米投資会社バークシャー・ハサウェイが、日本の総合商社5社に対する出資比率を引き上げる見通しを示した。伊藤忠商事、丸紅、三菱商事、三井物産、住友商事の5社は、バークシャーの持ち株比率を10%未満に抑える制限を一部緩和することで合意。これにより、同社は今後さらに出資を拡大する可能性が高まった。

2024年末時点で、バークシャーの日本商社株への投資総額は235億ドルに達している。ウォーレン・バフェットは株主向けの年次書簡で、商社の資本配分や経営姿勢を高く評価し、今後も長期的に関係を深化させる考えを示した。また、CEO後継者とされるグレッグ・アベルも、同ポジションを「何十年にもわたり維持する」方針を示している。

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バークシャーは2019年から日本の商社株を取得し始め、2020年には5%の出資を公表。その後も保有を増やし、現在は138億ドルを投じている。2025年には配当収入が8億1200万ドルに達する見込みだ。これまで低評価だった商社株に目をつけたバークシャーの動きは、市場における投資戦略の新たな潮流を示唆している。

バークシャーの日本商社投資戦略 資本効率と長期視点の融合

バークシャー・ハサウェイは、日本の総合商社5社に対し長期的な資本提携を進める姿勢を鮮明にした。ウォーレン・バフェットは、伊藤忠商事、丸紅、三菱商事、三井物産、住友商事への出資比率を引き上げる方針を示し、各社も持ち株制限の一部緩和に応じた。この背景には、バークシャーの投資哲学と、商社の資本効率の高さがあると考えられる。

総合商社は、資源や物流、金融を含む多角的な事業展開を行い、世界経済の変動にも強い収益構造を持つ。一方、バークシャーは安定したキャッシュフローを生む企業を重視し、短期的な市場の動きに左右されない投資を志向する。これらの要素が合致したことで、今回の持ち株比率拡大につながったとみられる。さらに、株主還元の強化を進める商社側の姿勢も、バークシャーの長期投資の考え方と一致している。

2019年からの積極投資 商社株の評価変化とバークシャーの判断

バークシャー・ハサウェイが日本の商社株に着目したのは2019年に遡る。当時、商社は低PER(株価収益率)・低PBR(株価純資産倍率)で推移しており、割安感が強かった。一方で、事業の安定性や資本効率の高さが評価されることは少なく、市場では「バリュートラップ(割安に見えるが成長が見込めない)」と見なされることもあった。しかし、バフェットはこれを「良い価値投資」と判断し、2020年に5%の保有を公表。その後も持ち株比率を増やし続けた。

商社株の評価は、2020年以降大きく変化した。資源価格の上昇や、経営効率化による収益向上が進み、株価は上昇基調にある。加えて、各社は配当政策を強化し、2025年にはバークシャーが受け取る配当総額は8億1200万ドルに達する見込みだ。これは、同社の投資が単なるキャピタルゲイン(値上がり益)狙いではなく、長期的なキャッシュフローの確保を重視していることを示している。

通貨リスクの管理と円建て債券発行の狙い

バークシャー・ハサウェイは、単なる株式投資にとどまらず、円建て債券の発行を通じて為替リスクを管理する姿勢を示している。バフェットは「通貨の中立性」を重視し、特定の通貨の変動に依存しない投資戦略を展開する。これは、日本株投資を進めるうえで重要な要素となる。

2024年には、バークシャーは非ドル建てのシニア債を通じて税引後11億5000万ドルの為替差益を得た。これは、単純な為替の変動ではなく、戦略的な資金調達が影響を与えた結果と考えられる。円建てでの資金調達は、日本国内での投資機会を広げるだけでなく、為替変動リスクを低減し、長期的な安定運用を実現するための手段ともいえる。

こうした通貨管理の姿勢は、単なる株式投資以上の視点を持つバークシャーの特徴を示している。日本の商社株に対する持ち株比率の拡大と同時に、円建て債券を活用することで、日本市場との結びつきをより強固なものにしようとしているとみられる。

Source:TheStreetReuter