テスラ(TSLA)の株価が波乱の展開を見せている。2024年の米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利した直後、同社株は91%上昇したが、2025年に入ると約10%下落した。投資家は業績不振や米中関係の影響、さらにはイーロン・マスク氏の政治関与に不安を抱いている。
一方で、ウェドブッシュ証券のダン・アイヴス氏はテスラ株に強気の見解を示し、12か月以内に52%上昇する可能性があると指摘する。その根拠として、自動運転技術を含むAI事業への注力や、トランプ政権による規制緩和がもたらす1兆ドル規模の市場機会を挙げている。
短期的な懸念があるものの、テスラはAI企業への転換を加速させており、今の株価下落は長期投資家にとって魅力的な買い場となる可能性がある。
テスラ株の変動要因 トランプ政権の影響とEV市場の現状
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テスラ株は2024年の米大統領選挙後、91%の急騰を記録したが、その後10%の下落に見舞われた。この劇的な変動の背景には、トランプ政権の政策とEV市場の競争激化が大きく関係している。
トランプ氏の勝利が発表されると、市場は自動車業界の規制緩和を期待し、特にテスラの自動運転技術(FSD)の推進にとって追い風になると見られた。しかし、2025年に入ると、新政権が関税強化に踏み切ったことで市場心理が変化し、中国市場での成長に不透明感が生じた。テスラは世界最大のEV市場である中国に大きく依存しており、米中関係の悪化が直接的なリスクとなっている。
また、テスラの2024年第4四半期の業績は期待を下回り、EV販売台数が前年比6%減少した。中国市場での競争は激化しており、BYDなどの地場メーカーが価格攻勢を強め、シェアを奪いつつある。これらの要因が重なり、投資家の間で短期的な不安が高まった。一方で、EV事業以外の分野ではエネルギー貯蔵やサービス部門が好調であり、テスラの事業構造が徐々に変化していることも注目されるべき点である。
短期的な業績の乱高下があるものの、テスラの根本的な競争優位性が失われたわけではない。自動運転技術を中心としたAI領域へのシフトが進む中で、テスラの成長をどの視点で評価するかが、今後の株価動向を判断するうえで重要となる。
テスラのAI戦略 自動運転とヒューマノイドロボットが成長の鍵
テスラは自動車メーカーとしての側面にとどまらず、人工知能(AI)企業としての地位を確立しつつある。イーロン・マスク氏は直近の決算説明会で、AIを軸とした成長戦略を強調しており、特に自動運転技術(FSD)とヒューマノイドロボット「Optimus」の開発に注力している。
FSDはテスラの中核技術の一つであり、すでに一部の地域ではベータ版が展開されている。2025年6月にはテキサス州オースティンで無監視型の完全自動運転サービスを開始予定であり、これが成功すれば自動運転市場の大きな転換点となる可能性がある。さらに、トランプ政権下での規制緩和が進めば、他の州への展開も加速することが期待される。
また、ヒューマノイドロボット「Optimus」は労働市場の変革を促す可能性を秘めている。テスラはこのロボットを工場や物流センターで活用する計画を持ち、人手不足の解消や生産性向上を狙っている。これまでの事業とは異なる分野への進出であり、新たな収益源としての期待が高まっている。
これらのAI技術への投資は、テスラの企業価値を再定義する可能性がある。自動車メーカーとしての評価にとどまらず、AI企業としての成長を見込む視点が、今後の株価評価において重要になっていくだろう。
長期投資の視点 テスラ株は今が買い時か
短期的な株価の乱高下にもかかわらず、テスラの成長ストーリーは変わっていない。ウェドブッシュ証券のダン・アイヴス氏は、テスラの自動運転技術が1兆ドル規模の市場を生み出す可能性を指摘し、12か月以内に株価が550ドルへ上昇すると予測している。
アイヴス氏の予測の背景には、規制緩和によるFSD事業の拡大と、AI分野への本格的なシフトがある。テスラが今後、AI企業としての評価を確立すれば、株価のさらなる上昇余地が生まれるだろう。一方で、EV販売の低迷や米中関係の変化が逆風となるリスクも否定できない。
過去の成功例を振り返ると、NvidiaやApple、Netflixのような企業は、市場の変化に適応しながら成長を遂げてきた。テスラも同様に、短期的な不安定要因を乗り越え、新たな市場を開拓できるかが鍵となる。今の株価下落を一時的な調整と捉えるか、長期的な成長機会と見るかによって、投資判断は大きく変わるだろう。
Source: The Motley Fool