ビットコインを長期的な価値保存手段とする主張が再び注目を集めている。MicroStrategyの共同創業者であるマイケル・セイラーは、インフレや資産の減価によって毎年失われる15兆ドルの富を、ビットコインが吸収できると主張する。

彼は、政府や企業の政策、税制、規制、さらには戦争や地政学的リスクといった要因が資産を脅かす中で、ビットコインがデジタル資本として優れた代替手段になり得ると強調する。さらに、2045年までにビットコインの市場価値が200兆ドルに達する可能性があると予測する。

セイラーの率いるMicroStrategyはすでに約40万2,000BTCを保有し、ビットコインを主要な財務資産として位置づけている。彼は他の企業にも同様の財務戦略を採用するよう提案しており、ビットコインの将来的な役割に対する議論が加速している。

ビットコインが富の流出を防ぐとするセイラーの主張

マイケル・セイラーは、ビットコインが世界経済における富の流出を抑える可能性があると主張している。彼によれば、現在の金融システムでは、インフレや政府の政策変更、税制、地政学的緊張などによって年間15兆ドルもの資産が失われている。この課題に対し、ビットコインは「適切に設計された価値の保存手段」として機能し得るという。

彼の理論の根底には、ビットコインの希少性と分散性がある。ビットコインの供給量は2100万枚と決まっており、政府が発行量を調整することはできない。そのため、中央銀行が通貨を発行し続ける現行の金融システムとは異なり、インフレによる資産価値の目減りを防ぐことができるという。さらに、ビットコインは国境を越えて移動可能であり、政府の規制や制約を受けにくいデジタル資産としての特徴を持つ。

一方で、ビットコインが実際に15兆ドルの富を吸収するかは不確定である。価格の変動が大きく、規制の枠組みが各国で異なることもリスク要因となる。現時点では、企業や投資家の間でビットコインの役割がどこまで拡大するのかが焦点となっており、長期的な価値保存手段としての評価が確立するには時間を要するだろう。

MicroStrategyの戦略と企業財務への影響

セイラーが共同創業したMicroStrategyは、ビットコインを主要な財務資産とする独自の戦略を展開している。同社は現在、約402,000BTCを保有しており、その価値は数十億ドル規模に達している。企業の財務戦略としてビットコインを活用する例は他にもあるが、MicroStrategyほど大規模に導入している企業は少ない。

この戦略の背景には、法定通貨のインフレリスクがある。特に、近年の米国をはじめとする各国の金融政策は、大量の通貨供給を伴い、資産の価値減少を招いている。そのため、MicroStrategyはビットコインを「デジタル資本」と位置づけ、長期的な資産保全の手段と考えている。しかし、ビットコインのボラティリティの高さは、企業財務にとって大きなリスクとなる可能性もある。

企業がビットコインを財務資産として活用する場合、リスク管理の観点から慎重な判断が求められる。価格の急激な変動や各国の規制の変更によって、企業の財務に影響を与える可能性があるためだ。MicroStrategyの戦略が他の企業に波及するかどうかは、今後の市場環境や法規制の動向によって大きく左右されるだろう。

ビットコイン市場の成長予測とその不確実性

セイラーは、ビットコインの市場価値が2045年までに200兆ドルに達すると予測している。これは現在の市場規模と比較すると桁違いの成長を示す数字であり、もし実現すれば金融市場に大きな影響を与えることになる。彼の予測は、デジタル資産が今後さらに普及し、ビットコインの採用が加速することを前提としている。

この成長予測の根拠の一つは、法定通貨の価値が低下し続けることへの懸念である。インフレによる購買力の低下や、政府が発行する通貨の信用リスクが高まる中で、代替資産としてのビットコインの需要が拡大すると考えられている。また、機関投資家の参入や企業の資産配分にビットコインが組み込まれることで、市場規模が拡大する可能性もある。

しかし、この予測には多くの不確実性がある。ビットコインの規制強化や、新たなデジタル通貨の登場、技術的課題が成長を妨げる可能性もある。市場の成熟とともに価格変動が安定する可能性はあるが、200兆ドルという規模に達するためには、グローバルな金融システム全体の変革が必要となるだろう。

Source:TheStreet