Appleは新たな低価格帯モデル「iPhone 16e」を正式に発表した。従来の「iPhone SE」シリーズを刷新し、最新のA18チップを搭載。さらに、Appleが独自開発したモデム「C1」を採用し、衛星通信機能にも対応する。廉価版ながらも最新のAI機能「Apple Intelligence」を搭載し、iPhone 14よりも高いパフォーマンスを実現している。
Appleは、従来のSEシリーズにあった「廉価版」のイメージを払拭しつつ、新たな市場戦略を展開する意図があるとみられる。本体デザインはiPhone 14に近く、6.1インチのSuper Retina XDR OLEDディスプレイを採用。カメラはシングル仕様だが、48MPの高解像度センサーを搭載し、2倍のロスレスズームにも対応する。
また、iOS 18を標準搭載し、カスタマイズ可能なアクションボタンを備えるなど、使い勝手にも配慮されている。バッテリー持続時間も向上し、iPhone 11比で6時間、歴代SEシリーズ比で最大12時間の駆動時間を実現。予約開始は2月21日、発売は2月28日を予定しており、価格は128GBモデルで599ドルから。
Appleは「iPhone 16e」を通じて、低価格帯でも先進技術を提供する方針を明確にしたといえる。
Apple初の自社開発モデム「C1」の狙いと影響

Appleは「iPhone 16e」において、初めて自社開発モデム「C1」を採用した。これまでAppleはQualcomm製のモデムに依存していたが、独自のモデム開発により、通信技術の最適化を図るとみられる。特に、5G通信の効率向上や、衛星通信機能の強化が期待される。Appleは過去数年間にわたり、Intelのモデム部門を買収するなどして独自開発の準備を進めてきた。
今回の「C1」採用は、その技術蓄積が実を結んだ形といえる。また、Appleがモデムを内製化することで、長期的なコスト削減と製品の一貫した最適化が可能となる。ただし、初の自社製モデムであるため、通信品質や電力効率が既存のQualcomm製と同等か、それ以上であるかは不透明だ。
これまでのモデム市場におけるQualcommの優位性を考えれば、Appleが独自技術でどこまで競争力を発揮できるかが注目される。今後、iPhone 16eの実際の使用感や通信品質が評価されることで、その実力が明らかになるだろう。
一方で、Appleの自社開発モデムは今後のiPhone全モデルに拡大される可能性もある。独自技術の確立は、サプライチェーンのコントロール強化にもつながる。特に、チップ供給を内製化することで、他社依存のリスクを軽減できる点が大きなメリットとなる。ただし、AppleがQualcommとの関係を完全に断ち切るかは未知数であり、今後の動向に注目が集まる。
iPhone 16eの市場戦略とSEシリーズからの転換
Appleは「iPhone 16e」の投入によって、従来の「iPhone SE」シリーズを廃止した。SEシリーズは、過去のiPhoneの筐体デザインを流用し、最新チップを搭載することでコストパフォーマンスを重視するモデルだった。しかし、16eはSEの路線とは一線を画し、最新のA18チップやApple Intelligenceのサポートなど、先進機能を取り入れつつも価格を抑えたモデルとなっている。
この変更は、廉価モデルに対するブランドイメージの再構築を意味すると考えられる。Appleはこれまで「廉価版」のイメージを持つiPhoneを提供してきたが、価格の上昇や市場の変化により、新たなアプローチが必要になった。特に、欧州やインド市場では価格競争が激化しており、競合メーカーは低価格帯での高性能モデルを次々と投入している。
Appleが「16e」という新たなネーミングを採用したのは、従来のSEシリーズの枠組みから脱却し、新たな層のユーザーを獲得する狙いがあるとみられる。また、16eはカメラ性能を抑えつつも、AIによる画像処理技術を強化することで、実用性を維持している。これは、ハードウェアよりもソフトウェアの最適化によってパフォーマンスを向上させるAppleの戦略の一環といえる。
さらに、iPhone 14に似たデザインを採用することで、コスト削減を図りつつ、最新モデルとしての一貫性を持たせている点も興味深い。Appleは今後、16eを通じて「コストを抑えながらも最新技術を享受できる」モデルの新たな位置付けを確立しようとしているのかもしれない。
AI時代のエントリーモデルとしての可能性
iPhone 16eは、Apple Intelligence(AI)に対応する最も手頃なモデルとなる。Appleは今回のiOS 18において、AI機能の強化を打ち出しており、16eもその恩恵を受ける形となる。これにより、廉価モデルでありながら、音声アシストやテキスト予測、画像編集の自動化などの高度な機能を利用できることが大きな魅力となる。
Apple Intelligenceの導入により、iPhoneの利用スタイルは変化する可能性がある。これまではカメラやディスプレイの進化がスマートフォンの中心的な改良点であったが、今後はソフトウェア主導の変革が重要視されるだろう。特に、エントリーモデルである16eがAI機能をサポートすることで、iPhoneを初めて使う層や、過去のSEシリーズユーザーにも新たな選択肢を提供することになる。
また、AppleはAI機能の一部をクラウドではなくデバイス上で処理する方針を示している。これはプライバシー保護の強化にもつながると考えられる。iPhone 16eがこの流れに対応することで、価格帯を問わずAI機能を活用できる環境が整いつつある。今後、Appleがどの程度AIをiPhoneの中心機能に据えるのか、また、エントリーモデルでの体験がどこまで向上するのかが注目される。
Source:GSMArena