ウォーレン・バフェットは、バークシャー・ハサウェイの株主向け年次書簡で、自身の後継者としてグレッグ・エイベルが「そう遠くないうちに」CEOに就任すると発表した。エイベルは現在、同社のエネルギー部門を統括しており、これまでも次期CEO候補として注目されてきた。

94歳となったバフェットは、企業経営において正直な姿勢が不可欠であると強調しつつ、エイベルが株主との透明な関係を維持する重要性を理解していると述べた。また、2024年にバークシャーが268億ドル(約4兆円)もの連邦法人税を納めたことを強調し、同社の経営の安定性を改めて示した。

バークシャーは2024年第4四半期に71%の営業利益増を記録し、現金保有額も3,342億ドル(約50兆円)に達するなど、堅調な業績を維持している。バフェットは米国経済の強さを改めて信頼しつつ、資本主義の課題を認識しながらも、その発展が未来を切り拓くと考えているようだ。

バフェットが強調する「正直な経営」 エイベルのリーダーシップに期待されるもの

ウォーレン・バフェットは、エイベルのCEO就任が近いことを明らかにした一方で、企業経営における「正直さ」の重要性を改めて強調した。彼は過去の年次書簡で自身の判断ミスについて率直に言及してきたが、こうした姿勢はビジネス界では例外的なものといえる。2023年までの5年間で彼が「間違い」や「誤り」と明記した回数は16回に上るが、同様の言葉を使った企業は多くないという。

この点について、バフェットはCEOが株主を欺くことが企業の信頼を損なう最大の要因であると指摘している。特に、成功企業ほど経営判断の誤りを認めたがらず、好意的なストーリーのみを発信しがちだ。彼はAmazonの2021年の書簡を例に挙げ、自己評価が率直であったことを評価する一方で、他の大手企業の書簡は慎重に作られた「美しい写真」と「楽観的な表現」に満ちていたと述べた。

エイベルのリーダーシップにおいて、このバフェットの経営哲学がどのように受け継がれるかが注目される。彼はエネルギー事業を統括する中で、堅実な事業運営と収益の安定性を維持してきた実績があるが、CEOとしての手腕は未知数な部分も多い。バフェットが株主への説明責任の重要性を繰り返し説いている以上、エイベルにも同様の透明性が求められることは間違いない。

バークシャー・ハサウェイの納税額は異例 巨大企業の税負担と比較する

バフェットは2024年、バークシャー・ハサウェイが268億ドル(約4兆円)もの連邦法人税を納めたことを誇らしげに報告した。彼によれば、これは米国政府が企業から受け取った中で過去最大の納税額であり、現在の市場で圧倒的な価値を持つGAFA(Google、Apple、Facebook=Meta、Amazon)を上回る額だという。

また、1965年からの累積納税額は1,010億ドル(約15兆円)に達しており、バークシャーが長年にわたりアメリカ経済に貢献してきたことが数字の上でも明らかになった。一般に、大手テック企業は多くの収益を上げながらも税務戦略を駆使して実効税率を抑える傾向があるが、バークシャーはその点で異なる立場を取っている。

しかし、高額な納税が企業の健全性を必ずしも示すわけではない。バークシャーの事業は多岐にわたり、規模の大きさゆえに税負担が重くなる一方で、政府に対する発言力を強める可能性もある。バフェットは税負担を「社会貢献」として捉えているようだが、エイベルの経営方針が同じスタンスを維持するのか、それとも税制をより最適化する方向に進むのかが今後の焦点となる。

米国経済と資本主義の未来 バフェットの見解とその影響

バフェットは、年次書簡の中で米国経済の未来に対する考えを示し、資本主義の長所を再確認した。彼は経済的な不安定さが存在する中でも、需要に応じた商品やサービスを提供する企業は成長を続けると述べ、長期的な視点を持つことの重要性を訴えた。

彼は自らの成功を「アメリカの経済システムの産物」として捉えており、バークシャーが存在しなくても米国の発展は変わらなかったと語っている。これは、個人の功績ではなく、制度や市場の構造が企業の成長を支えてきたという考えを示唆するものだ。また、政府の役割についても言及し、通貨の安定や社会的に不利な立場の人々への支援を求める一方で、税金の使い方には慎重な姿勢を持つべきだと警鐘を鳴らした。

資本主義については、その仕組みが多くの課題を抱えつつも、他の経済システムと比較すれば圧倒的な成果を上げてきたと述べた。アメリカの発展が世界に与えた影響についても触れ、国家の成長が歴史の中でいかに大きな変化を生み出してきたかを強調している。この考え方は、エイベルがCEOになった後もバークシャーの経営に反映される可能性が高く、投資戦略や事業運営の方向性にも影響を与えることになりそうだ。

Source:Variety