トランプ前大統領が導入した鉄鋼・アルミニウムの関税強化が、データセンター業界に深刻な影響を及ぼす可能性がある。特に、データセンターの運営に不可欠な変圧器の供給が滞ることで、インフラの拡張計画が停滞する懸念が高まっている。
この影響を大きく受けると見られるのが、データセンターREIT(不動産投資信託)の大手であるDigital Realty Trust(DLR)だ。同社は世界25カ国以上で300を超えるデータセンターを運営し、AIとクラウド需要の拡大を追い風に成長を続けてきた。しかし、関税によるコスト増や供給遅延は、今後の業績に新たなリスク要因をもたらす可能性がある。
ウォール街のアナリストはDLR株に対して強気の見方を維持しているものの、短期的な株価動向は不安定な様相を呈している。投資家にとっては、関税の影響が事業計画や収益にどの程度及ぶのかを慎重に見極めることが求められるだろう。
トランプ前大統領の関税政策がもたらすデータセンター業界の新たな課題

トランプ前大統領が導入した鉄鋼・アルミニウムの関税強化は、データセンター業界に大きな影響を及ぼしつつある。特に、AIやクラウドの需要増に伴いデータセンターの拡張が急務となる中で、不可欠な変圧器の供給が滞るリスクが高まっている。
ジェフ・カリー氏は、変圧器を「巨大な金属の塊」と表現し、その生産には鉄鋼とアルミニウムが不可欠であると指摘した。関税によってこれらの素材のコストが上昇し、供給不足が悪化すれば、変圧器の価格高騰や納期の遅延につながる可能性がある。すでに供給網の逼迫が報告されている中で、追加関税が業界全体にさらなる圧力をかけることは避けられない。
データセンター業界にとって、変圧器の安定供給は成長の鍵を握る要素である。特に、規模の大きな拡張計画を進める企業ほど、こうした供給リスクを回避するための戦略が求められる。今後、企業は調達先の分散や代替技術の導入などを通じて影響を最小限に抑える手段を講じることが不可欠となるだろう。
Digital Realty Trustが直面するリスクと市場の評価
Digital Realty Trust(DLR)は、世界25カ国以上で300を超えるデータセンターを運営する大手不動産投資信託(REIT)である。同社の市場価値は約561億ドルに達し、2024年第4四半期には収益が前年同期比5%増の14億ドルとなるなど、堅調な成長を遂げている。しかし、関税の影響がデータセンター設備の拡張コストを押し上げる可能性があり、今後の業績に不透明感が漂う。
DLRの株価は2024年に約26.5%上昇したものの、2025年に入ると下落に転じた。S&P500が年初来で4.5%上昇する中で、DLRの株価は3.6%の下落を記録している。これは、関税政策による供給網の混乱やコスト増が投資家の懸念材料となっているためと考えられる。
一方で、ウォール街のアナリストは依然としてDLR株に対して強気の姿勢を維持している。26人のアナリストのうち、18人が「強気の買い(Strong Buy)」、1人が「中程度の買い(Moderate Buy)」を推奨し、平均目標株価は189.20ドルとされている。これは、現在の株価水準から約11.6%の上昇余地があることを示唆している。しかし、短期的には関税の影響を受ける可能性が高く、市場の評価が今後どのように変化するかが注目される。
関税政策によるデータセンター業界の展望と今後の戦略
トランプ前大統領の関税強化は、データセンター業界にとって新たな課題を生み出した。特に、変圧器の供給不足による拡張計画の遅延やコスト増は、業界全体の成長を鈍化させる要因となる可能性がある。
Digital Realty Trustを含む主要なデータセンター運営企業は、こうした影響を最小限に抑えるための戦略を模索する必要がある。例えば、鉄鋼やアルミニウムに依存しない代替技術の導入、調達ルートの多様化、リース契約の見直しなどが挙げられる。また、政府の政策変更の可能性を見極めつつ、中長期的な成長戦略を再構築することも求められる。
データセンター業界は、AIやクラウドの需要拡大により引き続き成長が期待される分野である。しかし、今回の関税政策が示すように、外部環境の変化によってリスクが顕在化する可能性もある。企業にとっては、短期的な業績の変動に一喜一憂するのではなく、長期的な視点でリスク管理と成長戦略を両立させることが求められるだろう。
Source:Barchart.com