アマゾン(AMZN)はeコマースの巨人として知られるが、その成長の原動力はそれだけにとどまらない。クラウドコンピューティングのAWS、AI技術の開発、広告事業の拡大、さらには原子力分野への進出など、多角的なビジネス戦略を展開し、テクノロジー業界を牽引している。
2023年第4四半期にはAWSの売上が288億ドルに達し、全体の売上高は前年同期比10%増の1,878億ドルを記録した。広告事業も成長を続け、AIを活用した新技術の導入により、さらなる収益拡大が見込まれる。一方で、2025年第1四半期の業績見通しが慎重なものとなったことから、株価は一時的に下落したが、長期的な成長余地は依然として大きい。
ウォール街のアナリストの大半は、アマゾン株を「強い買い」と評価し、目標株価は現在の水準から最大35%の上昇余地があると予測する。短期的な市場の変動はあるものの、AIやクラウドを中心とした成長戦略が「マグニフィセント7」の中でも際立つ存在となっており、長期投資家にとって魅力的な選択肢となり得るだろう。
クラウド市場での優位性とAI投資の相乗効果

アマゾンの成長を支える大黒柱は、クラウド事業の**Amazon Web Services(AWS)**である。2023年第4四半期にAWSの売上は288億ドルに達し、利益率も30%台後半と高水準を維持した。特に、人工知能(AI)の普及が進む中で、AWSはそのインフラとして不可欠な存在となりつつある。
生成AIの需要拡大に対応し、同社はAI向けのカスタムチップ「Trainium」や「Inferentia」を開発。加えて、クラウドベースのAI開発環境「Amazon Bedrock」を提供し、企業がAIモデルを効率的に構築・運用できる環境を整えている。
このAI分野への投資は、AWSの成長をさらに加速させる可能性がある。AI関連のクラウド需要が拡大する中、AWSの顧客基盤は広がりを見せており、競争力を高める要因となっている。さらに、アマゾンはAIアシスタント「Amazon Q」を発表し、ビジネス向けのAIソリューション市場への参入を本格化させた。こうした動きは、クラウド市場における同社のリーダーシップを強固なものにするだろう。
しかし、AI投資には短期的な利益率の圧迫という課題も伴う。最高財務責任者(CFO)のブライアン・オルサヴスキー氏も、AI関連の研究開発と設備投資が一時的なコスト増につながる可能性を指摘している。だが、AWSの利益率が長期的に改善する見通しが示されていることから、アマゾンのクラウド事業はAI時代においてますます重要な役割を果たしていくと考えられる。
広告事業の拡大とプライム会員の相乗効果
アマゾンの広告事業は急成長を遂げており、2023年第4四半期の売上は173億ドルに達した。前年比18%の成長を記録し、過去4年間で売上が2倍に拡大している。Eコマースと連携した広告戦略が功を奏しており、特にAIを活用したターゲティング技術の進化が収益向上を支えている。アマゾンは広告主向けに高度な分析ツールを提供し、消費者の購買行動をより的確に把握できる環境を整えている。
プライム会員の存在も広告事業の成長を後押ししている。アマゾンは会員限定のショッピングイベントや特典を活用し、消費者のエンゲージメントを高めている。2023年の北米セグメントの売上は1,156億ドルに達し、前年同期比10%増加した。この成長は、プライム会員の増加やEコマースの競争力向上によるものと考えられる。
今後の広告事業の成長には、AIのさらなる活用が鍵を握る。アマゾンはすでに1,000を超える生成AIアプリケーションを開発中であり、広告のパーソナライズや効率化に取り組んでいる。競合他社と比較しても、アマゾンは広告プラットフォームとしての影響力を高めており、Eコマース、クラウド、AI技術とのシナジーによって、今後さらなる収益拡大が期待される。
短期的な業績懸念と長期的な成長見通し
アマゾンの2025年第1四半期の業績見通しは、市場予測をやや下回る慎重なものとなった。売上高は1,510億~1,555億ドル(前年同期比5~9%増)とされており、成長率の鈍化が懸念されている。これを受け、決算発表後に株価は若干の下落を見せた。しかし、アナリストの評価は依然として強気であり、50人中45人が「強い買い」との見解を示している。
短期的な市場の変動はあるものの、アマゾンの成長ストーリーに大きな変化は見られない。AI、クラウド、広告事業の拡大に加え、物流インフラや原子力エネルギー分野への投資も進めており、今後数年間で事業基盤のさらなる強化が期待される。2025年の年間売上は9.6%増、利益は14.3%増加すると予測され、2026年には売上高10.4%、利益19.7%の成長が見込まれている。
株価の割安感についても意見が分かれる。現在の株価収益率(P/Eレシオ)は2025年予想利益の35倍とやや高めに見えるが、成長性を考慮すると適正範囲内と判断する向きもある。短期的なボラティリティを許容できる投資家にとっては、アマゾン株の押し目を狙う好機となるかもしれない。
Source:Barchart.com