ビットコインの価格は2月6日以降、98,000ドルの水準を維持できず、一部のアナリストは市場操作の可能性を指摘している。特に、スポット・ビットコインETFが大口投資家によって利用され、価格を意図的に下げているとの見方があるが、その実態は明確ではない。

市場の不透明性を強調するのは、テクニカルアナリストのJames CryptoGuruであり、彼はビットコインETFがレバレッジを利用するトレーダーの清算を狙った動きに利用されていると主張する。また、仮想通貨市場では、ボットを駆使した取引戦略や大口投資家の動きが相場の変動を加速させていることも事実だ。

ただし、こうした市場のダイナミクスは必ずしも違法ではなく、金融市場全体においても同様の現象が見られる。伝統的な運用会社が市場に与える影響や、アルゴリズム取引の役割を考慮すると、仮想通貨市場における価格変動の要因は単純ではない。価格操作の可能性は議論の余地があるものの、それが市場全体に与える影響や持続性については慎重に検証する必要がある。

ビットコインETFと市場操作疑惑の核心とは

ビットコインのスポットETFが市場操作に利用されているとする主張は、James CryptoGuruなどのアナリストによって提起されている。彼の見解によれば、大口投資家がETFを活用し、価格を意図的に下落させることでレバレッジを利用したトレーダーを清算し、より安価な価格でビットコインを取得しているという。このような戦略が実行されている場合、市場の透明性や健全性に疑問が生じることは避けられない。

一方で、スポットETFの導入によって市場が成熟し、より多くの機関投資家が参入したことも事実である。従来、仮想通貨市場はボラティリティが高く、規制の枠外で取引が行われることが多かった。しかし、ETFは規制された金融商品であり、SEC(米証券取引委員会)の監督下にある。そのため、価格操作が常態化していると断定することは難しい。

また、ビットコインの価格は短期的な需給バランスだけでなく、マクロ経済の影響も受ける。特に、米国の金利政策やインフレ動向が仮想通貨市場に与える影響は大きい。市場操作が疑われる場面があったとしても、それが本当にETFによるものなのか、それとも経済環境の変化によるものなのかを見極める必要がある。

大口投資家とボット取引が市場に与える影響

市場操作の議論と並行して、仮想通貨市場ではボット取引の影響も無視できない。アナリストのVincent Van Codeは、クジラ(大口投資家)が高度なボットを用いて市場を動かしていると指摘する。彼の主張によれば、1億ドル規模の資金が特定のタイミングで投入され、BTCの価格を意図的に上下させている可能性があるという。

ボット取引は、従来の金融市場でも活用されており、株式市場でも高頻度取引(HFT)が市場の流動性を高めている。しかし、仮想通貨市場では規制が未整備な部分も多く、大口投資家の取引が一般投資家に不利な影響を与えるケースも考えられる。例えば、大量の売り注文を出して価格を下げた後に買い戻す「スプーフィング」や、特定の水準で売買を繰り返しながら市場を誘導する「ウォッシュトレード」などの手法が議論されてきた。

また、仮想通貨市場の特徴として、個々のトークンの価格がビットコインに強く連動する点も挙げられる。BTCが下落すると、アルトコイン市場全体が追随し、相場全体のセンチメントが急激に悪化することが多い。そのため、大口投資家によるBTCの価格操作が事実であれば、それが市場全体に広がる影響は甚大だ。

仮想通貨市場の透明性向上と規制の課題

こうした市場操作の疑惑が浮上する中、仮想通貨市場の透明性向上が急務となっている。すでに伝統的な金融市場では、大手資産運用会社であるバンガード、ブラックロック、フィデリティ、キャピタル・グループなどが市場に大きな影響を与えているが、それらの活動は厳格な規制のもとで監視されている。一方、仮想通貨市場は規制の枠組みが整っておらず、透明性の確保が十分でない。

例えば、2024年10月には、カナダのトロント・ドミニオン銀行(TD Bank)の米国ブローカーユニットが、米国国債市場の操作疑惑で2,000万ドル超の罰金を支払うことで和解した。このような事例が伝統的な市場で発生していることを考えれば、仮想通貨市場においても規制が強化される可能性は高い。

しかし、規制が強まれば、仮想通貨の本来の特性である分散性や自由な市場取引が損なわれるとの懸念もある。特に、中央集権的な管理が強まることで、大口投資家や政府機関が市場をコントロールすることになれば、仮想通貨が目指していた「非中央集権的な金融」の理念が揺らぐことになる。

今後、SECをはじめとする各国の規制当局がどのような対応を取るかによって、仮想通貨市場の行方は大きく変わるだろう。市場操作の疑惑が解明されることで透明性が向上すれば、より多くの投資家が安心して参入する環境が整う可能性もある。一方で、過度な規制が市場の活力を奪うことになれば、仮想通貨の未来にとって新たな課題となる。

Source: Cointelegraph