量子コンピューティング分野で注目を集めるリゲッティ・コンピューティング(RGTI)が、大きな転機を迎えようとしている。米国防総省の研究機関である国防高等研究計画局(DARPA)の「量子ベンチマーキング」契約の授与が2月に予定されており、これが同社の成長に大きな影響を与える可能性がある。この契約は7年間で3億ドル規模とされ、高忠実度の量子ビットシステムの開発を支援するものだ。
リゲッティは2024年、量子コンピューターの忠実度99.5%を達成するなど技術的進展を遂げた。しかし、収益は前年同期比23%減少し、赤字経営が続いている。一方で、同社の株価は過去1年間で595%、直近6か月では1,040%の急騰を記録しており、市場は将来の成長に期待を寄せている。
アナリストの間では、リゲッティがDARPA契約を獲得する可能性が高いとの見方が強く、技術評価の向上とともに、株価の上昇余地も大きいとされる。今後、2025年には100量子ビット超のシステムを発表予定であり、商業化に向けた動きが加速する見込みだ。
DARPA契約がもたらす影響 リゲッティの競争優位性とは
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リゲッティ・コンピューティング(RGTI)が注目を集める背景には、米国防総省傘下の国防高等研究計画局(DARPA)による「量子ベンチマーキング」契約がある。この契約は7年間で3億ドル規模とされ、高忠実度かつエラー補正可能な量子ビットシステムの開発を推進するものだ。DARPAの支援を受けることで、リゲッティは研究開発資金の確保と技術的な信頼性の向上を同時に得ることができる可能性がある。
特に重要なのは、リゲッティがこの契約を獲得すれば、国防総省(DoD)との関係を強化できる点である。国防用途における量子技術の進展は、サイバーセキュリティ、通信、暗号解読といった戦略的分野で極めて大きな価値を持つ。仮にリゲッティがこの契約を通じて軍事・政府向け市場に足がかりを築けば、民間企業との商業契約獲得にもつながる可能性がある。
一方で、同業他社もDARPA契約の獲得を狙っており、競争は熾烈である。IBMやグーグルといった大手企業は、リゲッティよりもはるかに潤沢な資金と人的資源を持ち、量子技術の研究開発を加速させている。これに対し、リゲッティはフルスタックの量子・古典ハイブリッドコンピューティングという独自のアプローチを持つ点が強みとなる。この技術が評価されれば、DARPA契約の獲得はもちろん、他の政府機関や民間企業との提携拡大にも寄与する可能性がある。
株価急騰と高バリュエーション 投資家の期待とリスク
リゲッティの株価は2024年に入り急騰し、過去1年間で595%、直近6か月では1,040%もの上昇を記録した。これは、量子コンピューティングという成長市場に対する期待の高まりと、同社の技術進展によるものと考えられる。特に、量子コンピューターの忠実度99.5%達成という成果は、技術的信頼性の向上を示すものであり、市場の評価に大きく寄与している。
しかし、株価の急上昇には高いバリュエーションというリスクも伴う。現在、リゲッティの株価収益倍率(P/Sレシオ)は280.68倍に達しており、業界の中央値3.27倍と比較すると極端に高い。これは、市場が同社の将来性を織り込んでいることを示しているが、短期的な業績悪化や成長鈍化があれば、大幅な調整を強いられる可能性もある。
また、2024年第3四半期の決算では、収益が前年同期比23%減少し、純損失が1,480万ドルに達した。これは同社が依然として成長段階にあり、研究開発費の負担が大きいことを示している。しかし、1株当たり損失は前年の0.17ドルから0.08ドルへと改善しており、財務基盤は依然として安定している。投資家にとっては、技術進展による将来的な収益化と、短期的な損失拡大のバランスを慎重に見極めることが求められる。
今後の技術開発と商業化に向けた展望
リゲッティは今後の技術開発計画として、2025年に新たなモジュラーシステムアーキテクチャを導入し、年央には36量子ビット、年末までには100量子ビット超のシステムを発表する予定である。さらに、その後数年間で336量子ビットの「Lyra」システムの開発を目指しており、これが実現すれば量子優位性の実証に向けた重要なステップとなる。
量子コンピューターの商業化においては、技術的な進歩だけでなく、市場の受容性も大きな要因となる。現時点では、量子コンピューターは主に研究用途や特定の計算分野に限定されているが、今後はクラウドサービスとの統合や、特定業界向けのアプリケーション開発が求められる。リゲッティは、既存の古典コンピューターとのハイブリッド型ソリューションを提供することで、企業の導入障壁を下げる戦略をとっており、これは市場拡大の鍵となる可能性がある。
一方で、商業化に向けた課題も多い。高忠実度を維持しつつ、大規模な量子ビット数を実装することは技術的に難しく、競合とのスピード競争も激化している。特にIBMやグーグルなどの大手企業は、独自の量子技術をすでに商業化しており、リゲッティが市場での優位性を確立するには、技術開発と市場戦略の両面で確実な成果を出す必要がある。
今後、DARPA契約の行方、技術の進化、そして商業化戦略がリゲッティの成長を左右する要因となる。量子コンピューターの実用化が本格化する中で、同社がいかに市場に適応し、競争力を維持するかが問われている。
Source: Barchart.com