米国PIRGの最新の調査によると、AppleとLenovoのラップトップは修理のしやすさに関するスコアで最下位を記録した。一方、AsusとAcerは最も修理しやすいデバイスを提供していると評価された。Appleは昨年よりスコアを向上させたものの、依然として業界の平均を大きく下回っている。

特に分解のしやすさに関しては、Appleは最低水準にとどまり、部品の入手しにくさも課題として指摘された。しかし、Appleは修理の権利を巡る法案を支持し始めるなど、方針転換の兆しを見せている。今後、消費者の修理意識の高まりが各社の製品設計や販売戦略にどのような影響を与えるかが注目される。

Appleの修理容易性スコアはなぜ低いのか

Appleのラップトップが修理しにくいと評価された背景には、設計やパーツ供給の問題がある。まず、Appleは一体型のデザインを採用しており、多くの部品が基板に直接接続されているため、単独での交換が難しい。バッテリーやSSD、メモリが取り外しにくいことが修理コストの増加を招いている。

加えて、特定のネジや接着剤を多用することで、ユーザーや第三者業者による修理を妨げる要因となっている。また、修理に必要な部品の価格や供給もAppleのスコアに影響を与えた。Appleは公式の修理プログラムを提供しているが、正規の部品が高価であることや、非正規修理店では入手が困難なことが指摘されている。

さらに、部品のシリアル番号がデバイス本体と紐づけられているため、互換性のある部品を用いた修理が制限されるケースも多い。この仕組みは正規ルート以外の修理を抑制するが、消費者の選択肢を狭める結果となっている。

しかし、Appleも修理容易性向上に向けた施策を打ち出し始めた。特に「セルフサービス修理プログラム」の導入は、ユーザーに正規の部品と修理マニュアルを提供する試みである。さらに、カリフォルニア州の修理する権利法案への支持を表明したことで、同社の修理ポリシーは徐々に変化しつつある。この動きが今後の製品設計にどのように反映されるのか、引き続き注視する必要がある。

修理の権利とメーカーの戦略 Appleの方針転換の意味

Appleが修理の権利に対して長年慎重な姿勢をとってきたのは、自社のエコシステムを維持する戦略の一環であった。Appleはハードウェアとソフトウェアを密接に統合することで、他社との差別化を図ってきた。この戦略により、修理プロセスを独自のルールで管理し、Apple Storeや正規サービスプロバイダーでの修理を推奨してきた。

しかし、消費者の権利を拡大する動きが各国で加速する中、Appleも方針の見直しを迫られている。特に、カリフォルニア州で可決された修理する権利法案は、メーカーに修理情報や部品の提供を義務付けるものであり、Appleにとっては大きな転換点となった。

これまで修理情報の開示を制限していた同社が法案を支持した背景には、規制への対応だけでなく、企業イメージの向上や市場環境の変化への適応があると考えられる。一方、修理する権利の拡大がすぐに製品の設計に大きな影響を与えるかどうかは不透明である。

Appleは依然として自社のデザイン理念を優先し、製品の薄型化や耐久性の向上を重視している。修理のしやすさをどこまで受け入れるかは、今後の市場動向や消費者の声によって左右されるだろう。

修理容易性が今後のPC市場に与える影響

修理容易性の問題は、PC市場全体にも広がりを見せている。AsusやAcerが高評価を得たことからも分かるように、消費者の関心は修理のしやすさに向かいつつある。特に、経済環境が不安定な状況では、新品の購入ではなく既存のデバイスを長期間使用する選択肢を取るユーザーが増えると考えられる。

この傾向が強まれば、修理しやすい製品を提供するメーカーが市場での競争力を高める可能性がある。また、関税や部品供給の問題がPC市場に影響を与える中、修理しやすいモデルがより求められる局面も訪れるだろう。ラップトップの価格が高騰すれば、ユーザーは修理可能なデバイスを選び、寿命を延ばそうとするからである。

そのため、メーカー側も修理容易性を訴求点の一つとし、設計やサポート体制の見直しを行う動きが加速する可能性がある。この流れの中で、AppleやLenovoのように修理スコアが低いメーカーがどのような対応を取るかが注目される。

Appleは既に修理ポリシーの変更を進めているが、製品設計そのものに変化を加えるのかは未知数である。一方で、修理のしやすさを武器にするAsusやAcerは、競争優位性を高めるためにさらなる改良を行う可能性がある。修理容易性の評価が、今後のPC市場の勢力図を変える要素となるかもしれない。

Source:Ars Technica