米国のフィンテック企業Affirm(AFRM)の株価が、過去6か月で150%の上昇を記録し、市場の注目を集めている。2022年には90%の大幅下落を経験したが、その後1年間で5倍の回復を遂げた。2024年に入ってもその勢いは衰えず、年初来で市場平均を上回るリターンを記録している。
現在の株価は2021年11月の過去最高値168.52ドルを大きく下回る水準にあるものの、企業業績の改善が続き、投資家の関心が高まっている。特に最新の四半期決算では営業利益の黒字化を達成し、業績予想を上回る結果を出したことが株価上昇の要因とされている。Affirmの成長を支えるのは、大手企業との提携拡大や「今買って後で支払う(BNPL)」モデルの普及による市場シェアの拡大だ。本記事では、急騰するAffirm株が今後も上昇を続けるのか、それとも調整局面を迎えるのかを分析する。
Affirmの急成長を支える「今買って後で支払う(BNPL)」の影響力
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Affirmの成長を牽引しているのが、「今買って後で支払う(BNPL)」という決済モデルの拡大である。この仕組みは、消費者が即座に購入できる利便性を享受しつつ、一定期間の分割払いが可能になるため、特に高額商品の購入時に需要が高まっている。AffirmはこのBNPL市場において、Amazon(AMZN)やWalmart(WMT)、Apple(AAPL)といった大手企業との提携を次々と進め、サービスの普及を加速させている。
特に、Amazonとの提携は大きな影響を及ぼした。EC市場の巨人であるAmazonにおいてBNPLを提供することで、Affirmの利用者は大幅に増加した。さらに、Shopify(SHOP)との提携により、中小規模のオンラインストアにもBNPLの導入が進み、多様な層の消費者が利用できる環境が整いつつある。これにより、BNPL市場の競争が激化する中でも、Affirmは確実に存在感を強めている。
しかし、この成長にはリスクも伴う。BNPLは利便性が高い反面、消費者の債務増加につながる可能性が指摘されており、景気後退時には延滞率の上昇が懸念される。また、金融規制の強化により、BNPL市場に対する監視が厳しくなる可能性もある。Affirmは現在のところ、債務不履行率をうまく管理しているが、今後の市場環境次第ではさらなる対応が求められるだろう。
Affirmの黒字転換が意味するもの - 収益性と成長のバランス
Affirmは最新の四半期決算で営業利益の黒字化を達成し、市場予想を上回る業績を発表した。これは単なる一時的な利益ではなく、同社の事業モデルが持続的な成長と収益性のバランスを取る段階に入ったことを示唆している。特に、BNPL市場における競争が激化する中で黒字化を実現した点は、Affirmの経営の柔軟性と戦略の有効性を証明するものとなった。
AffirmのCEOであるマックス・レブチン氏は、「強固なユニットエコノミクスと営業レバレッジの向上が黒字化の要因」と述べており、単なるコスト削減による黒字化ではないことを強調している。実際、同社は消費者向けの「0%ローン」の提供を強化し、販売パートナーが金利負担を一部担う仕組みを採用することで、より多くの利用者を獲得している。この戦略が成功したことで、AffirmはBNPL市場のリーダー的地位を確立しつつある。
とはいえ、収益性の維持には慎重な舵取りが求められる。特に米国の高金利環境が長期化する可能性がある中で、資金調達コストの上昇が事業に与える影響は無視できない。また、BNPL市場は競争が激しく、KlarnaやAfterpayといった他の大手プレイヤーも積極的にシェア拡大を進めている。Affirmは現時点で成長と収益性のバランスを維持しているものの、今後もこのバランスを崩さずに成長を続けることが求められる。
アナリストの評価が示すAffirm株の今後の見通し
Affirmに対するアナリストの評価は、ここ数か月で大きく変化している。最新のデータによると、Affirmをカバーするアナリストの約58%が「強気買い(Strong Buy)」の評価をしており、3か月前の47%から上昇している。特筆すべきは、「売り(Sell)」と評価するアナリストが1人もいない点であり、市場の期待感が高まっていることが伺える。
アナリストの平均目標株価は74ドルとなっており、現在の株価とほぼ同水準である。ただし、一部の強気派アナリストは90ドルの目標株価を設定しており、今後さらに20%以上の上昇余地があると見ている。一方で、短期的な調整リスクを警戒する声もあり、特にバリュエーションの高さが懸念材料となっている。Affirmの予想売上高に対する株価倍率(NTM PSR)は6.7倍と割高であり、投資家は慎重な判断が求められる。
また、今後の市場環境次第では株価の変動も激しくなる可能性がある。特に、インフレ率の変動やFRBの金融政策の変更が消費者支出に与える影響は大きく、Affirmの業績にも影響を及ぼす可能性がある。さらに、Walmart(WMT)の最新のガイダンスでは消費者の購買意欲が鈍化する兆しが見えており、BNPL市場全体の成長スピードにも影響を与えるかもしれない。
長期的にはAffirmの成長ストーリーは魅力的であり、多くの投資家が同社の将来性を評価している。しかし、短期的には市場環境の変化に左右される可能性があり、今後の動向を慎重に見極める必要がある。著名投資家ハワード・マークスが述べたように、「何を買うかではなく、いくらで買うか」が重要なのだ。
Source:Barchart.com