響し、2024年第3四半期の売上成長率は1.7%にとどまった。成長鈍化が売却の要因と考えられるが、投資の主導者がバフェット自身ではなく彼の投資チームだった可能性も高い。

バフェットが短期間でウルタ・ビューティーを手放した理由とは

ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは、ウルタ・ビューティー株を2024年第2四半期に購入しながらも、第3四半期にはほぼすべての持ち株を売却した。この短期間での売却は、バフェットの通常の「長期投資」戦略とは一線を画す動きであり、その背景に何があったのかが市場の関心を集めている。

ウルタ・ビューティーは米国全土に1400以上の店舗を展開し、化粧品販売のリーディングカンパニーとしての地位を確立している。特に、景気後退期において「リップスティック効果」により堅調な業績を維持できると考えられていた。しかし、2024年第3四半期の決算では売上成長率が1.7%、既存店売上高の伸びは0.6%と低迷し、消費者の購買意欲が減退していることが明らかになった。インフレや高金利の影響で discretionary spending(裁量支出)が抑制され、当初想定されていた安定性が揺らいだ可能性がある。

また、バークシャー・ハサウェイでは10億ドル未満の投資はバフェット自身ではなく、テッド・ウェシュラーやトッド・コームズが主導することが多い。ウルタ・ビューティーへの投資額は約2億6600万ドルであり、今回の売却がバフェット個人の判断ではなく、彼の投資チームによる決定だった可能性も指摘されている。仮にバフェット本人が主導した取引ではない場合、長期的な視点に基づく投資方針とは異なる理由での売却だった可能性が高い。

ウルタ・ビューティーの成長鈍化は一時的か、それとも構造的な問題か

ウルタ・ビューティーの業績鈍化は、単なる一時的な要因によるものなのか、それとも同社のビジネスモデルに関わる構造的な問題なのかが投資家にとっての焦点となる。近年、化粧品業界ではeコマースの急成長や、ダイレクト・トゥ・コンシューマー(DTC)ブランドの台頭が進んでおり、伝統的な実店舗販売モデルに依存する企業にとって逆風となっている。

ウルタ・ビューティーもオンライン販売を強化しているが、競争の激化により、アマゾンやブランド直販サイトとの価格競争が避けられない。さらに、セフォラを擁するLVMHや、ターゲットとの提携を進める業界競合との競争も激化している。こうした状況下で、ウルタが持続的な成長を遂げるには、単なる価格競争ではなく、独自のサービスやブランド戦略を打ち出す必要がある。

一方で、化粧品市場そのものの成長は続いており、特にスキンケアやクリーンビューティー(無添加・サステナブル化粧品)などの分野が注目を集めている。ウルタはこうした新しい市場に積極的に参入しており、仮に短期的な業績が低迷していても、将来的に回復する余地は十分にある。したがって、今回の業績低迷が一時的なものか、それとも構造的な問題なのかを見極めることが、投資家にとっての重要な判断材料となる。

バフェットが売却した銘柄は売るべきか?投資家が考慮すべきポイント

ウォーレン・バフェットがある銘柄を売却したからといって、すべての投資家が同じ判断を下すべきとは限らない。バフェットの売却理由は個別の事情によるものであり、必ずしも企業の将来性そのものを否定するものではない。特に、ウルタ・ビューティーのように市場で一定の地位を確立している企業は、短期的な業績不振が続いても長期的な視点で成長の可能性を持つケースも多い。

また、バフェット自身が「市場のタイミングを計ることは不可能であり、重要なのは市場に居続けることだ」と述べているように、短期的な変動に惑わされず、長期的な視点での投資判断が求められる。投資家は、ウルタ・ビューティーの財務状況、競争環境、成長戦略を慎重に分析し、自身のリスク許容度に応じた判断を下すことが重要だ。

さらに、ウルタ・ビューティーは全米50州に1400以上の店舗を展開し、会員プログラムを強化することで顧客のロイヤルティを高める戦略を進めている。この点を評価するなら、現在の業績低迷は一時的なものと考えられる可能性もある。したがって、バフェットの売却だけを根拠に投資判断を下すのではなく、自身のポートフォリオや投資目標に合致するかどうかを冷静に見極めることが求められる。

Source:24/7 Wall St