Nvidiaは、最新のハイエンドGPUであるRTX 5090およびRTX 5070 Tiに、極めて稀なハードウェアの欠陥が存在することを正式に認めた。この問題は、GPUに搭載されるROP(Raster Operations Pipeline)が規定よりも少なくなることで、一部のグラフィックスカードが本来のパフォーマンスを発揮できないというものだ。

影響を受ける個体は全体の0.5%未満とされるが、性能低下は4〜5%に及ぶ可能性がある。特に、ゲームなどROPの処理能力を重視する用途では影響が大きくなる恐れがある。Nvidiaはすでにこの問題を修正し、新たに生産されるGPUには欠陥が含まれないことを強調しているが、既に該当する製品を所有するユーザーは、メーカー経由で交換手続きを進めるよう求められている。

NvidiaのROP不足問題はなぜ発生したのか 生産工程と品質管理の課題

今回のRTX 5090およびRTX 5070 TiにおけるROP不足問題は、GPUの製造過程で発生した異常によるものとされる。ROP(Raster Operations Pipeline)はグラフィックス処理の最終段階を担う重要なコンポーネントであり、本来の仕様よりもROPが少なくなることで、GPUの性能が低下する。

Nvidiaによると、この問題が発生する割合は全体の0.5%未満とされるが、これは半導体製造における品質管理の難しさを浮き彫りにしている。NvidiaのGPUはTSMCなどの外部ファウンドリで製造されており、シリコンウエハーの段階で設計通りのROPが形成される。しかし、歩留まりの関係で一部のチップが仕様を満たさない場合、ROPが一部無効化された状態で出荷されることがある。

この工程は通常、意図的に行われるが、今回の問題は誤ってROPが削減されたチップが製品として市場に出たケースであり、想定外の不具合といえる。品質管理の観点から見ると、製造後の最終検査やパートナー企業のテスト工程で、このような異常を見逃したことも問題視される。

特に、NvidiaはFounders Editionモデルを製造するだけでなく、MSI、Gigabyte、ZOTACといったボードパートナー企業が独自の設計で製品を市場に投入するため、複数の段階で検査が行われる。それにもかかわらず、ROP不足のGPUが流通したという事実は、品質保証プロセスの見直しを迫られる事態といえる。

この問題により、ユーザーの信頼にも影響を及ぼしかねない。高性能を求めてRTX 5090を購入したゲーマーやクリエイターにとって、5%前後の性能低下は軽視できるものではない。ハードウェアの欠陥はドライバーやファームウェアのアップデートでは修正できないため、Nvidiaは迅速な対応を求められている。交換プログラムの実施により、どの程度の影響が抑えられるのかが今後の焦点となる。

RTX 5090のROP不足はどの程度影響するのか ゲームとクリエイター用途の違い

RTX 5090およびRTX 5070 TiのROP不足問題により、パフォーマンスの低下が生じるが、その影響は用途によって異なる。Nvidiaの発表では「平均4%の性能低下」とされているが、これはあくまで総合的な数値であり、ゲームやクリエイティブ用途では異なる影響が出る可能性がある。

まず、ゲーム用途ではROPの数が重要な役割を果たす。ROPはレンダリングの最終処理を担い、解像度が高くなるほど負荷が増す。特に4K解像度でのゲームプレイではROPが多く必要とされ、ROPの減少がボトルネックとなる可能性がある。例えば、GPUの性能を限界まで引き出すレイトレーシングやDLSS 3.0を活用するタイトルでは、性能低下がより顕著に現れるかもしれない。

一方、1080pや1440pの解像度でプレイする場合、ROPの不足がそれほど影響を及ぼさない可能性もある。クリエイター用途では、ROPの不足がどこまで影響するかはワークロードによる。動画編集や3Dレンダリングなどのタスクでは、ROPの影響はゲームほど大きくない。

特に、CUDAコアやTensorコアを多用するAI処理や機械学習タスクでは、ROPの不足が性能に与える影響は限定的と考えられる。Nvidiaも「AIや計算処理の負荷には影響しない」と明言しており、ゲーム用途以外では問題が軽微である可能性が高い。しかし、ゲームをメインに使用するユーザーにとっては、この問題は軽視できない。

特に、RTX 5090は市場で最も高価なGPUの一つであり、本来のパフォーマンスを求めて購入したユーザーにとって、期待通りの性能が得られないことは大きな不満となる。交換プログラムが進められることで、この問題がどこまで解決されるかが重要となるが、ユーザーの不信感を完全に払拭するには時間がかかるかもしれない。

Nvidiaの対応と今後の影響 交換プログラムの課題とユーザーの懸念

Nvidiaは今回の問題について迅速に対応を発表し、影響を受けるGPUの所有者に対して交換プログラムを実施するとした。しかし、この交換プログラムがスムーズに進むかどうかにはいくつかの課題がある。まず、交換対象となるGPUの数は限られているとはいえ、RTX 5090やRTX 5070 Tiはハイエンド製品であり、生産数自体が多くない。

特に、RTX 5090は市場に出回る在庫が少なく、即座に交換用のGPUを用意することが難しい可能性がある。もし交換の遅延が発生すれば、ユーザーはしばらくの間、不完全な状態のGPUを使い続けることになりかねない。

また、交換にはユーザー側の負担も伴う。通常、このようなプログラムでは購入者が自らメーカーに連絡し、製品を返送する必要がある。国内外のボードパートナーが異なる対応を取る可能性があり、手続きが煩雑になる恐れもある。

特に、ゲーム用途で使用しているユーザーが一時的に代替GPUを持っていない場合、交換が完了するまでの間、満足なゲームプレイができないという問題も考えられる。加えて、今回の問題がNvidiaのブランドに与える影響も無視できない。RTX 5090は最高級のGPUとして市場に投入された製品であり、品質管理の問題が発覚したことで、消費者の信頼が揺らぐ可能性がある。

過去には、RTX 4090の12VHPWRコネクタの発熱問題など、NvidiaのハイエンドGPUは品質に関する議論が絶えなかった。今回の問題もその流れの一つと捉えられる可能性があり、今後の製品開発や品質管理体制の強化が求められるだろう。

Nvidiaは「今後出荷される製品には同様の問題は発生しない」と明言しているが、影響を受けたユーザーの不安を完全に払拭するには時間がかかる。交換対応のスムーズな実施が、今後のNvidiaの信頼回復にとって重要なポイントとなるだろう。

Source:TechRadar