量子コンピューティングの分野で躍進を続けるリゲッティ・コンピューティング(RGTI)が、新たな軍事関連契約の獲得を目前にしている。米国防高等研究計画局(DARPA)が進める「量子ベンチマーキング」契約の授与が2月に予定されており、この契約は7年間で総額3億ドル規模と見積もられる。リゲッティは99.5%の忠実度を達成するなど技術面での進歩を遂げており、専門家の間では同社が契約獲得において有力候補であるとの見方が強まっている。
市場ではリゲッティ株への期待が高まり、直近6か月で1,040%の上昇を記録した。しかし、売上高に対するバリュエーションは280倍を超え、投資家の評価が過熱している可能性も指摘される。一方で、2025年には100量子ビット超のシステムを発表し、その後336量子ビットの開発へと進む計画が明らかにされている。量子コンピューティング技術が軍事・商業の両面でどのように進化するのか、その行方に注目が集まる。
DARPA契約がもたらすリゲッティ・コンピューティングへの影響

米国防高等研究計画局(DARPA)が進める「量子ベンチマーキング」契約は、量子コンピュータの実用化を加速させる可能性がある。リゲッティ・コンピューティング(RGTI)はこの契約の有力候補と目されており、契約獲得が同社に与える影響は極めて大きい。
まず、この契約は7年間で総額3億ドル規模とされ、リゲッティがこれを獲得すれば長期的な資金確保と技術開発の加速が期待される。特に、高忠実度でエラー補正可能な量子ビットシステムの開発が主な目的とされており、99.5%の忠実度を達成したリゲッティの技術力が評価される形となる。
また、軍事関連の契約獲得は、同社の信用力向上にも直結する。政府機関の技術検証を経ることで、その技術は民間市場にも波及しやすくなり、企業間の提携や追加投資の呼び水となる可能性がある。現在のリゲッティ株の評価は高水準にあるものの、今後の事業展開によっては実績が伴い、市場の期待を現実の成長へと転換できるかが問われることになる。
急成長するリゲッティ株 過熱する評価のリスク
リゲッティ・コンピューティングの株価は、2024年に急騰し、過去6か月で1,040%の上昇を記録した。特に、S&P500の23%上昇と比較すると、その勢いが異例であることが分かる。しかし、こうした急成長は高リスクの側面もはらんでいる。
現在のリゲッティ株は、将来の売上高の280倍という驚異的なバリュエーションで取引されており、業界の中央値である3.27倍を大幅に上回っている。この数値は、投資家が同社の将来成長を極めて高く見積もっていることを示す一方、業績が期待に追いつかない場合の反動も大きくなり得る。
2024年第3四半期の決算では、総収益が前年同期比で23%減少し、予想を下回る結果となった。営業費用は1,860万ドルに達し、純損失は1,480万ドルとなったが、1株当たり損失は前年の0.17ドルから0.08ドルへと改善している。投資家の関心は同社の将来性に集中しているが、収益構造が改善しなければ、株価の変動リスクは一層高まると考えられる。
量子コンピューティングの実用化とリゲッティの今後
リゲッティは今後、技術開発の進展を通じて市場での存在感を強める戦略を掲げている。2025年には36量子ビットのシステムを発表し、年末までに100量子ビット超のシステムを投入する予定である。さらに、336量子ビットの「Lyra」システムの開発を進めており、商業レベルでの量子コンピューティングの実用化を視野に入れている。
量子コンピュータの発展は、金融、製薬、軍事分野など多岐にわたる産業へ影響を及ぼすと考えられている。特に、暗号解読や最適化問題の解決において、従来のコンピュータを凌駕する可能性があり、政府や大手企業の関心は高い。一方で、技術の成熟には依然として時間を要するとされており、量子優位性の達成が限定的な範囲にとどまる可能性もある。
リゲッティの成長は技術革新と市場の期待によって支えられているが、持続的な成長には安定した収益基盤の確立が不可欠である。DARPA契約の獲得や量子ビットの拡張が、単なる市場の期待ではなく、実際のビジネス価値へと結びつくかが今後の焦点となるだろう。
Source: Barchart.com