米国防衛関連株は2月20日の市場オープン時に軒並み下落した。これは、トランプ前政権が国防総省に対し、今後5年間で年間8%の予算削減を指示したとの報道を受けたものだ。ロバート・サレッセス国防副長官によれば、約500億ドルの削減が実施され、その資金は「トランプ大統領の優先事項に沿ったプログラム」に再投資される予定である。
この発表の影響を大きく受けた銘柄の一つがPalantir Technologies(PLTR)である。同社の株価はこの日、10%の下落となった。しかしWedbush Securitiesのダン・アイヴス氏は、国防総省のIT予算の再配分によりPalantirが恩恵を受ける可能性が高いと指摘。AIを活用した「ミッション・クリティカル」なプログラムへの資金流入が、同社の成長を加速させるとの見解を示した。WedbushはPalantir株の「買い」評価を維持し、目標株価を120ドルと設定。現在の株価水準から約20%の上昇余地があるとしている。
国防予算の再配分とPalantirの戦略的優位性
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トランプ前政権の方針により、国防総省の予算は今後5年間で年間8%削減される。これは一見、防衛関連企業にとってマイナス要因に映るが、実際には再配分による新たな成長機会を生む可能性がある。特にPalantir Technologiesは、同省のIT支出において強い競争力を持ち、削減された予算の一部を獲得する立場にある。
Palantirの強みは、AIやデータ解析技術を活用し、国防や諜報機関向けに高度なソリューションを提供できる点にある。今回の予算削減は、優先度の低いプロジェクトを削り、「ミッション・クリティカル」とされるプログラムに重点を置く形で進められる。これにより、データ主導の意思決定を強化する技術の需要が高まる可能性がある。
また、AIを活用した作戦指揮やサイバーセキュリティの分野では、効率的な予算活用が求められる中で、Palantirのようなソフトウェア企業が持つ分析力が評価されやすい。Wedbushのダン・アイヴス氏が指摘するように、同社は国防総省のIT予算の中核を担う可能性があり、市場の懸念とは逆に追い風となる展開が期待される。
Palantirの成長を支える業績動向と市場評価のギャップ
Palantirは直近の決算で市場予想を上回る成績を記録した。2023年第4四半期の決算では、1株当たり利益(EPS)が14セントとなり、予想の11セントを超えた。売上高も8億2800万ドルに達し、アナリスト予測の7億7500万ドルを上回った。さらに、2025年通期の売上高見通しは37億4000万ドルとされ、市場コンセンサスの35億2000万ドルを超える強気の数字が示されている。
このような好調な業績にもかかわらず、市場の評価は必ずしも一枚岩ではない。WedbushがPalantirの目標株価を120ドルに設定し、約20%の上昇余地を見込む一方で、市場の平均目標株価は82ドルにとどまる。バリュエーション(株価評価)の高さが懸念され、コンセンサス評価は「ホールド(中立)」にとどまっている点がその要因と考えられる。
株価は2月20日の取引で10%下落したものの、年初来で30%以上の上昇を記録しており、市場の期待が完全に後退したわけではない。短期的なボラティリティの中で、成長を継続できるかが今後の焦点となる。
国防関連市場での競争とPalantirの将来展望
国防関連市場は、政府の政策変更によって大きく左右されるが、近年のトレンドとしてAIやデータ解析を活用した戦略的意思決定の重要性が増している。これにより、従来の防衛装備企業に加え、ソフトウェアを提供する企業が主導権を握る可能性が高まっている。
Palantirは、政府機関との長年の契約実績を持ち、データ統合と解析技術で高い評価を受けている。同社は単なるソフトウェア開発企業ではなく、国家安全保障の枠組みの中で欠かせない存在となっている。今回の国防予算の削減により、同社の技術が再評価される可能性があり、結果として競争優位性が強化されると考えられる。
今後の課題として、バリュエーションの高さと市場の期待とのギャップをどのように埋めるかが注目される。業績成長が続けば、短期的な市場の懸念を払拭し、長期的な成長軌道を描くことができるかもしれない。国防市場におけるデジタル化の波を捉え、どのように競争を優位に進めるかが、今後の鍵となるだろう。
Source:Barchart