元OpenAI CTOのミラ・ムラティが、新たなAIスタートアップ「Thinking Machines Lab」を設立した。彼女とともに、元OpenAIの主要メンバーを含む約30人の研究者が参加し、AIの新たな可能性を探求している。同社は、汎用人工知能(AGI)ではなく、人間と協力して動作するマルチモーダルAIの開発に注力することを明言した。

「Thinking Machines Lab」には、OpenAI共同創設者のジョン・シュルマンや元リサーチ部門VPのバレット・ゾフらが参画し、開発の最前線を担う。また、GoogleやAnthropicなどの他社出身者も迎え入れている。技術的には、高度なマルチモーダル機能、AIの安全性、最先端AIの開発、そして堅牢なインフラの構築を柱とする方針を打ち出した。

ミラ・ムラティ率いるThinking Machines Labの組織体制と中核メンバーの役割

「Thinking Machines Lab」は、OpenAIの元幹部が中核を担う形で組織されている。CEOのミラ・ムラティを筆頭に、CTOには元OpenAIリサーチ部門VPのバレット・ゾフが就任し、AIの技術戦略を主導する。さらに、OpenAI共同創設者のジョン・シュルマンがチーフサイエンティストとして参画し、研究開発の方向性を決定する役割を担う。

また、AIの安全性を担当するリリアン・ウェンや、マルチモーダルAIの専門家アレクサンダー・キリロフといった研究者も加わっており、それぞれが専門分野において重要な役割を果たしている。特に、ルーク・メッツやジョナサン・ラフマンといった元OpenAIのエンジニアも参加していることから、同社がAIの最前線技術を推進する体制を整えていることがうかがえる。

この組織構成は、単なる新興スタートアップという枠を超え、既に成熟したAI企業と同等の研究力を備えていると考えられる。特に、OpenAIの元幹部が多く名を連ねている点は注目に値し、AI業界における新たな競争の火種となる可能性がある。今後、彼らの経験と専門性がどのように活かされるのかが焦点となる。

Thinking Machines Labの技術的アプローチと競争優位性

「Thinking Machines Lab」は、AIの開発においてマルチモーダル技術の進化を重視している。従来のAIが主にテキストや数値データに特化していたのに対し、同社はテキスト、画像、音声など複数の入力方式を組み合わせたシステムの構築を目指している。これにより、より直感的なインターフェースや実用性の高いAIが誕生することが期待される。

また、AIの安全性を確保するためのアプローチも独自性がある。Thinking Machines Labは、実験と反復的な研究を重視し、外部の研究者とも協力してAIの安全対策を推進する方針を打ち出している。具体的には、安全基準の確立、業界との知見共有、コードやデータセットの公開などを通じ、透明性を確保しながら開発を進める。

このような戦略が成功すれば、既存のAI企業との差別化につながる可能性がある。特に、ChatGPTなどの既存モデルとの差をどのように生み出すのかが注目される。Thinking Machines Labの技術が競争力を持つかどうかは、今後の研究成果や製品化のスピードに大きく依存する。

AI業界におけるThinking Machines Labの影響と今後の展望

OpenAIの元幹部が独立し、新たなAI企業を立ち上げたことは、業界全体に大きな影響を及ぼす可能性がある。特に、OpenAIの技術者が集団で移籍したことは、技術的なノウハウの流出という観点でも注目される。こうした動きは、AI開発の勢力図に変化をもたらし、GoogleやAnthropicといった他の企業との競争関係をより激化させる要因となるだろう。

また、Thinking Machines Labが掲げる「すべての人に役立つAIの開発」という理念は、単なる商業的なAIではなく、幅広い分野で活用可能な技術の提供を目指していることを示唆している。特に、プログラミングや数学に限らず、多様な職業で利用できるAIの構築に注力するという方針は、既存のAI技術とは一線を画す試みといえる。

現時点では、同社の具体的な製品やサービスの詳細は明かされていない。しかし、OpenAIの技術を熟知したエンジニアが新たなAIモデルを開発することは、業界全体にとって大きな意味を持つ。今後、彼らの研究成果がどのように形になるのか、その動向が注視される。

Source:BGR