米国の関税政策がAppleの経営戦略に新たな圧力をかけている。バンク・オブ・アメリカ(BofA)のアナリストによれば、米国に輸入されるApple製品に10%の関税が課される場合、同社の1株当たり利益(EPS)は2~3%減少する可能性があるという。これに対応するため、Appleは製品価格の引き上げを余儀なくされる可能性が高い。

BofAの試算によると、Appleが米国内で約3%の価格改定を行えば、EPSの下落幅は0.21ドル(2.4%減)に抑えられるが、販売台数は約5%減少する見込みだ。また、トランプ前大統領は「誰も免除されないシンプルな関税制度」と述べており、今後さらなる関税措置が取られる可能性もある。

特にAppleは、iPhoneの一部をインドで製造しているが、仮にインドにも報復関税が課される場合、中国製品よりも高い税率が適用される可能性が指摘されている。これらの影響にもかかわらず、BofAはAAPL株に対して強気の姿勢を維持しており、目標株価を1株265ドルに据え置いている。

Appleの強固なキャッシュフローやAI技術の進化が、同社の成長を支える要因として評価されているためだ。しかし、関税によるコスト増が消費者価格の上昇につながる場合、Appleの市場シェアや収益構造にどのような影響を及ぼすのか、今後の動向が注視される。

関税の影響を受けるAppleの収益構造と価格戦略

Appleの収益は、製品の販売価格、利益率、販売台数のバランスによって成立している。バンク・オブ・アメリカ(BofA)の試算では、関税が10%導入された場合、Appleの1株当たり利益(EPS)は2%~3%の減少となる見込みだ。特にiPhoneは同社の売上の大部分を占める主力製品であり、年間5000万台が米国内で販売される。

価格を維持したままでは利益率が圧迫されるため、Appleが価格引き上げを検討するのは自然な流れといえる。Appleはこれまでも部材費の上昇や為替変動に応じて価格改定を行ってきたが、関税は政府の政策による外的要因であり、企業のコストコントロールの範囲を超える影響を与える。

BofAは、Appleが約3%の価格引き上げを行えば、EPSの減少幅を0.21ドル(2.4%減)に抑えることができると試算している。ただし、これによって販売台数は5%減少する可能性があり、市場競争においてどの程度の影響を受けるかが焦点となる。

Appleにとって、価格戦略の変更はブランド価値にも関わる重要な決定事項である。同社の製品は価格が高いことで知られるが、その分プレミアムブランドとしての地位を築いてきた。価格が上昇すれば、よりコストパフォーマンスの高い競合製品へ消費者が流れる可能性もある。

特に米国内では、iPhone以外にもSamsungやGoogleのスマートフォンが市場に浸透しており、Appleの価格戦略が今後の販売動向を左右することになるだろう。

新たな関税政策とテクノロジー業界への波及効果

関税の影響はAppleだけにとどまらず、広範なテクノロジー業界にも波及する可能性が高い。トランプ前大統領は関税政策について「誰も免除されないシンプルなシステム」と述べており、これが北米市場全体の価格体系に影響を及ぼす可能性が指摘されている。すでに電気自動車(EV)の価格上昇や半導体の調達コスト増など、米国の製造業にも関税の影響が出始めている。

Appleの製品は多くの部品を中国をはじめとする海外で調達し、最終組み立ても主にアジアの工場で行われている。このため、関税が課されると製造コストが増加し、その影響が販売価格に転嫁されることになる。

さらに、Appleは中国依存を軽減するため、近年インドでの生産を拡大しているが、仮にインドにも報復関税が適用された場合、コスト削減のための施策が制約されることになりかねない。また、関税の影響を受けるのはAppleのようなハードウェアメーカーだけではない。

米国のテクノロジー企業全体が部材や製造拠点の変更を余儀なくされ、サプライチェーンの再編が求められる可能性がある。特に半導体業界は国際的な供給網に依存しているため、関税が導入されれば価格の上昇や供給の不安定化につながるだろう。こうした動きが米国内の消費者や企業の購買行動にどのような影響を与えるかが、今後の重要な論点となる。

AAPL株の見通しと投資家の判断基準

Apple株(AAPL)は長年にわたり市場の安定銘柄として評価されてきたが、関税の影響を受けることで今後の成長シナリオに変化が生じる可能性がある。BofAはAAPL株について「買い」の評価を維持し、目標株価を1株265ドルに据え置いている。しかし、関税によるコスト上昇と販売台数の減少が収益にどの程度影響を与えるかは不透明なままだ。

Appleの強みは、強固なキャッシュフローと高いブランド力にある。iPhoneをはじめとするハードウェア製品は、エコシステム全体を構成する要素の一部であり、サービス部門の収益増加が業績を支える可能性がある。BofAのアナリストも、AI技術の活用による収益機会の拡大を指摘しており、これが関税の影響をある程度相殺する要因となる可能性がある。

しかし、市場の見方は必ずしも一枚岩ではない。短期的には関税の影響で収益性が圧迫される可能性があり、これが株価の変動要因となるだろう。特にAppleの主要市場である北米の消費動向が、価格改定後にどのように変化するかが重要なポイントとなる。投資家にとっては、関税によるリスクとAppleの長期的な成長戦略のバランスを見極めることが、今後の判断基準となるだろう。

Source:Watcher Guru