ARKインベストのキャシー・ウッドは、AI関連株に対する戦略を大きく転換している。最新の動向では、データ分析とAIソリューションの分野で躍進するパランティアへの投資を一部売却しつつ、AI市場で苦戦するAMDの株式を大幅に増やすという大胆な決断を下した。

パランティアは高成長を続けており、政府および商業分野での売上が急増。しかし、その高い評価額を懸念する声も強い。一方で、AIチップ市場においてNVIDIAの後塵を拝しているAMDは、AI分野での苦戦が続くが、新型GPUの投入で巻き返しを狙う。

市場の評価は二極化しており、パランティアの株価下落を警戒する意見と、AMDの成長余地に期待する見方が交錯。ウッドの投資判断は、AI市場の未来を見据えた長期的な戦略の一環といえるが、そのリスクとリターンを見極める必要がある。

パランティアのAI戦略と市場の期待

パランティアはAI主導の成長を加速させており、特に2023年4月に発表した「Artificial Intelligence Platform（AIP）」が事業拡大の鍵を握る。同プラットフォームはデータ分析を高度化し、企業や政府の意思決定を支援することで競争優位性を確立している。これにより、同社はAI技術を活用した業務効率化を進め、多くの企業や政府機関からの需要を拡大させている。

また、最新の四半期決算では8億2752万ドルの売上を記録し、前年同期比36%増と市場予想を上回る好調な成長を示した。特に、米国政府向けの売上は45%増加し、商業向け事業は64%の伸びを記録するなど、事業の多角化も進んでいる。この成長を背景に株価も上昇傾向にあり、投資家の関心を集めている。

しかし、パランティアの高いバリュエーションが懸念材料となっている。ジェフリーズのアナリスト、ブレント・シル氏は「売り」評価を発表し、株価が52%下落する可能性を示唆している。これは、同社の急成長が一時的なものか、それとも持続的なものかという点に対する市場の疑問を反映しているといえる。

このような状況の中で、キャシー・ウッドは2023年第4四半期に一部のパランティア株を売却しつつも、大部分の投資を維持している。これは、彼女が同社の長期的な成長を信じていることを示唆しており、今後の市場動向に注目が集まる。

AMDのAI市場での課題と今後の展望

一方で、AMDはAIチップ市場において困難な状況に直面している。かつてNVIDIAの競争相手として期待されていたが、データセンター向けGPUの売上が市場予想を下回り、AI分野での成長が思うように進んでいない。これは、AI市場が急速に進化し、ハイエンドなGPU技術が求められる中で、AMDの製品が十分な競争力を持たなかったことが影響していると考えられる。

同社はこの状況を打開するため、2025年後半に新型GPU「MI350」を投入する計画を進めている。これにより、AI市場でのポジションを強化し、データセンター向けビジネスを拡大することを目指している。また、ループキャピタルのアナリスト、ゲイリー・モブリー氏は、AMDの今後の成長に期待を寄せており、株価目標を175ドルと設定している。これは、現在の株価から約53%の上昇余地を示唆するものだ。

キャシー・ウッドはAMDの短期的な苦戦にもかかわらず、第4四半期に同社の株式を54%増やし、総額1億3700万ドル以上を投資した。これは、AMDが今後AI市場で成長を遂げる可能性を見込み、現在の低迷を一時的なものと見なしていることを示している。

しかし、AI市場の競争は熾烈であり、NVIDIAや他の半導体企業との競争環境が変化する中で、AMDがどこまで巻き返せるかは不透明である。ウッドの投資が正解だったかどうかは、新型GPUの市場受容度や技術革新の進展によって決まるだろう。

AI投資のリスクと機会

キャシー・ウッドのAI株戦略は、投資家にとって重要な示唆を与えている。彼女がパランティアの株式を部分的に売却しつつも依然として保有を続けている点は、同社の高成長を評価しつつもリスク管理を意識した動きと捉えられる。一方で、AI市場で苦戦するAMDの株を大幅に買い増したことは、短期的な業績の低迷を乗り越え、将来的な成長の可能性を重視する姿勢を示している。

現在のAI市場は急速に変化しており、企業の技術革新のスピードが成功の鍵を握る。パランティアはAIを活用したデータ分析分野での優位性を維持しつつあるが、その評価額が過大であるとの懸念が拭えない。一方で、AMDは今後の新製品展開次第でAI市場において再び強い存在感を示す可能性がある。

投資家にとっては、AI市場の成長を享受するためには企業ごとのリスクとリターンを慎重に見極める必要がある。短期的な株価の変動に一喜一憂するのではなく、企業の長期的な競争力や市場でのポジションを見極めることが、成功する投資戦略の鍵となるだろう。

Source：PUNE.NEWS