ウォーレン・バフェットは、バークシャー・ハサウェイが3,342億ドルもの現金を保有する理由について、株主向けの手紙で説明した。彼は、同社が常に優良企業の株式を優先して投資しているとし、巨額の現金を持つこと自体が目的ではないことを強調した。

また、2024年の同社の営業利益が25%以上増加し、474億ドルに達したことを報告。特にGEICOの保険引受部門の好調が寄与した。一方で、カリフォルニア州の山火事による損失を13億ドルと見積もり、自然災害の予測困難性にも言及した。

さらに、バークシャーは伊藤忠商事や三菱商事など日本の5大商社への投資拡大を視野に入れている。これらの企業の出資上限が緩和されたことで、持ち株比率を引き上げる可能性が高まった。バフェットは、日本企業の経営方針に対する高い評価を改めて示している。

バークシャー・ハサウェイの現金保有戦略と投資方針の変遷

バークシャー・ハサウェイが3,342億ドルもの現金を保有する背景には、単なる資産蓄積ではなく、慎重な投資戦略がある。バフェットは、キャッシュポジションを活用し、適切なタイミングで価値のある企業へ投資することを重視してきた。実際、同社の現金保有額は前年と比べて大幅に増加したが、一方で上場証券の保有額は減少している。これは市場の変動を見極めながら投資を調整している証拠といえる。

また、バークシャーは短期的な利益を追求するのではなく、長期的な視点で事業を支配的に保有する方針を貫いている。特に、非上場企業の支配株式の価値が上場企業のポートフォリオを上回るという点は、同社の投資哲学を端的に示している。バフェットは、優れた企業の所有こそが最大のリターンを生むと考えており、これはこれまでの同社の成功にも直結している。

こうした戦略が今後も維持されるかは市場環境に左右されるが、バフェットの一貫した投資スタンスは変わらない可能性が高い。今後、現金保有がさらに増加するのか、それとも新たな投資先に大きくシフトするのか、バークシャーの動向は引き続き注目される。

日本の総合商社への投資拡大が示す新たな方向性

バークシャー・ハサウェイは、日本の5大商社への投資比率を引き上げる可能性を示唆した。伊藤忠商事、丸紅、三菱商事、三井物産、住友商事は、2023年までにすでに同社の投資先となっており、今回の動きはその延長線上にある。これらの企業は、エネルギー、金属、食品、インフラなど幅広い事業を展開しており、安定した収益基盤を持つ点が評価されている。

バフェットは、これらの企業に対する評価を繰り返し述べており、特に配当の増加や自社株買いの実施といった株主還元の姿勢を高く評価している。さらに、日本の商社は米国企業に比べて経営陣の報酬体系が控えめである点も、同社の投資方針に合致している。今回の投資比率の引き上げは、これらの企業への信頼の表れと考えられる。

また、日本企業への投資拡大は、バークシャーのポートフォリオの地域的な多様化を進める動きとも捉えられる。従来、同社の投資先は米国企業が中心だったが、日本市場でのプレゼンスを強化することで、新たな成長機会を模索している可能性がある。

保険部門の好調と自然災害リスクの増大

バークシャー・ハサウェイの2024年の営業利益は25%以上増加し、474億ドルに達した。その主要因となったのが、GEICOをはじめとする保険引受部門の好調だ。GEICOは税引前引受利益が2倍以上となり、78億ドルに達した。金利上昇により投資収益が増加したことも利益拡大を後押しした。

一方で、自然災害リスクの増大も大きな課題となっている。特に、カリフォルニア州で発生した山火事による損失は13億ドルと見積もられており、バフェットは気候変動による災害リスクの高まりに懸念を示した。ハリケーンや竜巻、山火事による物的損害は増加傾向にあり、その発生パターンを正確に予測することが困難になっているという指摘は重要だ。

保険ビジネスはリスク管理が極めて重要な分野であり、災害の発生頻度や規模が変化する中で、今後どのようにリスクを抑えつつ利益を確保するかが鍵となる。バークシャー・ハサウェイの保険部門がこの課題にどのように対応するのか、その戦略に注目が集まる。

Source:Quartz