Hewlett Packard Enterprise(HPE)は、新たな ProLiant Compute Gen12 シリーズを発表し、Intel Xeon 6 プロセッサを搭載した8つの新型サーバーを市場に投入することを明らかにした。この新シリーズは、量子コンピュータ時代の到来を見据えた量子耐性暗号(Quantum-Resistant Encryption) を採用し、次世代のセキュリティ基準に対応する設計となっている。

加えて、AI駆動のシステム最適化、DDR5メモリ対応、直接液冷(DLC)技術の採用 などにより、消費電力の最大65%削減 を実現するとHPEは発表している。ラックマウント型やタワー型、高性能クアッドプロセッサシステムなど多彩な構成をそろえ、企業のクラウド活用やAIワークロードへの対応を強化する狙いだ。

新シリーズの一部モデルは2025年第1四半期 に出荷開始予定であり、HPEの GreenLakeプラットフォーム を通じた提供も計画されている。

量子耐性暗号がもたらす新時代のデータセキュリティ

HPEが新たに発表した ProLiant Compute Gen12 シリーズは、量子コンピュータによる暗号解読のリスクを見据え、量子耐性暗号(Quantum-Resistant Encryption) を標準搭載している。量子コンピュータは、従来のRSAやECCといった暗号方式を短時間で解読できる可能性があるとされ、企業や政府機関にとって新たな脅威となる。

これに対し、HPEのProLiant Gen12は、暗号アルゴリズムの改良や耐量子暗号技術を導入し、長期的なデータ保護を実現する。特に、HPEの iLO 7 は暗号鍵や認証情報をハードウェアレベルで保護することで、サイバー攻撃への耐性を向上させている。

この進化は、金融機関や医療機関、政府機関など、機密データを扱う組織にとって極めて重要である。量子コンピュータの実用化が進む中で、企業は将来のリスクを想定し、暗号技術の移行を検討する必要がある。HPEの新技術は、こうした時代の要請に応えるものといえる。

DLC技術が実現するエネルギー効率の向上と運用コスト削減

HPEは ProLiant Compute Gen12 に、従来の空冷式と異なる 直接液冷(DLC: Direct Liquid Cooling) を採用し、データセンターの電力消費を大幅に削減する設計を導入した。HPEによれば、この新技術により、冷却にかかる電力を最大 90%削減 し、サーバー全体の年間消費電力を 最大65%削減 できるという。

DLCの仕組みは、プロセッサやメモリなどの発熱部品に直接冷却液を循環させることで、熱を効率的に除去する。これにより、従来の空調設備に依存する必要がなくなり、データセンターのエネルギー効率が飛躍的に向上する。

特に、大規模クラウドやAI処理を担うデータセンターでは、電力コスト削減が直接的な競争力向上につながるため、この技術の導入は業界全体に大きな影響を与えるだろう。環境負荷の低減も、DLCの重要な利点である。従来の空冷式は大量の電力を消費するだけでなく、排熱処理のための追加設備が必要であった。

DLCは冷却効率が高いため、設備投資の削減にも寄与する。持続可能性を重視する企業が増える中で、HPEのDLC採用は、単なる技術革新ではなく、環境規制やコスト管理の面でも有利な選択肢となる。

AI最適化と最新アーキテクチャがもたらすパフォーマンス向上

HPEの ProLiant Compute Gen12 は、Intel Xeon 6プロセッサを搭載し、AIワークロードの最適化 に特化した設計を採用している。特に、DDR5メモリのサポート と PCIe Gen5 の拡張性により、データ処理能力が大幅に向上した。

AIの普及が進む中で、企業のワークロードはますます複雑化している。クラウドベースのデータ処理、機械学習モデルのトレーニング、リアルタイムデータ解析など、負荷の高い処理が求められる場面が増えている。このような環境に対応するため、HPEは新シリーズでAIワークロードに最適化されたチューニングを施し、従来のサーバーに比べて効率的なデータ処理を実現している。

また、GPU搭載オプションの強化も、AIワークロード向けの重要な進化といえる。特に DL380a は、最大16基のシングルワイドGPUまたは8基のダブルワイドGPU に対応し、AIモデルの学習や推論タスクに適した設計となっている。これは、データ解析や機械学習を本格的に活用する企業にとって、極めて有用な機能となる。

HPEの新しいサーバー群は、単なるハードウェアのアップグレードではなく、企業の競争力向上を支えるインフラとしての進化を遂げている。特に、AIを活用する業界においては、このパフォーマンス向上が大きな差別化要因となるだろう。

Source:TechRadar